- デカメロン〈上〉 (ちくま文庫)/G. ボッカッチョ
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読了しました、デカメロン☆
ちくま文庫で上・中・下巻の3巻でした。
この訳読みやすかったですよー。
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どーしてもこのタイトル、大きなメロンを想像してしまいますけれど
デカメロンとはギリシャ語で10日の意味です。
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ペストが大流行したため、男女10人がお屋敷に引き篭ります。
彼ら10人で10日、お話をする・・・・・というストーリーになっています。
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チョーサーの『カンタベリー物語』と似ていますが、
チョーサーがこれから強く影響を受け、模倣しているのです。
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似たような形式だと、やっぱり『アラビアン・ナイト』。
ボッカッチョはこれから影響を受けているようですね~~。
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『アラビアン・ナイト』は大好き。
但し本当のアラビアンナイトはあまりにも卑猥ですが。
(通常よく知られているのはカットされたバージョンだと思います。初めて大人向け読んだ際に衝撃を受けたので)
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この3作品の中で一番読みやすいものはこの『デカメロン』ではないでしょうか。
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ひとつのお話が短いことと、(カンタベリー物語も短いですが、アラビアンナイトは物語によっては何夜にも続き、かなり長いので)
ストーリーが明解で、カンタベリー物語よりも読みやすい気がするのです。
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他の文庫だと分からないけど、それぞれの話の最初に要約が載っていますしね。『ベーオウルフ』とか、『アーサー王物語』みたいに。
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『デカメロン』の話し手は、3人の紳士(パンフィロ、フィロストラート、ディオネーオ)、7人の貴婦人(パンピネア、フィアンメッタ、フィロメーナ、エミリア、ラウレッタ、エリザ)です。
10日で100の話で、第1日目と第9日目の話題は各人の自由に任されています。
それ以外は定められていて、
2日目:多くの苦難を経て幸福な結末に到達する人
3日目:長い間熱望したり、失ったものを手に入れたりしたこと
4日目:不幸な恋人たち
5日目:悲しい事件の後に幸福にめぐりつく恋人たち
6日目:巧みな即答で危機を脱する人
7日目:妻が良人に対して行う瞞着
8日目:女が男に対し、男が女に対して行う瞞着
10日目:気高い寛大な行為
となっています。
『デカメロン』はその他の似たような文学作品と同様、大部分が著者ボッカッチョの独創ではないそうです。
そういう言い伝えがあったのかな。
シェイクスピアが『デカメロン』を種本にしていまして
『シンベリン』、『終わりよければすべてよし』、『ヴェローナの二紳士』がそれに当たります。
前者2作は言われなくともすぐに気がつくけど、後者は言われなきゃ気づきませんでした。
うーん、ほんの一部な気がする!
種本と呼んでいいのか微妙なところ。
どうやら、シェイクスピアが利用したと言われているのは
1566年(第1巻60話)、1567年(第2巻34話)もウィリアム・ペインター(William Paynter)が訳したといわれる
ザ・パレス・オブ・プレジュア(The Palace of Pleasure)です。
でも、そもそも『デカメロン』が独創ではないとすると、似たようなストーリーでもシェイクスピアはべつにこの本を読んだとは言えないわけで。
だからか種本一覧表みたいなのに『デカメロン』が含まれていないことがあります。
それが関係あるのかな。
『ヴェローナ~』はもう数年読んでないしな。再読しようかな。
『終わりよければ~』はこの機会に翻訳を購入しました。
全体的に不貞や裏切り、司祭や修士への風刺が多く
宗教観どうなってるの・・・・・・・・?
と言いたくなります。
でも、こういうのって『千一夜物語』や『カンタベリー物語』もそうなんですよね。。
司祭や修士への皮肉は一般の小説には珍しくなかった、とあるのですが
(「小説」って何を指しているのかが分かりません。イタリアだってこの時代小説なかったんじゃ・・・?)
『デカメロン』の卑猥性は世紀の堕落だけでなく、単にそういった醜聞を好んでいたから、だそうです。
女についてたくさん書いたのは女好きだったから、と。
でも、あんまりな話が結構あったりして「そりゃないよ!」と言いたくなります。
中でもちくまの中巻に乗っている第7日第7話とかひどい(;´Д`)
簡単にあらすじを説明すると、
ロドウィゴという若者がベアトリーチェと呼ばれている人妻に惚れます。
その恋を手に入れたくなった彼は、じゃあ、彼女の夫の召使いになることができたら思いを遂げられるだろう!
と何とも楽観的に考えます。
彼女の夫にも気に入られ、ベアトリーチェへの熱い思いを伝えます。
ベアトリーチェは「わかりました。では、今夜寝室へ来たらあなたの望みを叶えましょう。手付としてまず接吻をひとつ差し上げましょう。」
なんてことを言い、すんなり受け入れます。
(そんなすぐに陥落したら、つまんなくない??そんな女に惚れたんだよ?君?と言いたくなる)
ロドウィゴは寝室に忍び込みますが、
ベアトリーチェは目覚めてしまった夫に対して唐突に
「召使いのうち、もっとも誠実な、いちばんいい、一番あなたを愛しているのは誰か。」
と尋ねます。夫は迷いもせずにロドウィゴの名前を挙げるわけです。
その間ロドウィゴ騙されたのではと気が気じゃないけれど、ベアトリーチェに手をつかまれているので逃げられない。
信用しきって、自分を愛してくれているご主人を裏切るような真似が出来るはずも無く、
そこで改心するんだろうなー・・・・・
と思っていたのに、そんなことはありませんでした・・・・・。
以下、ベアトリーチェの台詞。
「私も彼がそのような誠実な男だと思っていたのですが、そうではなかったのです。
ずうずうしくも、私にその意にどうしてもしたがうようにと言い寄ってきたからなのです。
ですから、それをじかにご自分で見られるようにと今夜庭の松の根元で待っているようにと答えておきました。
もちろん私は行くつもりはございません。私の服のどれかをお召になり、ベールをかぶってあの男が来るかどうか待っていらっしゃれば、わかりますわ。」
・・・・とずけずけと嘘を言い放ちます。
夫が庭で待っているうちに二人は快楽にふけるわけです。
その後、彼女は彼に対して、庭に降りて「私を試すためにそう言ったのだと言いなさい。夫に罵声を浴びせて、うんと殴ってやりなさい。こののち、楽しみや快楽がうまくつづくようになりますからね。」
∑ヾ( ̄0 ̄;ノ
なんて女だ!!
彼女の言うように、「ああ、悪い女め! では私がだんな様にこんな過ちをしたがっていたと思い込んだんだな? あすの朝きっとご主人に言いつけてやるぞ!」と罵声を浴びせ、
そこで待っている女のふりをした主人を散々殴ります。
しかもその後、夫は最も貞節な婦人と、最も誠実な召使いを持っていると思い込んでしまうのです。
その二人は笑い興じる・・・・という、あまりにも酷い物語でした。
他にも妻が愛していた男を殺して、その心臓を妻に食べさせる話だとかがあったりと
結構グロいですね・・・・・・。
一方、自分が妊娠したと思い込んだ愚かな夫が登場したりもして、笑わせてもくれます。
『デカメロン』はラテン語からの重訳で1414年にフランス語に訳され、1545年にいいフランス語訳が出たそうですよー。
(「いいフランス語訳」って解説に書いてありました)
だから?フランス文学に特に影響を及ぼしているようですけれど
もちろんイタリア文学にも大きな影響を与えています。
ツィンツィオとかね。
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・・・・この表紙、女性のお尻ですよね???
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あとこの講談社のものが有名です。
ボッカッチョはダンテに傾斜していたみたいですね。
ダンテ・・・・神曲・・・・。
阿刀田高さんの関連書読んだだけで満足しちゃったけど、やっぱり読もうかなぁ。
ダンテは古典中の古典だし
基本だよなぁ。
ドレの版画とか美しいですよねー。ひとまず阿刀田さんの本を再読しようか。