今年の直木賞受賞作で話題となっている本書。
芥川賞のピース又吉「火花」がものすごい人気となっているので読みたいと思いますが、なにかとっつき難い芥川賞(^-^; エンターテインメント好きの自分としては、直木賞のこちらに大変惹かれたゆえ、珍しくも単行本購入とあいなった次第です。

舞台が台湾、殺害された祖父の犯人を捜す孫、ノワールな匂い、自分のストライクゾーンにピシピシ入ってくる筋立てに、またまたのめり込む読書でありました。

主人公の葉秋生(イエ・チョウシェン)は優秀な高校生でしたが、幼なじみで悪友の戦雄(ジャンション)の誘いに乗り、軽いバイトのつもりでやった替え玉受験がばれて、高校を退学になります。仕方なく最低レベルの高校に転入し、そこから社会の底でもがき続けるようなノワールな青春を送るはめになってしまいました。

喧嘩上等、ヤクザ、見えない将来、大学受験失敗、軍隊学校、兵役、、、。
そして、2歳上の幼なじみの毛毛(マオマオ)と恋愛関係になるものの、理由不明な失恋に血の涙を流します。後年わかった、その理不尽な理由もいやはやな、、気の毒な秋生。
祖父の大陸時代の殺戮と、それにつながるらしい祖父が何者かに殺された事件とその犯人は、、の謎に迫る秋生の執念。

暴君的だった祖父とは、一見違った風に見える秋生です。戦後世代で、台湾にも日本やアメリカから新しいカルチャーがどんどん入ってきて、いわばちょっと軽めの現代ッコ的な所がありますから。しかし、祖父の血を色濃く受け継いでいるのは間違いなく、終章では大陸に渡ってついに見つけた真実と祖父の晩年の思いにまで至ります。
自分もその祖父の思いに何ともいえないある種の共感を抱いたのが、最後の感想でした。

本書を読むに必要なのは、台湾と大陸、2つの中国の存在と日本の介入の歴史問題であると痛感です。共産党と国民党の内戦や殺戮、日本のスパイ、大陸からやって来た外省人と台湾土着の本省人との確執、それらが混沌している歴史を荒っぽく生き抜いてきたのが祖父ですから。

あと、中国名の読みが覚えられずに困ったのが、自分の弱点(笑) 漢字名をついつい日本語読みしたり、字面として読み飛ばしたり。手元に人物相関図と読み仮名を置いて読んだら良いかも、、、と、思いながらも図を作るのが面倒でした(^-^;