道なき道の激道中 9

テーマ:
ティッシュともぼろ布ともつかないものをつめたままの

この機械工。

実はなかなかの腕利きだった。


溶接機を持ってきたかと思えば

すぐに車の下にもぐりこんだ。


あっけないほど簡単に応急処置は終わった。


なんとか明日の見通しがたったところで

俄然おなかが空いてきた。

薄暗い食堂に戻る。


「何か食べるものある?」

「Caril de Cabrito」

カブリート?







カブリートのカレー?




「メェー メェー」


食堂のおばさんが笑いながら、

手であごをさわっては下にのばす。



ヤギだ。


道路わきに放し飼いされていたあのヤギ達だ。

あのヤギ達は食用だったのだ・・・・



「・・・他には何かある?」


「これだけよ。」

そういって、おばさんは壁にぶら下げられたスナック菓子の子袋を指差した。


「じゃ、カレーを」 

しぶしぶ、恐る恐る口に入れたヤギの肉は

やわらかく、クセのない牛肉のようだった。

それでも、なぜかなるべく肉を避けて

ソースとしろご飯だけを口に入れる。


道路わきにいたヤギ達が

目の前にチラチラするのだ。


チラチラしていたのは

ヤギだけではなく先入観もだった。



食べるものではないという思い込みが

気もそぞろに食事を終わらせてしまった。


食が満たされると

今度は寝場所の心配が頭をもたげてきた。
AD

道なき道の激道中 8

テーマ:
2人が行ってしまった。

辺りは静けさと暗さを増したようだった。



男たちはまたビールを飲み始める。

食堂には1人、2人と客らしき人の姿も見えるが

やはりテーブルに置かれているのはビールだけだった。


昼ごはんを食べた記憶も定かでなかったが

空腹は全く覚えなかった。

食堂の前の薄暗い小さな電気バルブの下で

身を丸めて車を眺めていた。


「いろいろ部品が取られないように

しっかり見張っておいて」

友人はそう言い残して行った。



テールランプカバー、ワイパー、ドアミラー、バンパー、マフラー

そんな部品がついていることさえ意識さえしなかった様なものまでが

盗みの対象になる。



しかし、そんなものはどうでもよかった。






「自分を守る」



それ以外に重要なことはなかった。


どうすれば身を守れるのか?




武道か武器か


懐疑か信頼か


笑顔か威嚇か



私のこの恐怖感は

日本で同じ状況に置かれたときに感じるものと

同じだろうか?



周りの人が、モザンビーク人でなくても

同じ恐怖を感じるのだろうか?




・・・・・




カタカタカタ・・・・


暗闇に一筋の光が見えた。



2人が帰ってきた。


手には約束どおりの溶接機が携えられていた。



AD