イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ (光文社古典新訳文庫)/トルストイ
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トルストイ・ブームがきています。どうしましょう。


どれだけ天才なんでしょう、この方。

始めはラジオラジオ。を聞きながら読んでいましたが、YouTubeTubeでベートーベンのクロイツェル・ソナタを聞きながら・・・・・。


あー、いいねぇ、幸せ。これでワインなんてあったら最高。

久しくクラシックって聞いていませんでしたが、父がクラシック好きです。

コンサートも最近全然行ってないけど・・・・(全然詳しくないのですが。わからない。)


ちょっとCD借りてこよう。



嫉妬から妻を殺した男、公爵ポズドヌイシェフが主人公。

この時点でひきつけられます。だって、私、「嫉妬」の専門家になる予定なんですから(笑)卒論でこのあたり書くのでねー冗談ですよ。


『イワン・イリイチの死』も倒叙法で書かれていましたが、こちらもそうなっています。


場面は長距離列車の中。乗客らは、そこで結婚制度や女性の地位についてなど語り合う。

そこに入ってくる、ひとりの男性。

彼は、「愛とは何か」 「それはどれくらいの期間なのか」と問いかける・・・・。


性欲は、何のためにあるのか?何故、このような恥じらうべき肉欲、欲望があるのか?

結婚はそれを正当化する行為・・・。



いや、でも、性欲は生殖本能のためでしょう?

でも、その当たり前すぎる答えにも彼は、こう答える。

「ではいったいなぜ人類が存続しなければならないのですか?」


結婚について、性欲について思わず考えさせられてしまう1冊。

ただね、ミルトンは『失楽園』でアダムとイヴの性欲さえも書いている。




そして彼は、列車内で妻を殺したのだということを男に告白し、その男がその話を聞くことになるのだが・・・。

妻とは喧嘩ばかり。

バイオリン弾きとの不倫を疑うポズドヌイシェフ。

そして・・・・・殺す。



実際に殺しているときの描写が・・・・・ああ、トルストイの力量が怖すぎるよ。


本当に不倫をしていた、と捉えるのが一般的らしいですが、どうなのかなぁ・・・・・絶対、とは言えない気がします。

私だったら「してなかった」として、論文書きそう。


「嫉妬」って何?

愛していないと、嫉妬なんてしないよ。


憎んでいても、嫉妬、って言う?ううん、きっと、ほかの言葉。


愛してるの?奥さんを愛してる?

どうなんだろう・・・・


嫉妬は黄色。緑色の目の怪物。自らはらんで、自らうまれる化け物。



トルストイ=ポズドヌイシェフ

と簡単に考えてしまって、いいのだろうか。


ただ小説の手法として、「こういう意見もあるよね」と指し示すだけの場合もある。

まったく逆のことを言いたい場合も多いだろう。


全ての小説にメッセージ性がある、とは思ってないけど(先にコレがあって小説を書く人なんて・・・・殆どいないでしょうから)


この人はまず、別格だと思うので。


ポズドヌイシェフは始まりのほうで、小説の主人公が恋に落ちた女性に出会う前に経験してきたことについては一切書かれていない」と指摘しています。


「彼が通った売春宿のこと、手をつけた小間使いや人妻のことは・・・・仮に読者が知っている場合があったにしても、相手の女性はそれを知らない」と。


確かにそうなんだよね・・・・・。ええ、確かにそう。リアリズムの追求にはならないのか。

(個人的には、そんなこと、相手の女性は知りたくないと思うよ)



でも・・・・ね、これをかの文豪 トルストイがいう言葉ではないよね(苦笑)


どうして、人類は存続しなければならないのか。

そんなことわからないけど

「自分の子孫を残したい」つまり、「自分の遺伝子を残したい」

とは思わなくても


「自分の子の遺伝子を、孫を、ひ孫を、残したい」

って思うのが愛であり、人間の本能じゃないかと思うんだけどなぁ・・・・・。

分からないのが、そう、主人公は子供は愛していたはずなのです。妻が死んだ後も、引き取りたがっているし

間違いなく愛しているのは分かる。



どうして?



トルストイの奥さんは・・・どんな気持ちだったんだろう。

禁書扱いだったのに、自ら宮廷へ出向いて直接皇帝に見てもらったのは、

奥さんです。

・・・・私なら・・・・出来ない。私との結婚は、なんだったの?ってなるよ。



かなり言われていることみたいですが、『アンナ・カレーニナ』を書いた人ではないだろう!

といいたい。

いや、アナタ自身がお子さんいっぱいいるじゃあ、ないですか。



トルストイはとにかく小説の始め方にうーんと唸ってしまうんですが

『イワン・イリイチの死』も『クロイツェル・ソナタ』も、終わり方が凄い。



とても簡潔で、敢えて抑えて、引き立っている。なんて人!

死を描き、それによって生を描く。

私が今まで読んだ中で、トルストイがいちばん素晴らしいその技術を持っていると思います。


ポズドヌイシェフという名には、「手遅れ」という意味があるんだそうです。

ふーむ、奥が深い。



『イワン・イリイチの死』も素晴らしいし、こちらも素晴らしかった。

やっぱり文学って「愛とは」「生とは」になっちゃうんだよね。


『悪魔』も読みましたが・・・・うーん、私は『イワン・イリイチの死』と『クロイツェル・ソナタ』のほうがもっと好きかな。

でも、3作品の中でもっとも共感できるのは『悪魔』。

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