セオドア・ドライサーの代表作とされる『アメリカの悲劇』。
先日彼の処女作『シスター・キャリー』 を読みました。
そのレビューで書いたのですが・・・やっぱり、『シスター・キャリー』のほうが”アメリカの悲劇”という感じがしたのです。ヒロインキャリーは実質的には成功するのだけれど、成功したとは一言で言えるものはないし・・・ちょっと皮肉って、私だったらこっちをそう名づける気がします。
アメリカ文学にはそんなに詳しくないし、ドライサーってごくごく最近の人。
でも、彼の描く世界観がなんとなーく掴めて来た気がします。
ドライサーは2作しか読んでいないけれど、似通っている点が多いですね。
誰もが共感できるタイプの主人公や登場人物では、ないのですよね。
でも、人間って結局こうだよな~・・・と考えさせられるというか。
主人公はクライド・グリフィス。とにかく貧しいけれどなかなか端正な容姿の持ち主。(キャリーとそっくり)
ホテルのボーイとして働き始めるところから彼の人生は大幅に変わっていきます。
そのころはホーテンという小悪魔的な女性をひたすら追っかけまわし、彼女のために高額のコートを買うか買わないか散々迷ったりといいように使われていたのに、叔父の工場へ勤めることになると今度はまったく逆の生活になって行きます。
ここでの恋愛はNGだと散々言われたのに、いや、それが燃え上がらせたのか。可愛らしいロバータという貧しい農家出身の女性と恋に落ちます。
彼女を愛したのか、愛してはいなかったのか。
最終的にはソンドラという美貌の富豪の娘と偶然知り合い、徐々にクライドはロバータを邪魔な存在に感じていくようになります。
さまざまな文学作品と比較されていますが、私はスタンダールの『赤と黒』のジュリヤン・ソレルと無意識に重ね合わせてしまいました。
似てる・・・?いや、そんなに似てはいないとは思うけれど、なんでだろう。
やっぱり、男性って追い掛け回したいものなの?
ホーテンとロバータはとても対照的で、男尊女卑だとかいう研究者もいそうな感じですね。
とてもいい子で従順で、尽くしてくれるタイプよりも魔性の女タイプのほうがモテることって多いですし・・・。
確かにロバータは追いすぎな部分もあったけれど、事情が事情だし・・・無理もない。
ここ、クライドって最低、としか思えませんでした。
上記のあらすじまでは、ね、
”よくある”話だと思います。
これから話は急展開。
クライドはとある罪を犯してしまいます。
いや、罪なのか?
罪を犯そうとしたことは間違いない。そう「しようと」したのです。
しかし、結果的には・・・・。
抽象的ですみません
勘の良い方であれば何を言わんとしているか、分かってしまうんじゃないかと思います。
日本語版ウィキではあらすじ等載っていなかったけれど英語版 にはありました。
キャリーも愛を知らないと思ったけれど、クライドも同じように感じました。
本人はクライドを愛していると思っているようだけど、”富豪の娘”でなかったら・・・・惚れたかなぁ?
『シスター・キャリー』はまるで女性が書いたよう、という感想を持ちましたが、こちらはやっぱり男性だなー。
余談ですが、どうも最近の訳があるのかないのか、市立図書館でも大学図書館でも見つからずに大学図書館の書庫から出してきてもらいました。
昭和45年刊の宮本陽吉訳の世界文学全集49で読みました。
訳は意外にもまったく古臭くなく読みやすかったのですが、表紙がいまにも剥がれそう(笑)
↓アフィリエイトにも貼った関連書も読むつもりです。
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