裁判パート+探偵パート÷2=? DS『逆転検事』レビュー | アドベンチャーゲーム研究処

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アドベンチャーゲーム(AVG・ADV)の旧作から新作まで、レビュー+紹介を主として取り上げるブログ。(更新は不定期)
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【クリア直後レビュー】



クリア後に思ったこと。

デキに関してはスピンオフと言うこともあって、
やはり本編と比べるとクオリティーは見劣るのが正直な感想。
とはいえ、普通のDS向けADVと比べるとデキはひとつ上な一作ではある。
まあ、スピンオフと言うこともあってファン向けの作品という向きは変えられないが…。

個人的に気になったのはゲームプレイの変化。
今回の「検事」は捜査が中心ということで、なんというか全体的に地道。
システムも証言に突っ込みを入れるプロセスは本家『逆転裁判』と同じなのだが、
『逆転裁判』だと、相手の反論から更なる事態の進展があるのに対し、
この『検事』の証言は基本的にシナリオ進行の障害にしかなれていないという印象。
あと、やっぱり『逆転裁判』のキャラクター像が
本編とこの『逆転検事』では少しギャップがあるのも気になったかな。
まあその辺りを含めて、今回は触れていきたいと思う。

本家との差。

本作から明確に伝わるのは、まあ外伝だから当然だが「本家との差別化」という意思。

例えばグラフィック面なんかはその傾向が顕著で、
移動が選択肢型からフィールド移動型に変更されたことで
今までは正面からの立ち絵表現だったキャラクター表記が
頭から足までの全体像で(移動パート時に)表現されたり、
会話で接近した場合は立ち絵が正面から斜めから見た視点に変更されており
「逆転検事オリジナル」な画面配置をかなり意識した作りとなっている。

全体像を表現した移動パートは、いわゆるドット絵で表現された
キャラクターが、劇場型の配置で体全体を使ってアニメーションしているのだが、
どうもDSというか携帯機の画面では、姿が小さすぎてインパクトがない。
前にも言ったが、このうねうね動くドット絵はそれはそれで味があるが逆転としては寂しい。

接近時の立ち絵は、正面から斜めに変更され
本編では動きが横にダイレクトで表現されていた(『逆転裁判』は腕や頭を横に振り回す事が多い)が
本作はキャラクターの方向を斜めにすることで横への動きの幅を狭くし、
その代わりにキャラクターを同じ画面に2人表示出来るようにしている。
この試みは、表現面積の減少で動きのダイレクトさこそ若干失われてしまった物の
登場人物が見えてナンボのキャラクターゲームとしてはこの選択は正解と言えるだろう。



またゲームプレイの変化も大きな変化があり
今までの逆転シリーズでは、
裁判パートと探偵パートを分離したゲームプレイとなっていたのだが
この『検事』では裁判所における裁判パートを、探偵パートと融合させ、
現場で裁判パートと同じシステムの証言パートを登場させている。

ただ、裁判パートと探偵パートを一つにまとめてしまったことで、
フラグ立ての行脚と化していた探偵パートのテンポの悪さは解消できている物の、
裁判パートの「裁判所」という逃げることの出来ない閉鎖空間で、
事件に対して徹底討論を行い、反論につぐ反論によって一つの結論(=真実)に導くという
まさしく「逆転裁判」だった本編の展開と比べると、
現場で証拠を集めながらの討論と言うこともあってか、
展開が二転三転する(つまり言えば形成が「逆転」する)様な徹底的な討論は行われず、
魅力が細切れに成ってしまった、と言う印象を覚えずには居られない。

容疑者の言い逃れも、弁護士という援護役が居ないためか
“粘り”があまり無く、意外とあっさり容疑を認めてしまい、
このシリーズ最大の売りである「言い負かした」という、
カタルシスがかなり少なくなってしまっていて、そこは素直に残念。
まあ、逆に地道に捜査するという新しいテイストは生まれてはいるのも確かだが…。

あと、個人的に気になったのはバランス配分。
フィールド移動の捜査パートは、捜査できる範囲を狭めることで
フラグ管理を簡素化することに成功し、テンポ良くプレイできるようになっているのは良いのだが、
時々発生する現場のムジュンを指摘する、「推理」コマンドというものが存在しており、
これがかなり難しく、ヒントも証言における「突っ込み」の様な物もないので
一回迷うと、総当たりで証拠品を選択することになることもある。
突きつける証拠と証言の関連性がよく見えてこない物も中盤多く、
何というかADVとしてのバランスが大味に設定されている気がする。

序盤と後半ではかなりデキの差が。


前半と後半で明らかなるゲームデザインの変化が発生している作品もこの世には存在する。

このゲーム、明らかに4話目『過ぎ去りし逆転』から面白くなる。
1~3話ではシリーズではお馴染み、容疑者の反論が凄く“あっさり”していて、
逆転裁判でいう弁護士役に当たる、捜査官の反論も2~3回すれば納得してしまうため、
少し、いやかなり物足りなかった証言パートが、4話で突如パワーアップ。
反論数や爽快感こそ、それほど変化はないがバランスが良くなり出題数も増えて楽しい。
また、それまでは何とも言えない借り物臭がしていた
『逆転裁判』のキャラクターも4話ごろから地に足がついた物になり、
それまでギャップしか感じなかった「検事」オリジナルのキャラクターからも
事件の舞台が法廷に成っているためか、「逆転」らしさがようやく出てきている。

これは言ってしまえば、ここに来てようやくシナリオライターも
キャラクターの扱いに“なれた”と捉えることができると思うのだが
時既に遅く、物語としては後半に入るため、魅力が後ろの方に集まってしまっており、
なんというか実の部分が少ない果物という感じで、凄くもったいない。
まあ逆に言えば、練り込める余地はまだまだ合ったと言える訳で、
次回作があるとするならば、この4~5話の感じの話の割合を多くして貰いたいものだ。

本作は、流れとしてはこの4話でようやくオリジナルキャラの“自己紹介”が終えた所だったので
4話と5話の間に、もう1話本筋とはあまり関係ない中規模のストーリーが収録されていれば
全体的な見栄えや、話の締まり、キャラへの思い入れもかなり良くなったように思う。
2話が不要だと思うのでカットし、4話を3話に変更してれば実が多くなった気がするが…。
練り込めば旨味がもっと増えただけにやはり全体的に、勿体ない印象を覚える。

まとめ。

「逆転」はない、「検事」である必然性もない。
だがそれでも、凡百なそこいらのADVと比べるとあたま1つは出ている作品ではあるし
本編と比べるなければ、そこそこ楽しめるデキではあるとも思う。
ただし、明らかに無理矢理『逆転裁判』キャラクターが登場していたり、
決め台詞を無意味に入れてみたり、語尾に違和感があったりと、
どうもキャラクターが“ぎこちない”という印象お覚えるのが少し辛い。
ファンの為のゲームであるということを考えると、
ここはかなり気になる部分だけど、4話からが面白かったから私としてはチャラかな。

まあ今となっては懐かしい成歩堂編の登場キャラクターたちに、
(その人物像には若干の違和感を感じるものの)再会できるという事に喜びを感じるのなら、
そしてそのポテンシャルを『過ぎ去りし逆転』まで保てるなら、間違いなく良作と言えるだろう。
ただし、そこに『逆転裁判』という“ゲーム”を求めると、肩すかしを食らう可能性が高い。


成歩堂編と王泥嬉編のバトン引き渡しが明らかに失敗したわけだけど、この先どうなっちゃうんでしょう。

【クリア直後の点数】

6/10

【コメント】
世間じゃメタルギアがXBOX360に出ることで大騒ぎだそうな。
うーん………やっぱり『ポリスノーツ2』じゃなかったか。