【桐壺105-③】をかし☆
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■【をかし】
■【べし】
■【ず(ね)】
■【かの】
■【形見】
■【とて】
■【かかる】
■【もや】
■【たまへり】
■【装束(さうぞく)】
■【~領(りゃう】
■【髪上げ】
■【調度(てうど)】
■【~めく】
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今日は、「あはれ」と「をかし」の違いについてです。
古文解釈のいちばん重要なポイントとしてよく取りあげられている「あはれ」と「をかし」。
基本的な意味は、どちらも「趣深い」ということになります。
なので、同意語という気がしますが、使い方やそのニュアンスは、かなり異なっているのです!
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【あはれ】(形容動詞)
①しみじみと趣深い
②かわいそうだ(哀れ)
③すばらしい(アッパレ)
【をかし】(形容詞)
①趣深い、風情がある
②面白い、興味深い
③おかしい、滑稽である
ほら!②や③の意まで見ると、かなり違いがありますよね。
では、どのような違いがあるのか、詳しく見ていきましょう!
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まず第一に、品詞が違います。
【あはれ(なり)】は形容動詞(名詞の場合もあり)。
【をかし】はシク活用形容詞です。
同じ様態を表す語ですが、品詞が異なるので、活用や使い方にも違いが出てくるんです。
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第二に、基本的な意味のニュアンスが違います
【あはれ】は、しみじみとした情趣を表します。
「しみじみ」って、感覚的でわかりにくいかもしれませんが、なんとなくウエットな感じ。
しっとりとした、趣深さを表します。
秋の山、あはれなり。
秋の山の醸し出す深い趣…。
たとえば、鹿が女性の悲鳴のように鳴く、切ない雰囲気…。
たとえば、これから冬に向かって枯れてゆく紅葉のはかなさ…。
そういう深い部分の切なさや情趣をすべてひっくるめた、じんわりと心にわき上がってくる感情が、「しみじみとした趣深さ」なのです。
それに対し、【をかし】は、ドライな感じがします。
秋の山、をかし。
秋の山は、すばらしいわ♪
たとえば、紅葉が色鮮やかに風に舞い散る美しさ…。
たとえば、美しく飛ぶ赤トンボ、美しく奏でる虫の調べ…。
そんな、直接的な美しさやすばらしさからもたらされる、「感覚的な趣深さ、興味深さ」を指すんです。
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第三に、文脈での意味の見分け方が違います。
【あはれ】は、文脈判断を要する語。
文脈の中で、プラスの意味にも、マイナスの意味にもとれるんです!
例1.)美しき子あるは、あはれなり。
例2.)亡き子を思ふは、あはれなり。
どちらがプラスの意か、マイナスの意かは、わかりますよね♪
(※文脈判断単語の一覧は、こちら を参照)
【をかし】は、プラスイメージの語です。
面白い!すばらしい!
などのニュアンスでとらえ、文脈にぴったりの訳出を選んでください♪
(※イメージで見分ける単語一覧は、こちら を参照)
ただ、辞書には今の「おかしい」意もあります。
ですが、今のようにマイナスのニュアンスがメインに用いられるようになったのは、中世以後。
どうしてもプラスの意で文脈に合わないようなら、現代の意ではないか、と考えるようにしましょう。
あいでした
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■【をかし】…趣深い
■【べし】…(当然・義務)
■【ず(ね)】…(打消)
■【かの】…あの(指示語)
■【形見】…忘れ形見、残した物
■【とて】…~ということで
■【かかる】…このような(指示語)
■【もや】…~もあるかしら(疑問)
■【たまへり】…~なさっている
■【装束(さうぞく)】…衣装
■【~領(りゃう】…(装束などを数える語)
■【髪上げ】…女性の成人式
■【調度(てうど)】…身の回りの道具
■【~めく】…~のようである
【原文】
をかしき御贈り物などあるべき折にもあらねば、ただかの御形見にとて、かかる用もやと残したまへりける御装束一領、御髪上げの調度めく物添へたまふ。
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