クオ・ワディス〈上〉 (岩波文庫)/岩波書店
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むかーーし、ハイラさんにお勧めされた『クオ・ワディス』。

ごく最近先に映画を観てみて、「なんで私これを読まなかったの!!」

となったので(笑)

原作を読んでみました。

はい、面白いですね。普通に面白いです。
映画観てるんだから結末分かってるのに、手に汗握る展開。

映画は原作に忠実ですし、こちらも非常によく出来ているうえに

配役が完璧すぎ&美しすぎ なので、映画もお勧めです。

クォ・ヴァディス [DVD]/ロバート・テイラー,デボラ・カー
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映画と原作、どっちが先でもいいんじゃないかなぁ。
いずれにせよ、原作のみ、というのももったいないくらいよく出来ていました。

本書はポーランドの作家シェンキェーヴィチが書いたもので、彼はノーベル文学賞を受賞しています。

(ポーランド文学って、私きっと初めてだわ。)


って書くと硬そうで難しそうですが、いえいえ、歴史小説ながらエンタメっぽいところもあって・・・・

デュマとかお好きな方はいけると思いますよ。

舞台はネロの治世の古代ローマ。紀元後1世紀くらいですね。


あらすじをぱぱっと簡単に説明しますと、

ウィキニウスという男が、リギアというとある王の娘を愛すようになるんだけども、

彼女は実はキリスト教徒。

リギアを愛すあまり改宗しちゃうほど。色んな意味で彼はリギアに染まっていきます。



映画でもなんかいきなりウィキニウスはリギアに惚れてて、説明が足りないなぁ、なんて思ったのですが

原作がそうだったのですね。

一方、ウィキニウスの叔父ペトロニウスは、ネロの廷臣。


ネロを褒め称えているので、ネロのお気に入り。

これは史実でもそうなのですが、ネロはよく歌を歌っていて、このペトロニウスの褒め方が凄い。



ペトロニウスの手腕は大したもので、素晴らしき話術でネロのご機嫌をとり、自分の思うとおりにネロを誘導しています。この、暴君を手のひらで転がす感じがたまんない!!!



ペトロニウスは厭味ったらしく媚を売っている・・・・という感じでもなくって

なんとも魅力的な人物なんですよね。

民衆にも彼だけは好かれていた、というのは分かる気がする。


そして彼のロマンスのお相手・・・・・彼女がとにかく好きです、映画の時から。

ウィキニウス×リギア、よりも好きなんですよねぇ。


色々ありつつも、平和だったローマも中巻の中盤くらいから一変。(つまり本当に中盤ですね^^)


それも、ネロがトロイア落城の歌を歌った際に、私は都市が燃えるのをまだ見たことがない、なんてこと

を言いだすからいけないのです。

じゃあ、ローマを燃やせばいいじゃないか!私は世界のネロだ、ってことで

命令させてローマ、燃やしちゃいます。


これが紀元64年のローマ大火


史実ではべつにネロが指示をして火を放ったというわけではないらしくて

飽くまで説の一つ。

むしろ、ネロがあまりにも早く復興させたからこの噂が出たとかなんとか。


この『クオ・ワディス』では、自分で大火事にしたくせに

民衆が怒りだしたもんだから 困っちゃって

そうだ、キリスト教徒のせいにしよう! ということになり


キリスト教徒が大迫害を受けることになります。


史実でも、キリスト教徒のせいにされた・・・・というのは変わりないよう。

嫌ですね、今も昔も変わらない。


「カリグラも気ちがいじみていたが、ネロほどじゃなかったよ」


というのも、わかりますね・・・・・。



ペトロニウスは、人道的にも、また甥であるウィキニウスがキリスト教徒を愛していることを知っているため、ネロにこう反対します。



「つまりとうとう犠牲者が見つかったというわけですね。けっこうです!諸君は彼らを闘技場へ送り込むこともできるし、苦役の肌着を着せることもできます。それもまたけっこうです!

しかしわたくしの申すこともおききください。(略)なんでもお好きな責め苦を彼らにお与えなさい。

しかし、ローマを焼いたのは彼らでないとご自分に向かっておっしゃるだけの勇気をお持ちになってください! いやまったく! (略)

世界の支配者ネロ、神なるネロは、この地上でオリュンポスにおけるゼウスのごとき権力者であられたが故にローマを焼きたもうた。詩人ネロは詩を愛されるあまり、祖国の詩のために捧げたもうた!開闢以来これほどのことをなしとげた者はひとりもいない。これほどのことをなしとげる勇気を持っていた者はひとりもいない。(略)
そうなさってこそ、陛下をたたえる歌は世の終わりまでひびくことをやめないでありましょう。

陛下に比べればプリアモスがなんでしょう。アガメムノンがなんでしょう。アキレウスがなんでしょう。神々でさえなんでしょう。

ローマの火災がいい事であったかどうかはたいした問題ではありません。
それは偉大な、非凡なことなのでございます!



なんてことを言ってのけちゃうのですが・・・・・今回はさすがのペトロニウスでもだめでした。

それからは、彼の運命も変わっていきます。


キリスト教迫害の文学でもあるため、これまた一見難しそう・・・なのですが、

意外と知識がなくともいけます。

大学院でキリスト教の授業2つ取って学んだので、そこそこ知識は身に付けたつもり、なんだけれど人に教えられるレベルでは全くない中途半端な知識レベルの私でも

 (←独学じゃ限界があると思うんです、宗教って。)


それはそれで読んでいて面白いのだけれど、パウロやペテロが誰だか知らなくとも、

読んで新たに知る・・・・・というのでも、面白そうですし。


これは本書とは関係ないのですが、

キリスト教徒がローマで迫害された理由というのは、イエス・キリストという人物を信じていたから・・・・というわけではないのです。


ローマは多神教なので、別に1人くらい神が増えても構わない。

しかし、キリスト教はご存知の通り一神教。

ローマが信じている「神」を神として認めるなんてことはできません。


更にローマでは皇帝が神になったりもしますし、キリスト教徒は「皇帝万歳!」と言うことも出来ないんですって。だから迫害された、となんかの本で読みました。


タイトルの「クオ・ワディス」は、下巻の最後、ペトロの台詞から取られています。
「クオ・ワディス・ドミネ?」

ラテン語で、「主よ、どこへ行かれるのですか」。

この後、ペトロの運命が大きく変化するのです。

サテュリコン―古代ローマの諷刺小説 (岩波文庫)/岩波書店
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ちょっとね、内容が内容なので、嫌煙していたりする・・・・・『サテュリコン』。
ペトロニウスが作者です。
『クオ・ワディス』のペトロニウスがこれを書いたとはちょっと思えないな~と思うのですが、読んでみたらまた変わるかな?

ダッチさんは面白かったということなので、読んでみたいと思います。



クオ・ワディス〈中〉 (岩波文庫)/岩波書店
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クオ・ワディス〈下〉 (岩波文庫)/岩波書店
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