名声を夢見て有名作家のもとに身を寄せたニーナが恋に破れ、愛児を失いながらも新進作家トレープレフとの再会の中で自己に目覚め、女優としての道を歩み始める物語。


 『ワーニャ伯父さん』『桜の園』と続き・・・・『かもめ』です。あと『三人姉妹』でチェーホフの4大戯曲制覇音譜

 チェーホフ。もともとそーんなに興味があったわけじゃないのですが・・・・何度もこのブログにも登場している小田島雄志さん。彼がこの訳をされていて、(↓この下のアフィリエイトの白水Uブックスのですね)小田島さんの著書にも多くチェーホフの名画登場します。一番多いのは『三人姉妹』なような気がしますが。

 学生時代ペンネームで「池永保夫」を使っていたらしいですし。これで、「ちえいほふ」です。やるなぁ。粋ですよね。小田島さんらしいなー・・・・なんてニコニコ


 というわけで、小田島さんの訳を!と岩波文庫で読んでいたのですが3作目からこちらにシフト。

 でも、小田島さんってロシア語できたっけ?とずーっと疑問に感じていたんです。

 実はマイケル・フレインというイギリスの劇作家・小説家が英語に訳したものを小田島さんが訳しているそうです。

 ・・・・・でも、それって2度訳してるよね。出来たら直接ロシア語→日本語に訳したほうが原文に忠実になる気がするのですけど・・・?


 以前もブログに書きましたが、日本にはまだまだロシアの文化は入ってきていない。ロシアの慣習が理解できないから、特にロシア文学になると注釈は欠かせない。

 ロシアのものだけと限らず、古典小説になってくると膨大な注釈が入ってきますよね。※がついて文庫の最後に大量に注釈があっても結局読むスピード落ちるし、いちいち読むの面倒なので読まないことが多い。

 そうなると、そのページの左か下に書いてあると助かる。


 基本的に、シェイクスピアも松田さんは注釈結構入れているけど小田島さんはあまり入れないんですよね。お好きじゃないのかしら。

 そしてこのチェーホフもほっとんどないです。

 ある意味訳がうまい、のかもしれません。下手な訳だと、「・・・ん?」とページを捲る手が止まっちゃうけど、止まらないってことはきっとそうなんですねキラキラ

 原書にはとても太刀打ちできないから笑やっぱり幾つか訳を比べてみるのって好きです☆


 さてさて、本題に入ります。

 4大戯曲の中でも一番気になっていたこの『かもめ』。チェーホフの劇作家としての地位を不動のものにした作品です。

 3作目に突入すると、チェーホフ独特の世界観がちょっと見えてきました。うまく説明できないけれど・・・・大きな屋敷の中で、とか片思い、とか。彼の描く女性は強いのだか、弱いのだか分からない。愚かな女性が多いような気がするんですよね。

 戯曲は色々読んでいるけれど、チェーホフって結構ワンパターン・・・?


 トリゴーリンという小説家の台詞で人は皆「次はどんな作品を?」などとしか聞かない。褒め言葉などは気休めにしか思えない。などとリアルな小説家の悩みを吐き出している場面が中盤にあります。


 書いている最中は楽しいのだけれど、それが仕上がると書くんじゃなかったと後悔する。それなのに「うん、おもしろいし、うまい・・・・それはたしかだが、トルストイには遠くおよばないな。」だとか、「なかなかいい作品だ。しかしツルゲーネフの『父と子』のほうが上だろう」とかばかり言われる。きっと自分は死ぬまでそれを言われ続け、それ以上のことは言われないだろう・・・・。


 この場面は一番印象的でした。

 自分との比較としてツルゲーネフやトルストイが挙げられる。それなりの腕があるということにもなるし、もっと新米の劇作家等から見れば十分な地位にいるのでしょう。

 でも、ロシアの文豪の存在は大きい。

 事実私もこれであれば、○○の方が・・・・などとブログに書いてしまっているし、よく比較してしまっていますあせる


 これ・・・・まず、間違いなくチェーホフが彼の口を借りて本音を喋っていますよね。自分は、自分なのに自分として、自分だけを見てもらえない。やるせない思いが凄く伝わってきました。

 そしてこの『かもめ』は初演は壊滅的だったそうですから。


 

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