福島の子供の糖尿病の原因は? (1/2) | タイ語、単語帳の素材?

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備忘録。

2015年5月下旬にタイトル変更。
ここは、site δ です。

 前回は、福島の子供の糖尿病に関し、元の記事(5/17の東京新聞。ココ 参照)に載っていた原因の説明は「舌足らず」ではないかという趣旨を指摘したのだけど、今回は、これを補うため「舌を噛む」ほどに原因分析をしてみよう。

 その前に先ずは、注意点を。「人間は予測することが出来ない。だから予測は必ず間違う」と武田邦彦氏は語っている。個人的には大いに共感する。特に、東電福一事故関連については、経験上報道内容の多くをそのまま鵜呑みにできないので、いろいろな断片情報にあてて吟味し、自分の頭の中でより真実に近い事実認識を構築し絶えず見直しつつ考えなければいけないと感じられる。

 そもそも正確な現状認識があったとしても予測は難しいのに、今は何が現状かをそれぞれ個人が推測し、対応策を考えていかなければならない環境にあるといえる。従って、このブログに書いてあることの多くは間違っているだろう、という態度で読み進めてほしい。


 本題に戻ると、ウェブ上をながめていると、子供の糖尿病の原因として目に付くものとしていわば「イットリウム90原因説」とでも言うべきものがある。それは、例えば某掲示板の緊急自然災害板から拾うと、

147 名前:地震雷火事名無し(福岡県) 投稿日:2012/05/17(木) 14:49:34.28 ID:zQB0bRds0
 ■ 120512FukushimaDiary福島県須賀川市公立岩瀬病院の三浦院長
 『市内仮設住宅に住む小学生以下の十人のうち六人を糖尿病と診断した。異常事態です』
  ストロンチウム90はイットリウム90にベータ崩壊し、
 膵臓に蓄積して膵臓癌や糖尿病を引き起こす。

この説の元をたどると、以前に紹介したスターングラス博士の言説が大本のようである(以前の記事はココ )。この点について、彼の講演録から引用すると(アーネスト・スターングラス博士の青森講演(「放射線と健康」、2006年)の記録 http://fujiwaratoshikazu.com/2011disaster/ リンクはココ )、

 乳児死亡率や低体重児出産のほかに糖尿病があります。
 1981年から2002年の間にアメリカの糖尿病罹患者は580万から1330万に増加しました。それと同時に原子力発電所の稼働率は40~50%から92%に増大しています。(注:アメリカ国内の原子力発電所の建設は1978年以来ないので稼働率が発電量を反映する)
 原子炉の検査やメンテナンスや修理の時間がより減少してきたことがあります。その結果、振動によってひび割れや放射能漏れが起きています。

 1959年ドイツのスポーディ博士などのグループがストロンチウム90をたくさんの実験動物に与えました。それらは当初カルシウムのように骨に蓄積すると予想されていたのですが、実験室がイットリウム90のガスで充満していることを発見しました。イットリウム90は、ストロンチウム90の核から電子がはじき出されると生成する元素です。このようにストロンチウム90からイットリウム90に変換します。
 そこで実験動物の内蔵を調べた結果、ほかの臓器にくらべ膵臓にもっともイットリウム90が蓄積していることが判明しました。
 また、肺にも蓄積されていましたが、それはラットの肺から排出された空気中のイットリウム90をまた吸い込んだためだと考えられます。
 膵臓はそのβ細胞からインシュリンを分泌する重要な臓器です。それがダメージを受けるとタイプ2の糖尿病になり、血糖値を増大させます。膵臓が完全に破壊されるとタイプ1の糖尿病になり、つねにインシュリン注射が必要になります。おもに若年層の糖尿病の5~10%はタイプ1です。
 アメリカと日本に共通していることですが、ともに膵臓がんの数が非常に増加しています。 (スライド13の解説から)
 
ここでは、米国で1981年から2002年の間に糖尿病罹患者は約2.3倍に増加し(580万から1330万に増加)、それと同時に原子力発電所の稼働率は約2倍に増加していた(40~50%から92%に増大)という事実があり、この相関が現れた理由として、体内に取り込まれたストロンチウム90(Sr90。半減期29.1年)から崩壊して生じたイットリウム90(Y90。半減期2.67日の放射性物質)がすい臓に蓄積したことが示唆されているようだ(なお、ストロンチウム90については、例えば原子力資料情報室(CNIC)の記事「放射能ミニ知識 - 7. ストロンチウム-90(90Sr)」 http://cnic.jp/modules/radioactivity/index.php/8.html を参照。リンクはココ )。

 このストロンチウム90の崩壊の過程で糖尿病になる可能性はもちろん否定しようもないが、これで全て(10人中6人の割合で発症)を説明するのは、かなり無理があるのではなかろうか。なぜなら、そうだとするといろいろと疑問がわいてくるからだ。例えば、

(1) イットリウム90があるということは、体内に(多分骨に)取り込まれていた相当量のストロンチウム90が崩壊したわけだが、その影響はどうだったのか(糖尿病の増加にみあうように白血病や骨折なども増加しているのか)、

(2) ストロンチウム90の半減期と生物学的半減期はかなり長く(それぞれ29.1年、約50年)、一旦体内に取り込まれたならば漸減しつつもほぼ一定量が崩壊していくのだが、そうすると事故約1年後の発症率60%は更に上昇する可能性が高いけど、本当にそうなのか。

やはり何かしっくりこない。イットリウム90原因説で多くを説明しようとすること自体に無理があるのか、あるいは現状では何か重要な情報が隠されているため全体の構図がしっくりこないのかは全く明らかでないが、個人的には前者の可能性が高いのではないかと思われる。

 では、ほかに発症率60%の原因があるのだろうか?

(つづきはココ


〔関連記事〕
福島の子供のメンタル症状と糖尿病 2012/5/17 (既出)
糖尿病 〔YNNチェルノブイリ報告から〕 2012/5/18
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注) ・5/25 続きリンク貼り