一般には意外と知られていないようですが、
国によってTVの方式は結構バラバラだったりします。
方式が違うということは、つまり
「日本のTVで再生できる信号を送っても、
それが他の国のTVで再生できるとは限らない」
ということです。
据え置き機向けゲームをローカライズする場合、
こうした国によるTV方式の違いも意識しなくてはいけません。
<参考リンク(Wikipediaより)>
● 国によるTV方式の違い → ( デジタル放送 / アナログ放送 )
私が経験したのは、日本向けのPS2専用ソフトを
欧米向けに移植するローカライズプロジェクトでした。
米国向けバージョンは日本と同じNTSC方式なので、
TV形式に関しては気にしなくてもOK。
しかし欧州向けバージョンではそうはいかず、出力する信号を
NTSC方式→PAL方式 に変える必要がありました。
(余段ですが、テスト機やTVもPAL方式のものを揃える
必要があったので、若干の設備投資も必要になりました)
さて、信号を変える作業自体は割とあっさり終わったのですが、
フレームレートが変化したことで、一つ大きな問題が発生しました。
フレームレートとは 「1秒間に描画するコマの枚数」 のことで、
これが多いほど画面が滑らかに動きます。
NTSC方式は 29.97(≒30)枚/秒 なのに対し、
PAL方式は 25枚/秒 。
つまり、日本のTVは一秒間に30回画像が切り替わるのに対し、
ヨーロッパのTVは一秒間に25回しか切り替わりません。(※)
(※アナログ方式の場合)
これがなぜまずいかというと、元のプログラムの組み方にもよりますが、
ゲームのテンポを変えてしまうという困った現象を引き起こすからです。
例えば、とあるモーションに「30フレーム」使うゲームがあった場合、
それをNTSCで再生すればぴったり1秒で終わりますが、
PALで再生すると1秒+5フレーム(=1.2秒)かかってしまいます。
このようにゲーム進行をフレーム数に依存する作りにしていると、
NTSC→PAL に移植した際、動きが20%くらい遅くなってしまうのです。
(※逆も然りで、PAL仕様のゲームをそのままNTSCに移植すると
動きがチャカチャカと早まったものになってしまいます)
ただ、それでゲームが必ず破綻するかというと、そうでもありません。
全体的にそろって遅くなるので、オリジナル版を知らない人が、
最初からそういうものだと思ってプレイすれば、
案外違和感がないこともあります。
しかし、アクションゲーム等のように
タイミングがプレイ感に直結しやすいゲームでは、
やはりプログラムを修正しないわけにはいかないのです。