シュレディンガーの猫だとか、量子力学だとか、プレートに光やら、波やらを当てたところ観測することによって世界が変わるという説は、水曜日でなくても一般的で通説だ。

 

どういうことかと言えば、世界は無限に存在するということだ。格好をつけて言えば、「きみの可能性は、無限なんだ」ということである。

それが科学的には正しいということだ。箱の中の猫が生きているか死んでいるか。生きている可能性も死んでいる可能性も、きみ次第だということだ。

 

冗談ではなくそれが量子力学的な常識なのだ。

 

それはつまり、いわゆるパラレルワールドという存在が正しいということになる。

単に、ジャンケンをするとして、きみがグーを出すかチョキを出すかパーを出すかという単純な話じゃない。

未来はそんなに単純なものではない。

きみがジャン、ケン、といった後に人差し指を突き出すかもしれない。中指を突き立てるかもしれない。親指を突き出してサミングを仕掛けてくるかもしれない。そういった意味で「無限」なのである。

 

そこで思い起こすのがジョン・タイターという人物だ。

ジョン・タイターとは、2000年前後に、おれは未来から来たと掲示板に書き込みをした自称タイムトラベラーである。

この人がどういう予言をしたとか、当たったとか外れたとか、信じるとか信じないとかは、別の問題だ。どうせ予言が外れても、自分が過去に来たことで歴史が変わったというのだ。

 

それより注意を惹かれてしまう言葉を彼は残している。

ググったりしないので細かい違いはあるかもしれないが、こんなことを言っている。

 

「私が来た時代では善悪の概念がこの時代とは大きく異なっている。ある人が取る行動のすべては、どんな行動だとしてもそれは可能性の一つとして、ありえるからである」

 

ウィキペディアあたりにもっとわかりやすい言葉が残っていると思う。

 

つまり、こういうことだと解釈する。

「飲酒運転で事故を起こしたあいつは死刑にすべきだ」

「サリンを撒くような教祖は殺してしまえ」

「大量殺人を起こしたあいつは死刑にしろ」

 

そんな当たり前に聞こえる声。

それが、未来の時代では「それをしたのが、あなた自身だったかもしれない」「たまたまこの世界のあなたがそれをしていないだけにすぎない」という考えが強く、通説として広まっているということだろう。

おれが麻原彰晃みたいなことをする世界線もあるかもしれないし、大量殺人をする世界線もあるかもしれないのだと。

 

どんなきっかけによればそのような考えが広まるのか、通説になるのか、考えもつかない。

タイムトラベラーより間違いがないと信じるに足りるような、ドラえもんのような存在がもしもボックスでこの世界に現れるとか、

そのくらいのインパクトがなければそのような考えが当たり前になることはないのではないか。

 

2000年あたり、ジョン・タイターが現れてその言葉を残した頃にはそこまで量子力学的な考えはなかったのではないか。

それなのに、「おれの世界では、こうだぜ」と言う。2022年頃、徐々にそれに追いついている。そこに不思議な興味を抱くのである。

 

世界はいくつも存在する。メタであり、マインクラフトでもあり、パラレルでもある。どれも現実に違いあるまい。