ダンガンロンパ に関連して、もう一つ語っておきたいことがあります。


このゲームは、大山のぶ代だけに限らず、

かなり豪華な声優陣 で固められています。

(実際、皆素晴らしい演技力で、声優の力量不足によって

 違和感を感じるようなシーンは一つもありませんでした。)


しかし、これだけ豪華キャストをそろえているにもかかわらず、

本作はフルボイス仕様にはなっていません。

重要シーンや定型箇所はきちんとボイスでしゃべりますが、

あとは「ふぅん」とか「あはは」といったボイスが

SE的に組み込まれているだけです。



声優を豪華にしすぎて予算が尽きてしまったのでしょうか?

それとも、UMDの容量に入りきらなかったのでしょうか?



いいえ。


遠因としてはそれもあるかもしれませんが、

恐らく、主要な理由は別にあります。


このゲームのスタッフは、

意図的にフルボイスにしない道を選んだ……

少なくとも、私はそう考えています。



ゲームをフルボイス仕様にすると、華やかになる代償に、

制作上、大きなディスアドバンテージを抱えることになります。


何かと言うと、シナリオの後調整が極めて不自由になるのです。


例えばテストプレイ中、シナリオに矛盾が見つかったとします。

しかし、当該箇所のボイスを既に録り終わってしまっていたら

どうでしょう。容易には変更できないですよね。


つまり、極端な話、フルボイス仕様にすると

ボイス収録後はシナリオをいじれなくなるのです。


通常、ボイスの収録はゲーム完成より数ヶ月前に完了させます。

もっとギリギリでもいいのでは?と思うかもしれませんが、

入れ込んだボイスが正しく鳴っているかテストする時間も必要なので、

そういうわけにはいきません。


しかしそうなると、シナリオが変えられなくなってからも

数ヶ月間テストが続くことになります。

そしてそのテスト中、シナリオを調整したくなるような報告

(プロットの矛盾に限らず、テンポ上の問題だったり、

キャラブレの問題だったり様々)がよくあがってくるのです。


調整できれば作品のクオリティが上がるのに、

フルボイスであるがゆえに諦めざるを得ない……

そういうことは、実は珍しくありません。

(実際には切ったり貼ったりの努力で何とかすることも多いですが、

 ノンボイス時に比べて大幅な制約が入るのは間違いありません。)



ダンガンロンパのスタッフは、こうした事実を考慮に入れた上で、

フルボイスによって得られる利点よりも、

シナリオの練りこみによって得られる恩恵を重視した……

推論ではありますが、恐らくはそういうことだと思います。


賛否両論あるでしょうが、

フルボイスが当たり前になりつつある昨今にあって、

個人的には評価したい英断です。


※誤解のないよう言い添えますと、

 私は「フルボイス=ダメ」と言いたいわけではありません。

 それぞれメリットデメリットがあるので、

 それらについては近日中に別の記事にしてみたいと思います。

ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生/スパイク
¥5,229
Amazon.co.jp