ファンタジーといえば、小野不由美さんの「十二国記」シリーズのファンですが、なかなか続編が出なくて寂しい思いです。
ここではないどこかの世界を舞台に壮大に描く物語は、作家の想像力の偉大さに感服してしまいます。ワタシたちの生きているこの現実ではない世界で、人のようで人でない者たちが、うつつと背中合わせになったような社会を築き、特殊能力を使いながら、ワクワクするような冒険を見せてくれ、そして人としてのあり様を、作家さんの持つ哲学をもストーリーに織り込んできます。すぐれたファンタジー小説を読んで心を遠くに遊ばせるのは、本当に楽しい事です。
 
こちらの「八咫烏シリーズ」は、まだ若い作家さんで、なんと20歳で本作をもって「松本清張賞」受賞という快挙をとげたということ。色々な方のレヴューを拝見すると若さゆえの「物足りなさ」があるというご意見も見受けられますが、そうだとしてもこの世界観の構築は素晴らしいと思います。烏に変身できる人たちの住む高い山に築かれた住居や朝廷の描写、平安時代を思わせるきらびやかな姫たちの衣装、韓ドラ時代劇のような(個人的好み(^-^;)権力争いなどなど、とても楽しい読書でした。

「烏(からす)に単(ひとえ)は似合わない」
八咫烏一族の宗家の若様のお妃選びが行われます。ある名家の姫君の視点からストーリーが語られ、可憐で美しいこの姫君に感情移入しながら読み進みました。この可愛らしい姫様が選ばれるといいのだけど、、、。ラストで、ある種のどんでん返しが!あっ、と世界が裏返ったような気分になりました。作家さんにやられましたね(^-^;

「烏(からす)は主(あるじ)を選ばない」
こちらは続編ですが、前作のお話の続きではありません。同じ時間軸の物語を別の人物の視点から、語ります。先のストーリーでは、肝心の若様がほとんど登場せず、お妃選びをする本人が出てこないでどういうこと?、という疑問が解消され、朝廷での権力争いが重層的に示されて、登場人物の色々な謎が明かされていくミステリー仕立てのお話がまた、楽しい。前作でのあの出来事の裏はこういうことだったのね、という作りがなんとも面白いです。

この二編は続けて読むのがオススメですね!
崖から飛んで烏に変身して羽ばたいてゆく、八咫烏一族の人々としばしのお遊び、いかがです。