濱崎画伯からお便り | MTFのAkemiのblog イタリア児童文学・皆既日食・足摺岬が好き

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私は、イタリア児童文学が大好きで、皆既日食も大好きで、足摺岬も大好きな、団塊の世代に属する元大学教員で、性別はMTFです。季節の話題、お買い物の話題、イタリア語の勉強のしかた、新しく見つけたイタリアの楽しい本の話題などを、気楽に書いていこうと思っています。

暑いですねえ。

私は、大学の前期の仕事がやっと終わり、ほっと一息ですが、あんまり暑いので、このところブログを書く気力も失せていました。
去年も書きましたけど、このごろの大学の学期のあり方って、まことにへんですねえ。日本の夏が真っ盛りになって、若者には海山でしっかり体力づくりを心掛けてほしいような季節に、前期の試験を押し込んで、それが終わるともう立秋なのですから。

ところで、愚痴っていてもしかたがないので、楽しい情報を書きますと、先日、土佐清水市の濱崎秀嗣(はまさき・ひでつぐ)画伯から暑中見舞いのお便りが来ました。

濱崎秀嗣画伯は、土佐清水市を代表する洋画家で、土佐清水市街地と「あしずり港」の近くの養老地区との両方にアトリエを持ち、充実した創作活動を続けている方です。高知工業高校と武蔵野美術大学で学び、私ども素人からみると天才的に手先の器用な方です。

もっとも、世の中で、絵を売るだけで生計が成り立つ絵描きさんというのは、ほんの一握りしかいないそうで、濱崎画伯も主たる収入は「アトリエレイン絵画教室」という私塾での授業料から得ているそうです。その絵画教室は主として子どもが通っていますが、大人になってから絵を始めたいという人も入門自由で、何を隠そう「ドロちゃん」こと土佐清水市長・泥谷光信さんも、この絵画教室のお弟子の一人なのです。市長になってからは、ご多忙すぎて、師匠のアトリエに入り浸る時間はとれない模様ですけれど。

土佐清水市は市全体が今や過疎地と言ってよいような状態ですが、だからこそ逆に、ゆったりと絵を描いて過ごせるようなスペースを得ようとすれば、むしろ理想的な土地です。濱崎画伯以外にも、この地でゆったりと芸術生活を楽しんでおられる方は存在します。

その一人は、臼碆(うすばえ)の裏山に住んでいる影山早穂(かげやま・さほ)さん。先々代土佐清水市長だった故・西村伸一郎さんのお姉さんで、もうだいぶんなご年配ですが、長年勤めた小学校教員を退職なさってからは年金暮らし。だんなさんの影山充秀さんが園芸家としてサツキやツバキを育てるために手に入れた2ヘクタールほどの土地に、夫婦二人で住んでおられましたが、一昨年の暮れに充秀さんが他界されてからは、お一人暮らし。

充秀さんが一代で整備した庭園は「影山椿園」という名で地元では知られていますから、足摺岬観光に行く人は、ぜひ「影山椿園はどこですか?」と尋ねてみてください。案内どおりに尾根道から入ってゆくと、左側の谷に椿園があり、右側の谷に影山さんの住宅があります。現在、椿園は早穂さんお一人では面倒を見きれないので、市のボランティアなどが、保存に協力している模様です。

影山さんの住宅は、ご結婚当初からの古い棟と、20年ほど前に建てた新しい棟とからなっていて、新しい棟には奥さん専用のアトリエもありましたが、濱崎画伯からのお便りによると、このたび古い棟を建て直して、そこを奥さんの個人美術館にしたそうです。

東京の「土一升金一升」の土地で、売ったらずいぶんのお金になるはずの土地に住みながら、身動きもままならないほど荷物に囲まれた空間で逼塞している私どもから見ると、まことに羨ましいがぎりの話です。日本人全体が発想を変えて、どうしても過密都市で暮らさなければならない必然性のある人以外は、もっともっと「疎開」して、ゆったりした生活を手に入れようというふうに、ならないものなんでしょうかねえ。

「疎開」なんていう戦争中みたいな言葉を出しましたが、「疎開」はイタリア語では「sfollamento」。「folla」は「群衆、人混み、雑踏」の意味。「s」は否定辞。動詞「sfollare」が「散開する(過密状態を解消して散らばる)」の意味で、「mento」は名詞化語尾です。