名探偵コナン&金田一少年の事件簿 めぐりあう2人の探偵 | アドベンチャーゲーム研究処

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アドベンチャーゲーム(AVG・ADV)の旧作から新作まで、レビュー+紹介を主として取り上げるブログ。(更新は不定期)
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【概要】
 小学館と講談社の看板雑誌である「週刊マガジン」「週刊サンデー」の創刊50周年を記念して製作された、両社の人気ミステリーマンガである『名探偵コナン』と『金田一少年の事件簿』の世界をクロスオーバーさせた作品。コラボレーションでは初のゲーム展開であり、高い知名度のミステリーマンガ同士だったこともあって、開発はキャラクターゲーム製作にも定評のあるSpike、CMも原作アニメ放送時に投入され、更には脚本に『神宮寺三郎』シリーズにも関わっていることで有名な、D.R.E.S.S,所属の小高和剛と坂本豊和が担当しており、豪華企画に相応しい布陣となっていた。そのこともあってセールスは累計約7.3万本と好調だった。総プレイボリュームは12~14時間程度。

名探偵コナン&金田一少年の事件簿 めぐりあう2人の名探偵

【システム】

 システムとしては「見る」のみがクリックによる捜査を行う、FC時代からある由緒正しきコマンド選択型を踏襲しており、原作にあわせたコマンドがいくつかあるものの、基本的には「見る」「聞く」「移動」の三つのコマンドを駆使してストーリーを追う形となっている。コマンドによる捜査が一定量進行すれば、原作の決め台詞とともにこの作品のゲーム性である「推理パート」へ移行。プレイヤーが事件の人物相関図を推理して作成することになるのだが、これが推理ミスをしても何のペナルティもなければ分岐することもないので、単なる事実確認という意味以上を見出すことは出来ず、ゲームとしての難易度にはなれていない。また、なんだかんだキャラクターゲームなので、原作の特徴に沿ったパズルゲームやアクションゲームなども挟まれたりもする。実はここが一番難しいのは、何かの皮肉だろうか。

【テンポ】

 テンポは典型的に「良すぎて悪い」タイプ。容疑者全員に1回会話するか、怪しい物を1回クリックして回っていけばストーリーは進行してしまい、コマンド選択型にあるべき「捜査している気分にさせる」演出能力は欠けている。また推理パートも上述の通りほぼ難易度として機能していない。そのため、ゲームプレイはほぼ読んでいるだけになってしまっており、アドベンチャーとしては作業的な印象を受けざるを得ない。キャラクターゲームとしてなら、原作の枠を超えた登場人物の掛け合いにテンポを見出すことも出来ないでもないのだが…思い入れがなければ「無駄な会話」とも取れてしまう諸刃の剣でもある。ただまあ、普通の一般プレイヤーにはこれは少し退屈すぎるかもしれない。

【ストーリー】

 ストーリーとしては連作オムニバス形式。金田一とコナンのシナリオを交互にプレイして、最終的にひとつにまとまる展開になっているのだが、1話1話で別けて見るとミステリーとしてはかなり安直に出来ており、勘の良いプレイヤーならば恐らく初手の初手。シチュエーションを把握した時点で犯人が解ってしまう。また、キャラクターものとして見ても一部のキャラクターの性格が原作とギャップがあり、金田一側のキャラクターは活躍の場が少ない。そのためキャラクターや犯人当てを目的としてプレイすると、そのゲーム性の薄さも含めて失望は避けられないだろう。ただ、この作品はどちらかと言えば心情描写を中心としたドラマ性を押しているので、「金田一とコナンの活躍が見れれば推理できなくても構わないよ」という姿勢で見ることが出来るのなら楽しい。

【ここが○!】
・ボリュームがある。
・夢のコラボレーションはやはり凄い。
【ここが×…】
・ゲームが作業的。
・原作とのギャップ。

【総括】

 ありがちな「キャラクターのコラボレーションだけ」という企画では収まらない、良質なアドベンチャーゲーム。ただし、根元はキャラクターものなのでミステリーとしてもゲームとしても作りはかなり貧弱。「ドラマを追う」という点以外に楽しみがないのが寂しい。まあADV初心者には、有名原作ということもあって入り込みやすいと思われ、ボリュームもあるので「入り口」としてならばお奨めはできる。いやテキストの無駄の多さと、それに伴う中だるみも見え隠れするんだけどね。企画的に続編が望めないだけに、良質な部分を伸ばすためにもっと練りこんで出して欲しかったのが本音。個人的には金田一側の終盤で小高和剛節が見れたのはちょっと嬉しかった様な、またあのパターンかよと思ったような。

【得点】
6/10