男がもう一人の男の上に馬乗りしていた。

しっかりと握りしめられたこぶしが

下の男の上に振り下ろされる。


地面に寝転ぶ二人を囲む男たち。


腕組をしたまま黙って見る男。

ビール片手に二人の真上まで近づいて

何か言っている男。

二人を指差しながら

笑っている男。


食堂から漏れる光が

男達の汗と血を照らす。



その光が照らした先に

先ほどの機械工がいた。

下で殴られているのは彼だった。


喧嘩が他人事ではなくなった。


「ちょっと、どうしよう・・・止めないと!」

思わず前へ進みそうになったのを友人が止めた。

「止めてもムダだよ。

 それに、これは俺らが入る問題じゃない。

 さっきから、あっちでくすぶってたんだ」


どうやら問題は、

例の機械工が私たちの車を修理することにあったらしい。

私たちと機械工のやり取りを見ていた男たちの中に

昔から村に住む機械工がいた。


その古機械工にとっては新機械工は

「オレの仕事を横取りした生意気なヤツ」

新機械工は

「オレが取った仕事だ。ゴチャゴチャ言うな」

ということで取っ組み合いが始まったらしい。



目の前の男たちは

上と下を入れ替えながら

転がっては止まり

止まっては転がり

殴り殴られていた。


理性も思考も尊厳もなく

ただ人間の中にある

動物的な本能があるだけだった。


横の男がつぶやくように言った。



「アフリカの喧嘩はどちらかが死ぬまでさ」