令和6年度の予算や政策について審議する東京都議会予算特別委員会「2024年を東京都のインクルーシブ教育元年に」というテーマで質疑しました!

 

 

 

インクルーシブラジオに、質疑の音声をアップしましたので、聞きながらスクロールしていただくと、資料を見ながら聴けます耳

 

 

予算特別委員会の議事録

 

 

国連での動き 

 

 障害者権利条約ハンドブックに「最良の教育環境」
 

 私は、誰もが自分らしく輝きながら、参加しているという実感が持て、居場所がある社会、インクルーシブな社会の実現を目指しております。その実現には、教育におけるインクルーシブな環境の推進が最も重要だと考えております。


 2006年に国連で採択された「障害者権利条約」には、その内容をより細かく解説したハンドブックというものがあります。そこに、インクルーシブな教育がなぜ重要なのかというのが記されているので、一部ご紹介させていただきます。

 

 

 

 

 

 

 障害者権利委員会の総括所見→日本の分離教育に強い懸念

 

 日本はこの条約を2014年に批准していますが、2022年には、日本における条約の取組について、国連の障害者権利委員会からの総括所見が示されました。その中で、障害のある子たちが分離された環境で教育を受けていることに強い懸念が示され、インクルーシブな教育へとシフトしていくべきだとの勧告が出されたところであります。

 

 

 

 

日本の現状:分離教育が加速ー知的障害児がより特別支援学校に 


 

 こちらは文科省の資料です。平成11年から令和1年までの11年間の障害種別ごとの特別支援学校に在籍する子の数の推移です。


 ほかの障害種別が横ばいであるのに対して、オレンジ色で示されている知的障害のある子供たちの数が増えています。一番下に小さく特別支援学校の数も出ているんですけれども、1039校から1149校と、110校が新設されています。

 

 こちらは文科省の令和五年度の学校基本調査です。小中学校の児童生徒の数は過去最少になったのに対して、特別支援学校は前年に比べて二千七百人増加して、十五万千人と過去最多になったということであります。


 これを総合して見てみますと、これまでは地域の小中学校で学んでいたような知的障害のあるお子さんたちが、より特別支援学校で学ぶようになっていて、そのトレンドが途切れることなく進んでいるということが見えてまいります。

 

 

東京の現状:障害児の9割が分離された環境で学ぶ 

 

 東京都の現状を見てみますと、インクルーシブな教育環境の推進に関する調査、そして研究、実践的な研究を着実に進めてくれていると認識しております。しかし、現状としては、特別支援学校の対象になる五つの障害種別のある子供の約三五%が特別支援学校で、そして約五五%が特別支援学級で学んでおります。つまり九割のお子さんが分離した環境で学んでいるということになります。

 

 

 

 

 特別支援学校への就学についても増え続けていることから、令和元年の計画では、特別支援学校を十一校新設して、八校の増改築の計画が示されておりました。


 特別支援学校は、うちの息子も通っているんですけれども、非常に優れた教育をしていて、それを否定するものではございません。ただ、現状ではこのような分離した場所における教育というのが主流になっている中で、よりインクルーシブな教育環境を進めていくために何ができるのか、何をするべきなのかということを考えていく必要があります。

 

 

東京でインクルーシブ教育を進めるために 

 

  日本では分離をしていくという方向に川が流れている状況です。その川の流れを反対にしようというのは非常に難しいというのが現実です。何か一つのスイッチを押せば、インクルーシブな教育が進むということではなくて、複合的かつかなり長期にわたった取組が求められています。

 

その中でも、まず初めに取り組んでいくべきと私が考えている三つがこちらになっております。

 

 

地域の学校を「選べる」ようにする

 

就学先をまだまだ「選べない」

 一つ目は、区市町村の小中学校で学ぶということを選べるようになるということであります。


 現在、障害のある子が就学先を決定する際には、本人、保護者の意見を最大限尊重するということになっているんですけれども、実際は選べるという環境にはまだなっていないといわざるを得ません。

 

 

特別支援学校へと児童生徒を押し出す「予算構造」がある

 その最大の要因は、区市町村の小中学校では、特別なニーズのある児童生徒を受け入れる体制が十分には整っていないということがあると思います。その体制が十分に整えられない背景には、予算的な構造があるということをこれまでも申し上げてまいりました。

 


 特別支援学校の教育費というのは一人当たり約七百五十万円です。区市町村は、都立特別支援学校にお子さんが行くと予算的な負担がありません。一方で、特別支援学校相当のお子さんが地元の小中学校で学ぼうとすると、その教育費の差額約六百万円相当の合理的配慮や支援員の予算を区市町村が負担する必要があります。実際には、この差額相当を区市町村が負担するのは難しいかと思います。


 なお、子供の就学先を決定するのは、東京都ではなくて、区市町村の教育委員会であることから、教育的な観点とは別に、予算上の理由でも、特別支援学校へと障害のある子供を押し出す見えない力があるというふうに(これまでも過去の文教委員会や一般質問で)お話ししてまいりました。


 私は、障害のあるお子さんと保護者が地域の小中学校で学びたいという意思があっても、それを選ぶことがなかなか可能とならないのは、こういった予算的な背景がボトルネックになっていると考えております。

 

 

地域への予算的支援となるインクルーシブ教育支援員


Q1.

 去年の第四回定例本会議の一般質問で、教育長から、「都教委は、支援員の活用等によるインクルーシブな教育をより一層推進するため区市町村への新たな支援策を検討する」との答弁をいただきました。2024度の具体的な取組内容についてお伺いいたします。

 

<東京都教育委員会 浜教育長の答弁>
 都教育委員会は、来年度新たに、特別支援学校への就学が適当と判定された児童生徒が身近な公立小中学校で学ぶことを希望する場合について「インクルーシブ教育支援員」として区市町村が支援員を配置するための経費を支援してまいります
 
 具体的には、該当児童生徒が一名または二名の小中学校には支援員一名分まで、三名以上の場合には二名分までの人件費について、二分の一を補助いたします。
 
(答弁する浜教育長)

 

 

インクルーシブ教育支援員のおかげで「選択肢」広がり始める

龍円:

 インクルーシブ教育支援員制度の創設を受けて、私のところには既に複数の保護者から、「来年度は毎日支援員がつくことになった」という声が届いております。これまで自費で支援員に約月十数万円払っていたという親御さんは、その負担がなく学校に通えることについて喜んでおりました。来年度、地元の学校に就学を希望していた親からは、支援員が週五日つくことになり、学校長からの入学の許可が出たということであります。こういう喜びの声を聞きながら、本当に涙が出るほどうれしく思います。


 今回のインクルーシブ教育支援員は、障害のある子供たちが地元の学校で学ぶことを選択できる一歩になるというふうに確信しております。

 

 

特別支援学校や特別支援学級でも日常的にインクルーシブな環境を保障する


 次に、取り組むべき二つ目の項目なんですけれども、全ての学びの場においてインクルーシブな環境が得られるということであります。


 インクルーシブ教育は「万人のための教育」といわれていて、全てのお子さんが対象となっている教育でございます。特別支援学校や特別支援学級に在籍している児童生徒であっても、日常的なインクルーシブな教育環境が保障されるようになる必要があります。

 

 

特別支援学級の児童生徒の共同学習は”限定的"


 都教委では、特別支援学級におけるインクルーシブな教育を推進させるために、これまでに都内の特別支援級のある全ての学校を対象とした調査をしております。(※この調査は一般に発表されていません)それによりますと、運動会とか学芸会といった年数回程度のイベントのことで交流をしているのが主流ということで、日常的な交流や共同学習が行われているのは少ないという実態が見えてまいりました。


 都では、より日常的で計画的な交流と共同学習をするために、豊島区などで実践的な研究をしてまいりました。これらの成果を生かして、今後、日常的な交流や共同学習が可能となる取組を推進していただきたいというふうに考えております。

 

 

日常的な共同学習を可能にするインクルーシブ教育支援員活用


Q2.

 都教育委員会はこれまで、特別支援学級と通常の学級の子供たちが共に学ぶ、交流及び共同学習の充実に向けて取り組んできましたが、今後の取組についてお伺いいたします。

 

<浜教育長答弁>
都教育委員会では今年度、より多くの学校で交流及び共同学習が実施されるよう、中学校の知的障害学級や小中学校の自閉症・情緒障害学級での事例の収集や取組の検証を行っており、来年度、その成果を取りまとめて普及を図っていきます。

 また、来年度は、特別支援学級の児童生徒が交流及び共同学習として通常の学級で学ぶ際の支援員についても、インクルーシブ教育支援員として新たに補助対象とし、小中学校での交流及び共同学習を一層推進してまいります。
 
※特別支援学級のお子さんが、通常学級で共同学習をする際にも「インクルーシブ教育支援員」を配置できる。

 

龍円:

特別支援学級の児童生徒が通常の学級で交流や共同学習する際にも、インクルーシブ教育支援員が活用できるということが新たに分かりました。


 特別支援学級の児童生徒が誰の支援も得ずに、一人で通常の学級に出向いていって、そこで慣れない環境で、慣れない先生と、慣れない通常学級の児童生徒たちと一緒に交流と共同学習をするというのは、非常に難しい面がありました。しかし、これまではこの交流とか共同学習のための人的な支援がありませんでした。


 しかし、このインクルーシブ教育支援員を活用すれば、日常的な交流、共同学習が可能となるはずです。ぜひ多くの支援学級の児童生徒に利用していただきたいと思っております。

 

 

インクルーシブ教育支援員の質を向上させる研修

 

 

支援員が「インクルーシブ」を理解する重要性


 さて、インクルーシブ教育支援員が効果的に力を発揮していただくためには、その支援員がインクルーシブな教育について理解して、どうしたら障害のある子がほかの児童生徒と一緒に学ぶことができるのかという支援の方法を知っていることも重要であります。
 

 というのも、支援者が支援をする対象の子だけを見て支援をしてしまうと、授業とは全く別のことを一人だけしていたりとか、同級生とその子の間に支援者が入ってしまって、インクルーシブな交流が生まれにくくなってしまうというケースがあるからです。

 

Q3.
インクルーシブ教育支援員の質の確保についても都教委として取り組むべきだと考えますが、見解をお伺いいたします。

 

 

<浜教育長答弁> 

支援員の質の確保につきましては、児童生徒を円滑に支援できるよう区市町村において必要な研修を実施しています。こうした支援員の研修用に、都教育委員会は来年度、特別な支援が必要な児童生徒の特性等の基礎的な知識や、教員との連携等について取り上げた動画を作成いたします。これを区市町村に提供して活用を促すことにより、支援員の質の確保に取り組んでまいります。

 

龍円:

支援員の質を確保するために区市町村における研修をして、支援員が学べる動画などを作成するということです。きめ細やかな制度設計に感謝いたします。全ての学びの場でのインクルーシブな環境の確保ということで、特別支援学校での副籍交流についてもお伺いしたいところなんですけれども、時間の都合上、これは明日の文教委員会にて質問させていただきたいと思います。

 

 

区市町村の小中学校の特別支援教育力を向上させる

 


 さて、三つ目なんですけれども、地域の小中学校における特別支援教育力を向上させていく取組も重要であります。これは、言うのは簡単なんですけれども、実際に実現するのは非常にハードルが高いポイントとなっております。


 私のダウン症のある息子を地域の学校の通常の学級に三年半、通わせていただいたんですけれども、その中で教員の皆様の様子を拝見しますと、本当に頑張ってくださっているんですけれども、なかなかこの教育をするということに自信を持って取り組むのが難しいんだなというのをうかがい知ることができました。


 ですので、こういった教員の方々の特別支援教育力の向上というのが絶対に必要だというふうに実感しているところであります。
 

Q4. 

特別支援学校への就学が適当と判定された子供たちを小中学校で受け入れるのであれば、様々な観点から総合的に環境を整備して、インクルーシブな教育を推進することが必要だと考えますが、都教委の見解をお伺いいたします。

 

 

浜教育長答弁

都教育委員会は来年度、特別支援学校への就学が適当と判定された児童生徒が身近な小中学校で学ぶことを希望した場合に、支援員に係る経費を補助するほか、重点地区に指定した区市町村については、指導体制を総合的に支援してまいります

 

具体的には、児童生徒の特性に応じた教材、教具等の購入や、教員研修のための費用を支援するとともに、特別支援学校のより専門性の高い教員について、人事交流による当該地区指定校への配置を調整するなど、インクルーシブ教育システムの体制整備に取り組んでまいります。

 

 

特別支援学校と地域の学校で計画的な人事交流

 

龍円:

インクルーシブな教育の重点地区を指定して、総合的な支援を行っていくということが分かりました。

 

この特別支援学校の教員と地域の学校の教員の人事交流を計画的にするというのは、本当に念願でありました。特別支援学校の教員が地域の学校に来ることで、その学校にいる特別なニーズのある児童生徒へ、より効果的な教育ですとか支援をすることが可能になりますし、それはその学校のほかの教員も学ぶことができます。


 また、地域から特別支援学校に行った教員は、様々な障害のあるお子さんへの教育や支援方法について経験を積みますので、地域に戻った後は、特別支援学校判定のお子さんがクラスに来たとしても、大丈夫と自信を持って受け入れることができるはずです。


 特別な教材を用意する費用についても支援し、地域における教員のスキルアップのための研修費用も負担するということでありました。こういった総合的な取組で、インクルーシブな教育を担える地域の教育環境が築かれていくことに期待が高まります。
 

 今日の質疑で、都教委が本気でインクルーシブな教育環境を推進しようとしてくれていることが伝わってまいりました。二〇二四年は、東京のインクルーシブ教育元年になったと後でいわれるような年になるのではないかというふうに期待しております。どうぞ、しっかりした取組をお願いいたします。

 

 

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