坂東 真砂子
山妣(やまはは)

本の好みが似ているTさんのお勧め。好みが似ているだけあって、坂東眞砂子は自分も幾つか読んでいる。「曼荼羅道」という本もまた、マレー半島に惹かれて読んだものだが、独自の世界感がなんともいえず面白かった。他では、母と息子の濃密な愛情を書いたものなども気になった。そういうのは、ちょっと息苦しいほどのものに感じたが、この「山妣」のお母さんはとても好き。お母さんらしくは無いのだけどね。


何事もエキスパートである、というのは良いことだと思う。スキルは生きる自信になる。山妣は山暮らしのエキスパートだ。食べ物の確保や、雪深い冬山で生き延びる術、熊などの危険から身を守る方法、山歩きで鍛えた足腰。山には山の掟があり、山で生かされている者の考え方で生きている。我が子との距離感がいい。里で生きている子どもの世界には干渉しないが、自分のテリトリーに帰ってきた子には、避けるでもなく、関心を持つでもなく、ただその存在を認識している。だが、もしひとたび子に危険が迫ろうものなら、注意深く見守っていた者ならではの、素早さと我が身を省みない行為で守ろうとする。また子が自分の世界に返ろうとした時には、何も問わずに無言の別れをするが、遠くから見守っている。そして、たぶん一人でひっそりと死んでいくんだろう。


なんだか、理想のお母さんのような気がしたな。誤解されるといけない、決して美しい母親ではない。獣のような、出会った人を恐怖におとしめるような、白髪振り乱した醜い化け物のような存在だ。それでも、この母はステキ。


夕食:幣舞の冷やしたぬき蕎麦

晩酌:Arbois Savagnin 1999 Domaine de la Pinte シェリーのような香り。ふーん、普段なかなか飲まないワインだけど、チーズにもなかなか合うものだなあ。

反省:今日は反省するようなコトは無かった!・・・と、気づいて無いところにきっと落とし穴が(^_^;