「終わりなき顧客獲得競争」からの脱却。 | アドマン3.0=人事になりました。

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高収益・・・コレが最近の僕のキーワードの一つ。高生産性ではなく、収益性フォーカス。僕が属する広告代理事業というものはその他の通り代理的な仕事が多いため、どうしてもマージンという発想がついてまわる。

つまりあるYahoo!の広告枠を100万円販売すれば、その代理店手数料として15%、すなわち15%が粗利益として会社に入ってくる、というキャッシュフローだ。そのため、広告代理事業は低収益率型ビジネスモデルだと言える。売り上げと利益の差が大きい。

これは何もインターネット広告と言うドメインだけでなく、業界全般的に言えること。先日のADKの決算資料を見ればわかるが、ひどいもんだ。売上高があれだけ あって、営業利益が27億円ですからね。

これはどうにかしないと。本当に。給料とか上がらないですよ。本当、どうにかしないと。僕は給料たくさんタイプなので(少なくても後三年以内に現在の2~3倍は稼がないと死んでしまう)、ここら辺に関心が集中している。僕は給料が高くて、社員がハッピーな会社がいい会社だと思っているので。

その中で、最近読み込んでいる本がこちら。
宣伝的なタイトルは邦訳ならではのものなので置いておいて、内容は至極真っ当。若干スピリチュアルだが、思想は直線的。すなわち高収益な企業の作り方であり、そのビジネスに関わる人がハッピーになれる仕組みづくりについて語られている本だ。

最初の方の文章など、かなり僕と同じ業界の人は耳が痛いはず。以下引用。

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マーケットシェアを獲得し、競合から顧客を奪い取ることを重点に置くこれまでのマーケティングモデルでは、常に多くの顧客を獲得することばかりに注力してきた。そして、この終わりなき顧客獲得競争膨大な時間、人員、資金を必要とする。しかし、大企業でさえ、これらのリソースを十分持っていないのが現状だ。
たとえば、インターネット関連企業は、成功を手に入れようと多額の資金を投資したが、その多くが失敗に終わった。彼らは非現実的な売上目標を掲げ、その達成のために多くの顧客を必要としたが、必要な顧客数を獲得する前に資金がそこをついてしまったのだ。
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上記のような思想を敵対的マーケティング主義と著者は揶揄していますが、正直この広告業界というところでは終わりなき顧客獲得競争が未だに引き続いてます。たとえば僕が他代理店の顧客を略奪したりすれば、社内ではヒーローです。特にその略奪したクライアントがビッグネームだったり、電通さんや博報堂さんだったりすると、スーパーヒーローです。批判しようとしてなんですが、僕も何度も略奪はしています(されてもいます)。ただ、これはやっぱり疲れるし、代理店同士の仲がギクシャクして嫌ね。僕は他の代理店の優秀な方からも色々吸収したいので、できれば仲良くやりたい。

で、本書の内容に戻ると、そうした終わりなき顧客獲得競争から抜け出るために、戦略的シンクロニシティ完璧な顧客にフォーカスせよ、と主張する。そうすることで、組織は高収益になり、ステークホルダー全員がハッピーになると。

シンクロニシティとは、偶然一致するような出来事、特に霊的な出来事が関係性を持って起こること。しかしそれが、因果関係によって説明できないようなこととウェブスター辞典が定義しているもので、若干スピリチュアルな概念。

このシンクロニシティを意図的に引き起こすための方法論を戦略的シンクロニシティと呼び、その手順を詳しく本書では述べられている。結構実践的な内容なので、実行してみたくなるものばかりです。

もう一つの完璧な顧客というコンセプト。会社のミッションにぴったり一致するニーズを持つ顧客、のことで、著者達はこれらの顧客とだけ関係を構築し、ビジネスを行うことを推奨している。高田 靖久氏的に言うと顧客差別の発想だ。
お客様は「えこひいき」しなさい !/高田 靖久
¥1,470
Amazon.co.jp
(この本は名著。必読です)

と、ここまで読んでも今の売り上げ成長がマスト!という号令が掛かる業界ではきれいごとにしか写らないと思うし、だから完璧な顧客にだけフォーカスしたビジネスに転換することは不可能だろう。なぜなら収益性は上がっても、圧倒的に売上は下がるからだ。

だから総合代理店もだ売り上げの大部分を占めるマスの分量を減らしてまでデジタルにシフトできない。ネット専業代理店も、売上を伸ばすために値引き競争というレッドオーシャンで戦い続けている。この海に流れているのは、酸素の通っていない、ドロドロ血のような赤、だ。だから働いている方は息苦しい、給料も上がらない、精神的に疲れる・・・などなど。

個人的にはこの業界には恐らく死ぬまで関わるだろうと思っているので、こうした状況に早くから取り組みたい、改善したいと考えている。優秀な人間が多い業界なので、やり方次第ではもっと素晴らしいイノベーションが生まれると思っている。旧来的な売上至上主義は捨てて、こうした考えに同意してくださる方には本書、オススメです。




アドマン