初夜 (新潮クレスト・ブックス)/イアン・マキューアン
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これでイアン・マキューアンの小説、何作目でしょうか・・・?

どうやら3月にSolarという最新作が出たらしいですね♪


タイトルから・・・・いかにも、なんだけれど。

原題はOn Chesil Beachです。イギリスの凄いキレイなビーチで、ハネムーン先として人気なんだとか。


でも・・・まさしく「初夜」がテーマの小説なので、かなりダイレクトながらも邦題のほうが良いのかも。


1962年のイギリス、結婚式を挙げたばかりの若いカップル――エドワードとローレンス。


チェジル・ビーチ沿いのホテルにチェックインをしたところ。


式を挙げたばかりで、愛する人とのふたりだけのディナー。静かなひととき。


幸せで、ロマンティックこの上ないディナーになるはず・・・・なのだけれど

どうも二人はそれぞれ緊張している。


心臓の音、脈拍、手の震えまでが伝わってきそうな書き味です。


それもそのはず。

2人はこれから初夜を迎えるのだから。


ずっと二人で歩いていけたかもしれない。

あの夜の出来事さえなければ。



たった数時間をここまでのものに仕立て上げるマキューアンが凄い・・・・。

って、お決まりの言葉ですね。

こーゆーの得意な方ですよね。


これの前に読んだ『土曜日』もそうでしたが、個人的にはこちらのほうが良かった。


親近感があるのはこちら。

とてもなさそう、こんなことは有り得ない?


・・・・いや、すごく、多そうだわ、こういうの・・・・


とか凄く感じさせられます。

「この2人は不幸だったのか?」


やはり、皆さんそこに着目しているようです。



ずっと二人で歩いていけたかもしれない。

・・・・たしかに、そうかもしれない。


いや、でも、本当にそう?

ずっと続いていける・・・・か?

最終的には、この展開のほうが幸せだったような気がします。



好きなだけじゃ結婚できない!

ってよく言うけど、単なるお付き合いだって、好きなだけじゃ出来ないと思うし・・・。


求めるモノが違って、かなり好きだったけどお別れした経験だってあるし

価値観もそうだけど、これもけっこう重要だと思います。


だから・・・・・・と言いたいところなんだけどっ


そもそも、そもそもですね、

ローレンスはたいしてエドワードのこと、好きじゃないと思う。


愛かもしれないけど、恋じゃないよね?

ときめいてないよね?


ときめきが全てとか言わないけど、大して好きじゃないってぇーーーーーー!!!


という、素朴な疑問。(むしろ意見??)



「初夜」がテーマの小説なので、もちろん、そういう・・・・きわどいシーンも出てくるのですが

リアル感があるのに、思っていたよりキレイ。

とてもここに記せない言葉をバンバン出してきて、かなり戸惑ったけれど(官能小説ってこんな感じなのかなー)

さすが、書いているのがマキューアンだし!




ほんっとうに心理描写を描かせたら上手いですよね・・・・・。

現代文学だと、心理描写や人間観察という分野では私の中でダントツのNO1です。


あの、すこし古典っぽさがあるところがたまりません、マキューアン。

ゼミ担任に出会ってなければ決して読んでなかったでしょうが。


そして、本当に思うのが、マキューアンってほんとに学位とか研究者、好きだよね!笑

またですか。エドワードは歴史学者を目指している青年です。


本人も修士持っているからかなー?






また、訳がいいのですよね。訳は村松潔さん。

今回特にあとがきが良かった!


今ちょっと調べてみたら『マディソン郡の橋』もこの方の訳なんだそう。

ああー、納得。この淡々と進む、清らかな白っぽいストーリーがお得意なのですね。(白っぽい・・・って、なかなか説明できないのだけれど色で言えば白なのです。カズオ・イシグロとか、ヘッセとか、あと、主にフランス文学。)




最後になりましたが、

主人公の二人――エドワードとローレンス、どちらの気持ちも分かります。


ああ、運命って残酷。


これは男性の感想も是非知りたいですね・・・・。