最近映画観すぎですね。今年に入ってからもう6,7作目でしょうか。

 講義で取り上げられ、非常に興味を持った本の一つ。まず、このタイトルに惹かれました。一瞬どんな話?どういうこと?と思いましたが。

 原題 One flew over the Cuckoo's nestそのまま日本語訳もカッコーの巣の上で。カッコウって、他の鳥の巣に卵を産み落として、育てさせるじゃないですか。そしてまだ目も開かないようなカッコウの雛は、卵を巣から落としていく・・・。

 なんて素敵なネーミングセンス、と思いましたが、精神病院の蔑称の一つに「カッコーの巣」といったものがあったようですね。


 ケン・キージーの原作はまだ読んでおりませんが、読むつもりです。本当は原作→映画というほうが好きなんですけどねニコニコ

 やはり、映画と原作は異なるようで、原作は主人公はチーフだそう。後述しますが、彼はインディアンの首長とその妻の子であり、精神病を病むチーフが語る空想物語となっているそうです。映画のほうでは、主人公は完全にマックマーフィーになっていますね。


 主人公のマックマーフィー(ジャック・ニコルソン)は数多くの罪を犯し、刑務所に入り過酷な労働をしたくがないために精神病院へとやってきます。

 だから本人は自分は「正常であり、病気ではない」と思っていますが、どう見ても言い方は悪いですが異常にしか思えない・・・

 マックマーフィーは精神を病んでいたのか否か、という議論が繰り広げられそうですが、現実的に精神病院では自分は精神病を患っている振りをしていても、実際はそのような兆候が見られることはあるそうです。


 マックマーフィーは絶対権を持つ冷酷な婦長に激しく対抗し、テレビで野球を見たいと訴えたり、病院を脱走してバスに乗り込み、船に乗って釣りをしたりとやりたい放題。

 自由は何一つなく、息の詰まる空間。どんなに激しく拘束されても、人間の尊厳は決して失われない。心までは奪えない。

 この作品はキージーがアメリカの管理主義を痛烈に批判したものとして有名です。この精神病院はアメリカという国家の縮図であると。国家権力は全米に管理統制の目を張り巡らし、社会の規格に反する者はこのような病院で改造し、社会に送り返すのです。


 始めは全く生気のなかったほかの患者たちも、彼の影響により徐々に仲間意識を強め、生き生きと輝きだします。


 患者の一人がマックマーフィーの女友達に惚れたと気付き、一晩の思い出にと別室に送り出します。その後婦長に激しく糾弾され、母親に言うと脅され、彼派結局自ら命を絶ってしまいます。

 怒りが爆発したマックマーフィー。抑えきれず、婦長の首を絞めて殺そうとします。これが原因でなんと強制的にロボトミー手術を受けさせられ、前頭葉を取り除かれます。


 そんな彼を見たチーフは彼を枕で窒息しさせ、「持ち上げたものには奇跡が起きる」と彼が言った水飲み台を持ち上げて窓を壊し、脱走していくところで映画は終わります。原作だと首を絞められて殺されるんですね。

 チーフが犯した罪は、殺人と言う大罪。マックマーフィーは苦しがり、もがきます。でも、廃人と化した彼への友情の証の殺人でもあるのです。こんな状態で、生きていて何が楽しい?身体は生きていても、死んでいるのと何ら変わりはない。何も感じず、何も考えられず、生きる屍となってしまった友人への、精一杯の思いやり。

 

 その後チーフはカナダへ行くと言っていますが、彼がカナダへ行けたのかどうかは定かではありません。


 1975年度のアカデミー賞では主要5部門を受賞しています。これは「或る夜の出来事」以来の快挙だそうです。

 何より、主演女優賞を受賞した冷徹な婦長ラチェッドを演じたルイーズ・フレッチャーが素晴らしいです。たまに優しげな表情を浮かべることもあり、それが更に味を出して迫真の演技でした。彼女が悪役に描かれているけれど、全てが彼女の責任と言うわけではなく、彼女に押し付けているだけに過ぎない・・・んですよね。


 色使いからしても、とても暗い内容の映画です。お友達とわいわい、デートの時に、というのには相応しくはありません。

 でも非常に、考えさせられる感慨深い映画ですね。

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