約6年振りの本格推理もの新作が発売決定。今こそ『名探偵コナン』のゲームを振り返ってみよう。 | アドベンチャーゲーム研究処

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取り上げる範囲は家庭用のみです。

【概要】
6年ぶりの本格推理アドベンチャーという煽り文句の踊る
新作『蒼き宝石の輪舞曲』が発表され、再び脚光を浴びている(予定の)「名探偵コナン」。
実はアニメと同じく今年で『名探偵コナン』のゲーム化も(ギリギリ)15周年なため、
その地味に長い家庭用ゲームのキャリアをザラッと見てみる、そういう企画です。



【本編】

約6年振りの本格推理もの『名探偵コナン 蒼き宝石の輪舞曲』が発売決定。今こそ『名探偵コナン』のゲームを振り返ってみよう。(公式)

名探偵コナン 魔術師の挑戦状! WS 【ワンダースワン】名探偵コナン 呪われた航路
ワンダースワンで3作、ゲームボーイでは5作も展開されている『名探偵コナン』。今ではその知名度とは裏腹にあまり売れていないのだが、当時はそこそこのセールスを記録していた…はず。記憶のみ。

ゲームデビューだった『名探偵コナン 地下遊園地殺人事件』は、
ポケモン全盛の1996年発売だったこともあってそれ風の画面作りで、
ゲームそのものは総当たりで話を進展させる平均的なものだったのだが、
なぜか初期の選択肢によって展開そのものが分岐するマルチシナリオを起用しているのが特徴。
決してガクガクのフルポリゴンで起こされた地獄遊園地をうろうろするゲームではないが、
シナリオは何故か隠し部屋があったり、突如ミニゲームをさせられたりと、
かなりの無茶が各所にちりばめられており、キャラクターゲームの感が色濃い。
次回作の『疑惑の豪華列車』も、このゲームシステムが採用されており、実質姉妹作と言える。

その後はワンスパン空いて2000年代に入った3作目『からくり寺院殺人事件』は
開発元がアルファユニットへ変更されたこともあって雰囲気がガラッと変わり、
マルチエンドではあるがほぼ1本道となり、シナリオも話数重視からスケールの大きなものへと変化。
2ヶ月後という短スパンで発売された続編『奇岩島秘宝伝説』との連動や、
独自性としてマルチサイトっぽいシステムが収録されており凝った方向へ進んだ。
のだが、煮込み不足でキャラクターものの域を出ておらず今更取りあげるべき部分は少ない。
GB『名探偵コナン』は全作共通でトップビューによる移動パートが収録されているのが特徴で、
キャラクターを見せてナンボという大人の事情が見え見え隠れ見えくらいに見えているが、
当時の携帯機で全体像を出すためには、明らかにスペックが足りてなかった。

この頃はGB以外にもトムキャットシステムが開発していたのでも有名な、
ワンダースワン『名探偵コナン 魔術師の挑戦状!』が一作目で10万本以上を出荷しており、
その後『西の名探偵 最大の危機!?』『夕暮れの皇女』の合計3作品が展開されている。
当時はノベルシアターシリーズがウケたり、BANDAIがファーストパーティということで、
(そのためワンダースワンが展開されていた頃のGB版『コナン』はバンプレストより発売)
キャラクターゲームに注力していたため、予算も出たのか進化もそこそこあったのだが、
このシリーズは推理パズル(今で言えば『踊る大捜査線 THE GAME』みたいな感じ)なので、
本格的なシナリオのアドベンチャーというより、携帯機向けに特化したものになっていた。はず。
(プレイしたのは発売当時なので、実のことを言えば細かい部分は全く覚えていない。)

名探偵コナン トリックトリックVol.1SIMPLEキャラクター2000シリーズVol.11 名探偵コナンTHEボードゲーム

据え置き機で発売されたゲームの第一弾はPS『名探偵コナン』。
そうです、劇場版『ルパン三世』(複製人間は後付)の様にサブタイトルが付いていないのです。
内容は当時では珍しいフルボイス仕様という、据置デビューなだけあって気合いの入った作品で、
オーソドックスなポイント&クリック形式の推理アドベンチャー「同級生殺人事件」と、
シューティングなどのミニゲームが収録されている「孤島の宝物事件」の二部構成。
キャラクターゲームとしては珍しく、アクション要素と推理要素が明確に別れていたのだが、
次回作『三人の名推理』では早速ミニゲームとストーリーが合体している。
シリーズが進むとフル画面化や立ち絵アニメーションの追加、
シナリオの複数視点化に横の繋がりの強化、3D化などが進化して行っている。
が、シナリオやゲームシステム自体は当時でも大して珍しくもない内容なので、
同時期に展開されていた※『金田一少年の事件簿』のゲーム化ほど、語られることはない。

金田一少年の事件簿 星見島 悲しみの復讐鬼金田一少年の事件簿 VOL.1(ディレクターズカット) [DVD]
※『金田一少年の事件簿』…週刊少年マガジンで連載されている、金田一耕助の孫が主人公という設定の探偵マンガ。1995年放送のドラマ化で本格的にブレイクしたため『名探偵コナン』とほぼ同時期にスタートというイメージがあるが、連載開始は1992年で『名探偵コナン』より2年早くスタートしている。90年代の全盛期に行われたゲーム化では犯人がプレイキャラクターという奇抜な設定の『悲しみの復讐鬼』や、3D化による異常に高い難易度設定など、妙に癖の強い作品が並んでいた。

据え置き機で展開された長編3作は全て制作プロデューサーを
現ベックの岡本吉弘氏が手がけ、制作元も大きな変化がなかったのだが、
第三弾『最高の相棒』の時点で既にPSからPS2へプラットフォームが本格移行した2002年で、
『名探偵コナン』の次回作も次世代での登場になった…と言いたいのだがそれはもう少し先の話。
実のことを言えば『最高の相棒』は累計5.2万本とそれなりのスマッシュヒットを記録し、
まだPS市場そのものは元気があったため、もう少しPS1ての展開が続くことになるのだが…
セールスで見てみると数字を明らかにここで落ちて(PS2『大英帝国の遺産』は1.8万本)おり、
シリーズ的にはここが商業の分岐点だったと推測される。

まあとにかく、末期市場での展開となったため、
ブランド的に傷むのを避ける傾向があったのか外伝的な作品が多いのが
『最高の相棒』以降の名探偵コナンで、例えば当時はそれなりに推されていた
※SIMPLEキャラクター2000シリーズにてボードゲームが発売されてみたり、
ストーリー性を極力排除した謎解きゲーム集『トリック トリック』を
「Vol.1」というナンバーが降られシリーズ展開を視野に販売されたのだが
セールス的には不振な上に値崩れをしたためVol.2は発売されずじまい
(ただし、DSで展開された探偵力トレーナー路線の礎は作った)という状況となっており、
商業的にも作品的にも間違いなくチャレンジしていた時期だが、はっきり言えば失敗している。

SIMPLEキャラクター2000シリーズVol.17 戦闘メカザブングル THE レースインアクションSIMPLEキャラクター2000シリーズ Vol.12 機動武闘伝Gガンダム THE バトル
※SIMPLEキャラクター2000シリーズ…バンダイと共同開発で展開されたSIMPLEシリーズのひとつ。『機動武闘伝Gガンダム』や『新機動戦記ガンダムW』の格闘ゲームを発売していた、アレ。と言えばピンとくる方は多いはず。キャラクターありきにして低価格という恐怖のコンボで、当然の如く駄作が量産されたのはそこそこ有名な話。末期に発売された『ザブングル』がファミ通のクロスレビューにて尋常ならざる低得点を獲得したのも思い出深い。

2000年代中盤は、コナンのゲームが売れなくなった…
というより子供層をカバーする市場が縮小したことを受けて、
GB・PSともに5作を展開したものの次代機であるGBAは2作、PS2は1作と、
発売数が極端に減少し、一時的に「名探偵コナン」のゲームはメインストリームを外れる。
(なんせPS2期は『ルパン』の方が発売数が多かったくらいなのだから)
ついでにGBA向けの2作目『暁のモニュメント』は2005年発売のゲームなため、
恐らく6年前の本格推理モノに当たるはこの作品のことを指しているかと思われるが、
実のことを言えば販売元はマーベラスエンターテイメントではあるものの、
Wiiにて(一応)長編の『名探偵コナン 追憶の幻想』が2007年に発売されているため、
厳密に言えば『蒼き宝石の輪舞曲』は4年ぶりの本格推理アドベンチャーだったりする。
まあ、そんな細かいことは誰も気にしていないか。

名探偵コナン 大英帝国の遺産 BANDAI THE BEST名探偵コナン 暁のモニュメント
実のことを言えばこのあたりの『名探偵コナン』のゲームはプレイしていないので、書けることがあまりない。『大英帝国の遺産』はコナン初のフルポリゴンだったおかげでロードがちょくちょく入ったためとても微妙な評価を獲得したり、GBAで展開された2作品は当時の携帯機市場でムーブメントを巻き起こしていた『逆転裁判』っぽさに溢れていた…とは風のうわさで聞いた。

DS向けではライトユーザーが回帰したこともあって、
久しぶりに『名探偵コナン』が脚光を浴びることになった…のだが、
「名探偵コナン」参戦当時は脳トレブームが全盛だったことの影響を受け、
純粋な推理アドベンチャーではなく、クイズ形式で推理パズルに挑戦する
『探偵力トレーナー』という実質『トリック トリック』路線の作品(開発元は別)
として発売されており、これが意外とスマッシュヒットを記録(累計5.6万本)している。
これで「コナン」路線も復活し、流石のBANDAIで間髪を入れずに推理パズル路線第二弾の
『消えた博士とまちがいさがしの塔』を投入したが、こちらは数字は今ひとつ(2.8万本)だった。

この知名度はあるものの、それを実売に繋げるのは厳しい…という状況を受けたのか、
2009年当時に週刊少年サンデーと週刊少年マガジンの2紙が創刊50周年だったことを受け、
上で触れている『金田一少年の事件簿』と『名探偵コナン』がコラボレーションし、
どちらも少年誌を代表する少年探偵というインパクトのある企画で話題を集める。
脚本は後に『ダンガンロンパ』でその名を知られる様になる
小高和剛氏が手がけいたこともあって、高い評価を獲得し口コミでロングセラーとなり、
サンデー×マガジン路線では最大級のヒット(初週2.4万本 累計7.4万本)を記録している。
という下りは何度も書いたので、もうウンザリという方が多いだろう。
長らく発売されなかったストーリー性重視の長編でのヒットということで、
この作品が恐らく『蒼き宝石の輪舞曲』投入の切っ掛けになった
(実際開発元は『コナン&金田一』のSPIKE)と考えて、ほぼ間違いないかと思われる。

名探偵コナン&金田一少年の事件簿 めぐりあう2人の名探偵
『名探偵コナン&金田一少年の事件簿 めぐりあう2人の名探偵』…開発元はSPIKE。「50年に一度のコラボレーション」という煽り文句が踊ったのも記憶に新しいはず。(この2作品の連載期間は20年にも満たないという突っ込みは野暮ったいのでしない。)シナリオの構成的な仕掛けや、クローズド・サークルという舞台設定は『ダンガンロンパ』のそれとかなり似ている。ほか小高節としか表現不可能な男キャラクターの造型(こちらは『ダンガンロンパ』というより『神宮寺三郎』期に近い。)、そしてキャラクターゲームライクなとてつもなく易しい難易度が特徴。恐らく歴代「コナン」関係のゲームで最も個性のあった作品。いや、別に小高信者ではないです。(むしろオリックスの日高信者です)

といった感じでズラッと見返してみると、
ストーリー性を推した作品は『名探偵コナン&金田一少年の事件簿』に至るまでは
ゲームとして原作つきの良作以上のレベルで話題になったケースは殆ど見かけず、
難しめな作品が多かった『金田一少年の事件簿』と比べればかなり簡単にクリア可能で、
広いユーザーに訴求したゲーム性が採用された反面、全体的に個性が薄かった印象は否めない。
逆に言えばこの無個性さや懐の広さこそがシリーズ長寿の秘訣かと思われ、
(00年代中盤のADV市場の衰退を乗り切った原作付き推理ADVは『名探偵コナン』くらいしかなく、
 対抗馬である『金田一少年の事件簿』でさえもゲームでは9年近い休眠期間がある。)
万人に受けを考えたゲームを語る上では、結構重要なシリーズに見えないわけでもない。

【コメント】
エンドロールを確認してると何故か『三人の名推理』に
infinityの中澤工氏がスクリプトで参加しているのを発見したのが今回の収穫。
…更新しなさすぎ?まあ実際そうなので否定できない。やる気はあるぞ、うん。

CONAN(コナン)未来少年コナン

そして発売されたのが『CONAN』と『未来少年コナン』である。
前者は劇場作品をベースに、青年期のコナンを主人公としたバイオレンスアクションとなり、
E3で発表された際はそのあまりにマッチョな世界観にファンが度肝を抜いたのはあまりにも有名。
ただし会話も字幕で処理され、お馴染みの玄田哲章が起用しなかったため
「シュワちゃんっぽくない」など、ファンから賛否両論を呼ぶこととなった。
また実質スピンオフ(であるはず)の『未来少年コナン』はゲームになったキャリアは
なぜか『名探偵コナン』より長く、PCEや3DO、最近ではPS2やパチスロでも展開されている。
ただし版権がジブリにないため、かなりのやりたい放題をされており、
宮崎駿がゲーム嫌いなのも納得の内容のため、プレイは推奨不能。
(いや、彼の場合はただ単に世俗的な“何か”を仮想敵と見做しているだけだろうが。)

………いやなんだ、思いついたのでつい。