- エリザベス朝演劇集〈1〉/クリストファー マーロー
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シェイクスピア以外のエリザベス朝の戯曲を、そろそろ読もうと思って、まず読んでみたもの。
クリストファー・マーロウはシェイクスピアと同じ1564年に生まれています。
訳は小田島雄志さん。
読んでみて・・・・ものすっごく『ヴェニスの商人』に似ていると感じて。
これ、どっちが早く上演されているのかな~と思ったら
シェイクスピアがこれの影響を受けているらしいですね。
裕福なユダヤ人バラバス。(高利貸しらしい)
財産を奪われ、復讐を誓った男の物語。
ただ、当時のイギリスでは・・・色々調べてみましたが、どうやらユダヤ人の高利貸しというのは存在しなかったらしいです。
ロンドンで「ユダヤ人」と意識して出会うことはまず、ゼロに近かっただろう、と言われているし
ユダヤ人の金融は1275年に禁止されてます。
だからマーロウはマルタ島、シェイクスピアはヴェニスにしたのでしょうかね。
ただ、『ヴェニスの商人』はシャイロックはユダヤ人でないと成り立たないし、
今でも(は)哀れみを誘う内容です。
一方この『マルタ島のユダヤ人』はタイトルにまでわざわざユダヤ人と入っているけれど、
実際あんまりユダヤ人だという必要性が無い。
異教徒で十分。
けっこう差別的なニュアンスが感じられますね。
といっても、時代が時代ですから「人種差別主義者だ!」って責めてたてるのもどうかと思うけど・・・
バラバスの動機は、とにかく財産を奪われたこと。
うん、まあね、ある意味シャイロックより動機ははっきりしているんですが・・・・
それで何人殺したんだ。
10人は超えているんじゃないでしょうか。
その理由にはならないですね。
シャイロックは同情できるんだけど、バラバスは出来ない。
シャイロックは「ユダヤ人だから」悪人、という書き方はされてないけど
バラバスは「ユダヤ人だから」悪人のよう。
このへん、腕の差??
それにしてもよく似てますね・・・
ああ、娘よ、金よ、美よ、おれのしあわせよ!『マルタ島のユダヤ人』(第二幕第一場)
ああ、おれの娘が! おれの金が! おれの娘が! 『ヴェニスの商人』(第二幕第八場)
・・・似てません?
上はバラバスのセリフ、下はシャイロックのセリフ・・・(というか、サラーニオがシャイロックがこんな風に嘆いていたんだぜ、と真似して言っているんですが)
でも、言っている状況が正反対なのがおもしろい。
そして『マルタ島のユダヤ人』は悲劇らしいです。
え、そうなの?内容は悲劇だけど、シェイクスピアに慣れちゃったせいか喜劇かなと思いました。
うーん、なんだかんだ言いつつ、かなり面白かった。
こりゃヒットしただろうな~・・・と思わせられます。
ページ捲る手止まらない。
これやってたら観に行きたいですね。
アーサー・ミラーとか、テネシー・ウィリアムズの戯曲とかはちょっと、観に行こうって思えないのですが
このあたりの時代のが単に合うのか、どうなのか。
同時代の戯曲はちょこちょこ読んでいこうかなと思ってます。
ベン・ジョンソンとか、トマス・キッド、フレッチャーだとか。
『フォースタス博士』も読んだらたぶんアップします。