- 時計じかけのオレンジ 完全版 (ハヤカワepi文庫 ハ 1-1)/アントニイ・バージェス
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私コレずっと、アメリカ文学だと思ってた・・・・んですけれど?
内容はイギリスより、断然アメリカ的だと思います。(言い訳です、はい。)
あらすじだけは詳細に知っていましたが、ようやく初めて読みました。
300ページもない薄さに驚きました
絶対に好きだろう、と思っていた小説。
ディストピア小説とか好きだし、何処となく『ガリヴァー旅行記』と同じニオイを感じていまして。
実際に読んでみると・・・・
ドライサーの『アメリカの悲劇』とキージーの『カッコーの巣の上で』の雰囲気を足して2で割った感じ??
(雰囲気、です。)
ストーリーとしては前半だけでも十分成り立つかと思います。
大抵は前半のみで終わらせてしまうのではないでしょうか。
完成度は高いです。いや、高すぎます。
読み終わって何も考えない人なんて、いないんじゃないの??
やるせなくて、胸がしめつけられて、自業自得なんだけれど――
思わず考え込んでしまう。
大の海外の古典文学好きの私ですが
1962年に発表されているこの作品。
現代文学も捨てたもんじゃ、ないなぁ・・・・・・・。
この小説に至ってはあらすじ書かないと何もかけないので
以下、かなりネタバレしています。
ご注意ください。
主人公は15歳の少年アレックス。
退屈をまぎらわすために今日もドラッグ入りのミルク「ミルク・プラス」を飲み、超暴力に生きることだけを楽しみにしていました。
ホームレスに殴りかかったり、友達が具合が悪いから家に入れてくれ、などと嘘をついて家に乱入し
夫の見ている前で妻を何人もで犯したり。
その夫は作家で、この作家が書いていた小説が『時計じかけのオレンジ』でした。
その後また金持ちの家に侵入した際に人を殺してしまうアレックス。
友人たちに裏切られ、彼のみ逮捕されます。
人間味にかけたようにも見えるアレックスですが、
音楽を、特にベートーベンの第9を愛していました。
不良だけど、音楽を聴いているときに仲間がいざこざを起こしたりすると黙ってはいられない。
逮捕された後、ルドヴィコ療法の被験者となれば釈放されると知り、強く望みます。
しかし、看守は「これはよくない」と迷っている様子。
ルドヴィゴ療法とは、薬を注射した上でイスに縛りつけ、ただ映画を見せるだけ。
ただ、その映画がひどい残虐描写のもので薬のせいで
残虐行為をするどころか、見ただけで、考えただけでも酷い吐き気がする身体に変えられてしまいます。
しかもたまたま映画の音楽に使われていたのが
アレックスの敬愛するベートーベンの第9だったため
音楽を聞いても苦痛極まりない吐き気に襲われるようになってしまう――
自由だけど、自由じゃない。
「選択」がない。もはや人間ではない。
釈放されてから偶然、2年前に自分たちが襲ったホームレスに再会し、警官となっていた友人らにも再会し、そのどちらにも酷く殴られます。
アレックスはいくら殴られても、反撃することは不可能なのだから。
更に、その後に『時計じかけのオレンジ』の作家のところへ行くのですが・・・・
この後にもまだまだ展開があります。
強制的に良心を作り出せるのか・・・・?
思わず考えずにはいられません。
ナッドサット(言葉)によって繰り広げられるこの小説。”ハラショー”とかいう言葉を聞いたことがある方も多いんじゃないかな。
これは若者言葉で、ロシア語の影響を強く受けた英語、らしいです。
人工言語であり、隠語。
翻訳はその言葉にルビがふってあったからいいけど、これ、原書・・・・読めないよね
そもそもどうやって翻訳したのか疑問に思ったら
原書の巻末に用語辞典がついているみたいです。(だよねー)
なんでこんなわけがわからない言葉をわざわざ用いたかというと、
著者のバージェスは言語に卓越していて、現在使われている言語を用いて小説を書くと
すぐに古びてしまう・・・と分かっていたから、ということらしいですよ。
訳者も記していましたけれど
めちゃくちゃな言語を使って描写をし、名作を生み出す――って、本当に凄い技術。
とにかく凄い小説で、胸を打たれました。
どうして300ページ足らずでまとめあげることが出来たのか・・・。
映画も有名ですよね。まだ観ていないので是非観てみたい。
「雨に唄えば」を歌いながら作家の妻をレイプするシーンがありますが
これ、原作にはなくって驚きました。
どうやらマルコム・マクドウェルが唯一そらで歌える曲がこれだけだったかららしいです。
必読。
ぜひぜひ、読んでみてください。
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