前作 で述べましたように、
(前作?)
怒りと悲しみとに打ちひしがれるカバ太郎でございます。
でもその一方で、微かな幸福と希望にも充たされるぽよ太郎 でございます。
(一々名前を変えるな!)
いいじゃないか、福ちゃんだって何度も改名してるし。
「...」(←何度も改名させられている福ちゃん。またの名をお札先生、そのまたの名をおイモ先生)
ついでに本名は福澤諭吉先生 です。
「どこが本名だ!」(←福ちゃん)
今日は前にも書きましたようにオール玉虫君プロ のコンサートでした。
因みに今回は都民芸術フェスではありません。
そして今回はきっちり間に合いました。
もうぎりっぎりでしたが...
(そういうの、きっちり間に合ったというのか?)
だからもうぎりっぎりにきっちり間に合ったのです。
(...)
だって直前までお仕事してたんだもーん。
(やった内に入らないじゃないか)
うーむ...昨日遅くて、つまりは今朝も遅くてなー。
目覚まし10時にセットしたつもりだったのに鳴らないから随分早くに目が覚めたんだなーなどとゴロゴロしてから見てみたら...
(ゴロゴロしてるんなら起きろよ)
11時半...
(要するにセットし忘れたのだな)
その後元々予定していたシコ踏み(=仕事)だけでなく別件も入ってあたふたと...
(携帯開けてなかったからじゃないか)
...
大変だったんだよ。
到着予定時刻が開演1分前。
(...)
何とかならないかと電車の中で携帯で乗り換え調べたら、新宿での乗り換えを2分で済ませることができればもう一本早い電車で到着できる...
あ、今日の会場はまたオペラシティです。
知ってる人はわかると思うが、新宿駅でJRから京王新線まではかなりある。
だが...再びあのイノシシ走り をすれば何とかなるかも...
と猛然とダーッシュ!のカバ太郎でしたが...
はっきり言って新宿駅でイノシシ走りはできないのだ...
人が多過ぎる...
それでも「どけどけどけーい!」とばかりに頑張ったカバ太郎でしたが...
やっぱり無理だった。
しかも...
少しでも時間短縮のためにとホール直結出口前の車両に乗ったつもりが...
反対方向に行ってた...
(...)
わーん...余計に時間食ってしまったよー。
(ついこの前 行ったばかりじゃないか)
わーん...焦るあまり...
地上に出た時には既に息絶え絶え...
なのに、ゆうゆうとホールに向かって歩いている結構な数の人は何だろう?
こっちはもうぜーはーぜーはーと肩で息をしながら歩いてる人を追い越して更に続くエスカレータをボテボテと昇り...昇り...昇り...
会場入ってまた3階までぜーはーぜーはーと昇り...
ぎりぎりでセーフ!
だけど...
わーん...凄く変な席だ。
正面席の奥の方に近い左翼席(2列目)。
オペラシティのホールはコの字型だから首をぐいんと曲げないとステージなんか全然見えない。
だから見るのは諦めた。
それでは早速プログラム紹介と参りましょう。
(全然早速じゃないんだけど)
前半:幻想曲「岩」
「ピアノ協奏曲第2番 ハ短調」
後半:交響的舞曲
指揮:イラン・ヴォルコフ
ピアノ:アンナ・マリコヴァ
オケ:都響
(...作曲家は?)
だから玉虫君だと書いたでしょうが、さっき。
(もっと一般人にもわかるように書け!)
やーね、ラフマニノフの呼び名も知らないなんて。
(誰も知らん!)
今日のタイトル見たってわかるじゃないか、アホ!
(↑気が立っている)
それでは1曲目「岩」。
これ聴くの初めてです。
正直今一だったな...
玉虫君らしい透明感とかはあるんだけど...
例えばまるで息絶える寸前のひぐらしの最後の鳴きみたいな弦の入り方とか。
(どういう曲だ...)
玉虫やー、岩にしみ入るひぐらし君
といった感じでしょうか...
(↑実はこの句の冒頭を思い出せない)
でも全体的には何か、まだ習作段階の曲みたいだなーと思いました。
かなり初期にでも書いたのかなと。
後で案内冊子見たら本当にごくごく初期の作品だった。
フッ、やっぱり耳はいいのだ、私は。フッ
(耳しか良くないの間違い)
...
だが問題はこの曲の途中から既に始まっていた。
すぐ近くから寝息が聴こえて来たのだ。
それもかなり大きな...
時々いるんだよなー、こういうのが。
寝る位ならコンサートなんか来るなよ。
とはいえ...
私は他人がコンサートで寝ようが何をしようが全く構わない。
無音でさえあれば!
あまりにも大きな寝息だ。
しかもあまりにも近い。
もしかして...私の隣のおばさんか?
でも目を開けている。
とはいえ...
目を開けたまま眠れる器用な人もいるというし...
でも寝てるようには見えないなー。
となると...
これは寝息ではなく、鼻息...?
しかし...
心臓麻痺起こしそうなほど(?)走って来た私でさえすぐに呼吸を整えて水のように静かなのだ。
その前から座ってたおばさんが何でこんなに鼻息が荒いのだ、馬じゃあるまいし。
...などと思ってる内に1曲目が終わってしまった...
「...」
だが...まだいい。
この曲は玉虫君にしては大したことはなかった。
この曲でだけならまだ許そう。
しかし...
今思えば、1曲目が終わった時点で全く離れた空いている席にでも移動するべきだった...
P-コンの為に舞台上のピアノを移動するので結構時間が空くのだ。
でもマナー違反はマナー違反だし。
結構ぎっしりの上、この合間にぞろぞろ入って来る人がいたからどこが空いてるかわからないし...
などと逡巡してる内にステージが整ってしまった...
そして始まるカバ太郎の悲劇...
冒頭のピアノによる導入部。
それを聴いてるだけで胸が高鳴ってきた...どきどきどき...
まだ始まったばかり。
なのに...どんどん高まるこの胸の高鳴り...
(何かくどいな...)
どきどきどき、どっきんどっきん...
この音は...
この重厚で荘厳な音は...
ああ...!
これこそラフマニノフの鐘の音...!
そして始まるロマンと陶酔の世界...!
...の筈がぁ!!
「スー!スー!スー!」
「...」
もの凄い鼻息だ。
何で馬なんかコンサート会場に入れるのだー!!!
いや何としてでも演奏の方に集中せねば。
やっと...やっと...巡り合えたのだ、ラフマニノフの音に...!
これまで聴きたくて何度足を運んでも聴くことのできなかった...
その音が今ここに...
「スー!スー!スー!」
「...」
何度振り返っても、止まない...
私の反対側の隣は1つ空いていてそのまた隣の人まで何度も不快な顔で鼻息の方を振り返る。
やはり私だけではないのだ、気になるのは。
それはそうだろう。
あれだけ特大の鼻息では...
馬のような鼻息ではぁ!!
邪魔するな、ばかやろー!!!
集中できないー!!!
少しでも遠ざかろうと、第1楽章終わったら第2楽章までの合間に今荷物置いてる方の空いてる隣の席に移ろうと決めたが...
その間も...
「スー!スー!スー!」
た、耐えられないー!
せっかくの演奏がぁ!!
やっと...やっと...巡り合えたラフマニノフの音がぁ!!!
でも幾ら何でも呼吸するなとは言えんしなー。
隣とはいえ曲の途中で席を変えるなどマナー違反も甚だしいが、遂に耐えきれずそーっとそーっと荷物を移して滑るように移動。
でも...
わーん...1コ移ったた位じゃ変わらないよー!!
どうやら隣だったおばさんではないらしい。
ではその隣のおじさんか?
でも何度睨んでも違うみたいだ。
(違う人睨むなよ、気の毒に...)
となると...
そのまた隣のマスクをしている若い男か?
そうだ、そうに違いない!
きっと風邪か何かで鼻の通りが悪くて息をするのに一々あんな音がするのだろう。
だったら...だったら...
口で呼吸せんかー!!!
それが嫌ならエラ呼吸でもしてろ!ばーろー!!
(エラ呼吸...?)
...などと気を削がれている内に大好きな第1楽章が終わってしまった...
わーん、わーん、わーん...
第2楽章。
これがまたこの上なく美しく、ロマンティック...
といってもやはり重厚さと深みがなければラフマニノフの音にはならない。
ならないのだよ、怖ダル君 。
(久々登場、怖ダル君)
やっぱり幾らロマンティックな音でも彼の音はラフマニノフではなかったのだと今改めて確信する。
いや怖ダル君だけではない。
これまで生で聴いてきたこの曲の全てのピアニストがラフマニノフの音ではなかった。
全てニセモノの音だった...
ラフマニノフとしては...
上手い下手ではない。
いや実際このアンナおばさんも上手いのだが...
(おばさん?これだけの演奏聴かせてくれてるのに何という言い草)
いや先走り過ぎてオケとかなりずれた個所もあったが...
それも思い入れと、タイミングの問題...
上手い下手を感じさせる時点でそれはもう音楽以前に技術表現になっているということ。
勿論、技術がなければこんな音は出せない。
だが、技術があってもそれだけでは出せないのだ。
これが...今聴いているこの音こそが...ラフマニノフの音...!
ずーっと探し求めていた...
...涙腺の辺りが膨れてくる...
......
「スー!スー!スー!」
「...」
うがー!!
何とかしろー!!!
こうなると殺意さえ覚える...
雑巾のように締め上げて3階から投げ落としてやりたいぜ!
飛びきりロマンティックな第2楽章も結局浸ることもできず、曲は遂に最終楽章へ。
...ああ、やはりこれこそがラフマニノフの音...
こうして聴いていて、やっといくばくかわかってきたことがある...
ラフマニノフの音は結局のところロシア人にしか出せないのではないか...?
そういえば最もお気に入りのテープのコンドラシンも確かロシア人。
鳥肌ものの演奏を聴いた3番の時のボリス・ベレゾフスキーもロシア人。
他の国のピアニストがどんなに頑張ってみても...この音には届かないのではないか...?
あのモスクワの独特の重い空気...
それを思い出しながら至極当たり前のように納得がいく。
といっても合計でも1日半位しか歩き回ったことはないのだが...
その時感じたあの空気の重さ...
別に物理的に重いわけじゃないよ、勿論。
人々の雰囲気が重いというのでもない。
何と表現していいかわからない。
だが何か重い、重い空気を感じたのだ。
それが現代に至るまで圧政や陰謀の繰り返しだった歴史を背負う町故なのか、他の何かなのかは分からないけど。
ロンドンでもちょこっと感じることはあるが、重さが全然違う...
日本の空気にはないね、ああいう重さは。
日本人は何につけても淡白だからかな...?
日本の空気は軽い。
日々生活するにはその方が楽だけど。
そこで生活するピアニストにラフマニノフの音はやはり出せないだろう。
あそこまで重厚で荘厳で深く、しかも納豆演奏とは全く違う意味での粘りのあるロシアならではの濃い音は...
と思っていたら...
このアンナおばさんはロシア人ではなかった...
名前と顔からロシア人と思っていたが...
あ、私は何故かロシア人というかスラブ系はわかるんです。
(わかってないんじゃないか)
...勘が鈍ったかな?
北欧ではほぼ100%わかったんだけど。
アンナおばさんは後で冊子読んだら、ウズベクの人だった。
でも旧ソ連とわざわざ断ってあるし、当時のソ連の英才教育もあるからきっと幼い頃からモスクワで音楽の勉強をしていたのだろう、ソ連時代に。
いってみれば旧ソ連人なのだ。
だがそんなことはもうどうでもいい!
大切なのは...この音にやっと会えたということ...
第3楽章はまた盛り上がる...
華麗で荘厳で透明で...そしてロマンティックで...ドラマティック...!
「スー!スー!スー!」
「...」
いい加減にしろー!!!
終わった後は泣きたくなってしまった...
何年かけて、何度この曲の為に足を運んだことか...
1度も満足する演奏に出会えず、もう不可能かと思ったことも...
どころかニセモノの音ばかりに腐ってきて 曲への評価まで下がりそうだった今日この頃...
やっと...やっと...出会えたのに...
オケも良かったのに...
馬の鼻息なぞで台無しにされた...
もうあんな演奏には2度と会えないかもしれない...
悔しくて悔しくて...
やっと会えたこのピアニストに向けてフラメンコ叩きをしながら涙出そうだった...
それから凄い勢いで荷物を全部持ち、受付へ行って
「近くの人の鼻息が凄くて台なしでした!席を変えて頂けませんか!」
(↑怒りに震え、殆ど涙声のカバ太郎)
席変えてくれました...
だがもう遅い!
後半の「交響的舞曲」も良かったです。
初めて聴いたんだけど...
玉虫君が望郷の念にかられながら書いた晩年の作品です。
舞曲とはなっているけど、決して楽しい踊りの曲ではないよ、勿論。
厳しい、痛みの感じられる舞曲です。
でも美しい...
やっぱり玉虫君だ、これは。
指揮者は写真見た時スケール小さそうに見えてあまり期待できないと思ったのだけど、これがなかなか...
イスラエル出身と後で知ってなるほどと...
イスラエルの指揮者はやはりこれまでの長い苦難の歴史のDNAがあるのか、厳しい、重い、痛みのある音楽での表現力が優れているような気がします。
昨年のインバル さんもイスラエル出身で素晴らしいタコさんを聴かせてくれたし。
「交響的舞曲」は1940年の作品だけあって金管もかなり活躍するのだが、全然この前みたいにうるさくはなかった。
ストラじじーの曲 ではもうヒステリックにひきつった音で音楽性さえ疑いたくなるような音だったが...
今回は品の良い音で心地よかった...
この音の違いが曲の違いによるものか、指揮者の指示によるものか、奏者の能力の差なのかは定かでないけれど...
最後の曲は演奏も良く、鼻息荒い馬もいず、楽しめたは楽しめたが...
それで前半を補うのは不可能...
やっぱり悔しくてね...
これまでの長年の思いがあり、しかも一生にそう何度もあることじゃないから、それだけの演奏というか音に出会えるのは...
ただ...
4月に西本さん が振るラフマニノフP-コン3のピアニストがロシア人なので希望が持てるな、と。
勿論、ロシア人なら誰でも出せる音ではないと思うけど。
でも相当な個性派だそうし、スケールもでかそうだし。
それと...
今後はラフマニノフのP-コンは何処で何回やろうとも、ロシア人(または旧ソ連出身の年配)ピアニストでない限りやめておこうと思う。
その代わり多少高くてもロシア人ピアニストの時に行った方がいいよ。
本当に、これまで何回行ったろう...?