夢みるピーターの七つの冒険 (中公文庫)/イアン マキューアン
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イアン・マキューアンの児童書です。

・・・”児童書”と言い切るのはちょっと、勇気が要ります。

形としては児童書なんだけど、子供はきっと読まないし

『星の王子さま』と同系統の小説かな。


空想癖のある、少年ピーターが主人公。

ピーターの紹介から始まって、人形、ネコ、消えるクリーム、いじめっ子、どろぼう、赤ちゃん、大人、の七章で構成されています。

最終章の「大人」はピーターが大人になってからの物語なので別の扱いにして――

6つ(7つ)の短編が収録されている形となっています。

どれもピーターが主人公ですしちゃんと繋がっているけれど、それぞれ独立していて、読む順序はどれでもいい、といった感じ。


かなり珍しく、The Daydreamerという原書のほうを先に読みました。

実は読み始めた当初・・・凄まじく読みにくく感じてしまったのです。

ピーターが空想するストーリーなので、その中では聞いたことない単語もあるっちゃあるけど、

全体的にかなり易しめの単語であり、構成なのに

「私、院目指すって言ってんのに、こんなのも読めないのか!?ガクリ


とか落ち込みましたね・・・・。

読み出した当時、英語は授業でやるものか、TOEICか、論文をひたすら読んでいたので

もっと堅苦しい文章が多くって

こういう文章を読むことに慣れるのに時間がかかりました。



今まで、1冊の本をじっくりと味わって読む、っていうよりは

1日1冊くらいのペースでどんどん読む、ってタイプですし

どうしても英語だと時間かかるからあんまり洋書って読んでない。


でも、やっぱり・・・・洋書を読んでいて泣ける、って凄いいいよね・・・・。

とにかく英語に多く触れたいし、これからは常に洋書は読もうと思います。


特に好きなのが「ネコ」と「いじめっ子」。

ネコのラストは泣けましたほろり



イアン・マキューアンって子供向きの小説を書くタイプじゃなくって

処女作の『最初の恋、最後の儀式』とか凄いと言われています。(まだ読んでないの。処女作だったはず)

『愛の続き』なんて凄い三角関係が描かれている。


キレイな文体に毒を入れる、というか・・・。

『贖罪』がなんせ一番読まれていると思うけど、あれはちょっと意外な感じでした。


児童書・・・・ねぇ・・・・

と思って読んでみましたが、侮れません。深いです。


ピーターはもちろん子供なので、彼から見た大人、であったり世界が

子供独特の考え方。

たわいないことなんだけど、世の中の不条理だとか、風刺まで感じました。(たぶん、深読みしすぎ。)



「ネコ」では、ピーターとネコのウィリアムの魂が入れ替わっちゃいます。

そして、ネコになったピーターはネコ缶を食べる場面があるのですが、これがシェパードパイからマッシュポテトを抜いたような・・・という表現をしていました。矢印そして作ったのが「リンクシェパード・パイ


因みに「赤ちゃん」でも赤ちゃんとピーターが入れ替わるのです。


どこまでが現実で、どこまでが空想なのかが分からないの。

ピーター本人も分かってないんだけど

このあたりがマキューアンぽいなぁと感じます。うまいんだよねぇ。



英語も面白い使い方をしていたり。

ピーターの”比喩”もかなり笑えます^^


ピーターは何故か突然、自分は存在しないんじゃないか?といったことをひたすら考える箇所があります。

夢なのかもしれない。

すべて、夢なのかもしれない。


じゃあ、死って眠りから覚めただけなのかも??


目が覚めたら、お母さんはどうなるんだろう。

もしかして、これは夢なんだから、ほかのひとがお母さんなのかな??


だとか。


非常に哲学的で、何だかデカルトの結論に達しないバージョンみたい・・・・。

個人的に「我思う、故に我あり」好きです。これでレポートも書いたし。



翻訳の文体がやっぱり『星の王子さま』に似ているんですよね。

みんな、むかしはピーターだった。


もう(一応)大人になってしまったけど、子供心って忘れちゃいけないよね。


The Daydreamer (Red Fox older fiction)/Ian McEwan
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