- アエネーイス
(西洋古典叢書)/京都大学学術出版会
- ¥5,145
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いつか読みたいと思っていた、ウェルギリウス。
ダンテを読んで、なおさら読みたくなったウェルギリウス。
ダンテを読んで初めてウェルギウスではなく、ウェルギリウスであると気付いた、ウェルギリウス。
↑
こういうの、よくある。
どの翻訳で読むのか迷い、結局京都大学学術出版会の西洋古典叢書にしました。
(たぶん)定評あるこのシリーズがお気に入りです。
訳も読みやすいし、注釈は同ページにあるし、解説も充実していますし。
この、超シンプルな感じの表紙も好きだったりします。
が!きらいなところが1点だけ。
それは、この厚さ&重さ・・・・・。
文庫化しませんかぁぁぁ・・・・・!?
約700ページのハードカバー。
でも、こういう内容のものは電車内で読むのがベスト。
これを電車内で取り出して読もうとすると、
明らかに周囲の視線を感じます(笑)
アエネアス、というのは人物名。
アエネーイスというのは、「アエネアスの歌」だとか「アエネアスの物語」を意味します。
トロイアの英雄アエネアスが、トロイア陥落後に逃げ、カルタゴの女王ダイドーに出会い、恋に落ち、彼女を捨て、女神ジュノー(ヘラ)の迫害に遭いながらもそれに負けず、イタリアに辿り着き、そこに後kjのローマとなる国を築くべく、ルトゥリ人の王トゥルヌスを倒すまでを描いた叙事詩です。
もうちょっとダイドーとのロマンスが描かれているのかと思いきや、
これが結構少なくって個人的にはちょっと残念。戦争が思いのほか多め。
ダイドーやアエネアスは、かなりの頻度で文学作品に登場しますね。
このあらすじから見ても、あれ、ホメロスに似てる、と思われる方が多いかと思います。
あれ、アスカニウスって
アエネアスとクレウサの間にできた子じゃなかったの、と思っていたのですが、
どうも彼女はトロイアから逃げている際に亡くなったようです。
そして、2番目の妻となるのがラウィニア、ということのよう。
どこかの木を引っこ抜くと、血が滴り落ちるというエピソードがありました。
あれ?枝を折ったら血が、というのは『神曲』にもなかったかな?
うろ覚えですが・・・・・・。そうだとすれば、これの影響なんですね。
このような作品によくあることですが、
そもそもアエネアスがイタリアに辿り着いたのは神のご意志、ということになっています。
しかし、↑によると、当時の皇帝アウグストゥスは、ローマ建国が神の意志にもとづくことを否定したのだとか。
一方ダンテはというと、ローマ帝国の政治的役割を肯定しているそうです。
まず、面白いな~~と思ったウェルギリウスのエピソードを。
史の床に就いたウェルギルウスは、『アエネーイス』を焼くように求めたものの、
周りは断固拒否。
仕方なく、「前に発表したもの以外は何も公表しないように」と告げて他界。
しかしアウグストゥスの命令で、結局刊行され、日の目を見ることになります。
『アエネーイス』はラテン文学の最高峰だと言われているくらいだし、
これが世に出なければ、文学史は大きく変わったでしょうね・・・・・。
まず、ダンテは『神曲』を書けなかったでしょうし。
刊行される前に、アウグストゥスはウェルギリウス本人から『アエネーイス』の一部を朗読されていた、なんて史実もあるようで
皇帝との関係にも影響を与えている模様。
アエネイスはローマ建国の祖である、というのは非常に有名な話。
さらにいうならば、ブリテン建国の祖であるブルートゥスも、アエネアスの末裔であったりね。
しかし、よくわからなかったのが、ローマ建国の祖と言われていたのはもう一人いるんですよ。
ローマという名の由来となった、ロムルスが。
2人いる、という意味が分からなくて
何を読んでもその理由が良く分からなかったのですが
今回『アエネーイス』の解説を読んで、すこしすっきりしたかな。
なぜ2人いるのか、というのは分かりませんでしたが。
ロムルスの父は軍神マルス、そして母は彼に見初められた巫女であり、王女でもあるレア・シルヴィア。
マルスの息子というので粗野なイメージも与えるし、ロムルスは自分の兄弟を殺しているわけで、それが汚点となる。
アウグストゥスって、もともと称号の名で、もとはオクテイヴィアス・シーザー。
あの、シーザーの養子で、跡取りですね。
その称号をどうしようか、と言っている時に「ロムルス」という候補も出ていたようです。
簡単にまとめると、オクテイヴィアス・シーザーにロムルスという名は劣るだろう、とみなされたのだとか。
アエネアスは、ヴィーナス(アフロディテ)の息子。
あれ、あもるさん、アエネアスの兄弟(笑)
さらに、ジュリアス・シーザーは、シーザー(カエサル)家がヴィーナスの血統であると言っていたのだそうで、もちろん前述したように、オクテイヴィアス・シーザーはジュリアス・シーザーの「養子」なんだから血を引いているわけじゃないけど、
ヴィーナスの末裔、っていうことになっていたみたい。
それらを踏まえ、ウェルギリウスはロムルスではなく、アエネアスの物語を選んだ模様。
このあたり、かなり面白いですね~~♪
ローマ建国の祖を讃える、そして、当時の皇帝も讃える。
そういった意味もあって、アエネアスはやたら美化されています。
ま、叙事詩ってだいたいそんなもんだけど。
アエネアスって結局、トロイアを捨てたんじゃないのかなぁだとか思っていたのですが、
トロイア脱出も、当然ながら本人が望んだのではなく、
神が決めたこと。渋々ながら従うことになります。
また、これはウェルギリウスどうこう、ではなくって伝説自体がそうなっているのですが、
トゥルヌスとの戦争も正当化されていますよねぇ・・・・・。
そもそも、後にアエネアスの妻となるラウィニアと、トゥルヌスは婚約していた。
そこに突然現れたアエネアス。
・・・・・トゥルヌスが怒るのも無理もないと思うんだよなぁ・・・・
で、どう正当化するかというと。
やっぱりここでも神が関係してきます。
ラウィニアの父である、ラウレンテスの王ラティーヌスは、ラウィニアに異国から婿を迎えれば子孫が世界を征服する、なんて信託を受けたものだから戦争を見て見ぬふり。
一方、ラティーヌスの妻であるアマータはトゥルヌス側の肩を持ち・・・・・。
ま、そこも読みどころのひとつですね!
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