DS『GHOST TRICK』 | アドベンチャーゲーム研究処

アドベンチャーゲーム研究処

アドベンチャーゲーム(AVG・ADV)の旧作から新作まで、レビュー+紹介を主として取り上げるブログ。(更新は不定期)
取り上げる範囲は家庭用のみです。

【概要】
 『逆転裁判』シリーズのシナリオとディレクターを手がけた巧舟氏の新作として発売されたミステリーゲーム。グラフィックスが特徴的な作品で、かつてスーパーファミコンで発売された『アウターワールド』を意識した2Dポリゴンを起用した舞台型の画面作り、ゲーム性もそれを活かす方向となっている。新規作としてとひと味違ったアプローチとなったが、巧舟氏が3年振りにディレクションするとあって『逆転裁判』と繋がりが多いことも確かだったため、発売前から比較されることの何かと多いタイトルでもある。セールス的には不振だったらしく、販売元であるCPACOMの決算において「苦戦」扱いをうけている。プレイボリュームは10~13時間程度。

ゴースト トリック

【システム】
 劇中で必ず訪れる「死」を、幽霊である主人公の「死んだ時間から4分だけ戻れる」能力を駆使し、一定の範囲内に置いてある無機物のオブジェクトを「トリツキ」「アヤツル」ことで連鎖させ「死」を回避させるパズルもの。フィールドに用意されたギミックを調査し、その「組み合わせ」を推理するプロセスは脱出ゲームと似ている。そのため電話でのフィールド移動はあるものの、基本的にはブロック分けされた「閉ざされた空間」で思考し「問題を突破」することで話が進展する形となっている。勿論、まんま脱出ゲームかというとそうではなく、パズルにリアルタイム制を導入していたり、2Dポリゴンで作られたオブジェクトのギミックを使い「ゲームの世界を触れる」ことで、インタラクティブで映像的な面白さを演出していたり、ゲーム的な部分で差別化が行われている。
 インターフェース周りは、『逆転裁判』系とは異なりバックログ対応。メッセージスピードも軽快。タッチの方がやりやすいが、ボタンでもプレイできる設計となっている。
 
【ゲームテンポ】
 ゲームのテンポは、ストーリーの展開こそ中盤以降スピーディに行われ、ゲーム性となるパズルもバランス的に崩れているシーンもあるがヒントがふんだんにあるので全体的に易しめでサクサクと進行する。のだが、どちらも少し問題を抱えており、例えばストーリー面では伏線や世界観の紹介、ゲームのルール説明を行っているため序盤がやや退屈な部分があり、ゲーム性ではリアルタイムで進むパズルを時を止めてタイミング良く「アヤツル」ことが要求されるのだが、それが失敗した場合は冒頭に戻され「そのタイミング」になるまで待たなければならなくなるため、どちらも「どうにかなりそうな部分」でテンポを殺している感がある。特に後者は全体に関わってくる問題なので、次回作があれば是非とも早送り機能をつけてほしいところだ。

【ストーリー】
 話としてはオムニバス形式を採用した『逆転裁判』とは異なり、ストーリーが完結まで地続きとなっている長編もの。上でも書いているが序盤に伏線や、世界観、フィールドの顔見せに時間が割かれており、CHAPTER4あたりにいたるまでは退屈。それ以降は「巻を措く能わず」というのはこのことで、多少の無茶はノリでどうにかする出たとこ勝負な巧シナリオに止め時を見失うのは間違いなし。ただ単純にミステリーとして観ると、長編ものということでトリックは終盤までバレないように配置されているものの、勘が良ければ中盤ぐらいにネタが割れてしまうのは残念。まあ、どちらかと言えばドラマ性重視の作品なので、そこだけで評価するのはアンフェアではあるが。

【ここが○!】
・2Dポリゴンの画作りと、それに裏打ちされたキャラクター。
・誰でも楽しめる難易度。そして、間口の広いストーリー。

【ここが×…】
・テンポの不備が何点か。
・トリック的にもう一押し欲しい。

【総括】
 独創的で愛らしいグラフィック、魅力的なキャラクター、パズルの達成感。どれを取っても完成度は高く“並み”のソフトではない。ただし、ミステリーゲームとして見ればゲーム性となるべきパズルが単なる障壁と化してしまったため、「パズルが解けた」快感はあっても「ストーリーの謎」が解けた快感は他人事になってしまい、ストーリーの考える部分とゲームプレイの分離を招いてしまっている。勿論それだけが売りのソフトでもないのだが、ミステリーがテーマの「ゲーム」として評価すればやはり問題点として挙げなければならないだろう。
 立ち位置は7点(1年に1作あるかないか)から8点(3年に1作あるかないか)の間の作品で、実はプレイし終えた時は8点の方を取っていたのだが、プレイして数ヶ月後の今このソフトに「再プレイしたい」と想わせる力があるか。と考えると「そこは弱い」(だからこそ埋もれたのだろうし)と判断。厳しい態度かも知れないが、下にブレさせてもらった。

【得点】
7/10