チャタレー事件ってご存知ですか?高校で政治経済をやっていたら、必ず教わっているはずです。高校の先生は、この1つの事件にまるまる1時間使いました。その先生はこの本を読んだと言っていましたが、殆どの社会科の先生は読んでないよう。教える立場だったら、読んでいただきたいなぁ。

 この事件は、『チャタレー夫人の恋人』を日本語に訳した伊藤整という人と出版社長が訴えられた事件です。つまり、こんな猥褻な小説を訳すなんて!!となんと裁判にまでなってしまった・・・ということ。

 だって、裁判ですよ?どんだけ卑猥なものだと思うじゃないですか。

 ちょっと、そういうのがあまり好きでない私としては読みたくはありませんでした。


 でも、文学を専攻しようとしたらロレンスや『チャタレー夫人の恋人』は出てくる出てくる。そういった専門書などは、比喩として著名な作品を用いてくるので、読んで理解していないとさっぱり分からない。(ギリシャ神話とかもそうですね)

 そして、猥褻書ではなく、れっきとした文学作品」とよく書いてあるし、読まなきゃまずいなという理由で結構前に読みました。


 結論から言うと、いいです。素晴らしいです。どこが猥褻?どこが?まぁ確かにそういうシーンもあるけど、今時どんなラブストーリーの映画だってないことないじゃないですか。

 その出版された時代は、この小説でも翻訳されて訴えられるなんて・・・・。因みに、イギリス本国でも禁書扱いされているんですよね。

 現在では文学を語る上で欠かせないような著名な文学作品でも、昔は禁書扱い、ってことの多いこと。でも、同時に今が緩くなりすぎなのは否定できない。アメリカのヤングアダルト小説とか、ちょっと一部酷すぎるものもありますし。『ゴシップガール』とか読んだけど、あれ普通にドラッグとかやっちゃってるし、これが悪いことではなくて普通だと思いそう。自分の子供には絶対読ませたくないけどなぁ汗2



 確かに、これは大胆に性の問題を扱った作品。肉体の愛による魂の解放をテーマとしています。

 チャタレー夫人はタイトルどおり、浮気をしてしまいます。しかも、相手は自分の領地の森番メラーズ

 まぁ、なんてこと!!浮気だなんて!!!

 ・・・・と言いたいのは山々なのですが、実は彼女には理由がある。

 そもそも、夫であるクリフォード・チャタレーは戦場で半身不随になってしまっているんです。

 妻のコンスタンスは、当然夫を必死で介護をします。半身不随と言う事は、自分で排泄も出来ない。今のように入院させる、というわけにもいきませんし、妻がひとりで一日中世話をしなければならない。夫自身も、動かない下半身に苛立ちを感じ、妻に当たってしまったりと、始終いらいらしっぱなしで険悪なムード。コンスタンスの妹も、そんな姉の姿を見てとても心配します。

 映画では、夫の排泄物の入った陶器の洗面器?を持ったコンスタンスが、その中身をトイレに流そうとして、泣き崩れるシーンがとても印象的でしたね。

 こんな状況では、妻もとてつもない心労があったはず。やるせない夫の気持ちも分かるけれど、コンスタンスのほうが辛かったんじゃないかな。



 クリフォードは男爵であり、広大な領地を所有しています。彼らが住んでいるのはカントリー・ハウスといわれる、田舎の広大な家です。領地には森なども含まれ、カントリー・ハウスの所有、保持には莫大なお金がかかります。権力の象徴でも有るとは思うけど、だから売り払ってしまう人も多かったようですね。

 彼らには、それらを継いでくれる子供がいなかった・・・。夫は半身不随。もう子をもうけることは出来ない。でも、彼はこの家を、領地を、自分の代で失ってしまうことは出来なかった。先祖に申し訳が付かないと。


 そして、妻のコンスタンスに何て言ったと思いますはてな

 「私には跡継ぎがいるんだ。でも、私はもう子を作ることは無理だから、お前が他で男を作れ。チャタレーの血は入らないが、この際仕方がない」といったことを妻に言うんです。

 なに、これ!更に条件として、同じような階級の出で、子供が出来たらすぐに身を引くこと。そんな都合のいい話、ありゃしませんよねむかっ


 確かにこれは不倫を描いた話ではあります。でも、これは酷い。だって自分から外で他の男と寝て来いと言ったじゃないですか。

 妻を女として、見ていない。単に跡継ぎが欲しいだけで、愛などない。女の身体を、それこそ産む機械としか見ていない。これで浮気されて、文句言える?


 でもね、クリフォードの言っていることも理解できるといえば出来る。本当にカントリーハウスを存続させるのは大変だったようだから。

 愛があれば、お金など要らない。勿論愛はお金じゃ買えないし、お金の方が愛より大事だなんて決して思いたくはない。でも、現実的にはお金ってないと生活できないから、綺麗ごとに過ぎないときもある、というのが現実でしょう。

 著者のロレンスは、痛烈に批判していますね。


 因みに「チャタレイ」という言葉はフランス語圏では失笑をかうらしく・・・。「相手を去勢する」という意味らしいのです。


 この後どうなったのか、敢えて触れません。興味を持たれた方、是非読んでみてくださいチップとデール チップ

 これは、必読。文学作品として素晴らしいと思います。彼の自然の描き方がとても好きです。

 

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