ウェブマーケティングのコアな分野として、SEO(Search Engine Optimization)というものがある。古くからある概念で、深く考えられたフィールドなのでこの言葉の解釈は多々あるだろうが、SEO=サーチエンジンの検索結果(サーチリザルト)のページの表示順の上位に自らのWebサイトが表示されるように工夫すること、を指すのであれば、このSEOに未来はあるのだろうか。
ここのところ、SEO業者にとってお客さんの耳には入れたくないニュースが頻発している(しかしちゃんと伝えよう)。特に大きいのは2つ。先日から騒がれている「Yahoo!検索のタイトル表示のバグ 」問題(バグではないと思うんだが)とGoogleの「SearchWiki 」だ。
※この二つのニュースを耳にしていない広告主の方は、今一度現在のSEO業者の見直しを図ったほうがいい。少なくても紳士ではない。
1つ目のYahoo!のタイトル表示の件を要約すると、Yahoo!検索結果ページに現れるタイトルがTitleタグで指定された記述ではない、ということ。
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■参考:Yahoo!検索のタイトル表示のバグ
http://ameblo.jp/bizinspire/entry-10163748486.html
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Titleタグはその名の通り、ドキュメントのタイトルを定義するタグで、検索結果に出てくるタイトルに反映されるものである。さらにブラウザのウィンドウのタイトルバーに表示され、ステータスバーにも表示され、さらに「お気に入り」や「ブックマーク」に登録する際には、このタイトルがデフォルトの名前として使われる。
それくらいTitleタグに対する施策はSEOの基本中の基本施策であり、それだけインパクトもある重要な施策なのである。それが今きちんと表示されなくなっている。つまりは今、揺らいでいるのだ(この現象は今もなお続いている)。
もう一つのGoogleの「SearchWiki 」はもっとクリティカルだ。こちらは簡単に言えば、ユーザーが自分の検索結果をよりコントロールできるようにするための機能、である。詳細は各種掲載記事に譲るが、「Googleアカウントでログインしたユーザーのみですから」というような逃げ口上を使ってはいけない。少なくてもこうした流れは加速していくのだから。
正直この2つのニュースは、SEO業者にとって大打撃だろう。またSEOを販売する代理店にとっても打撃は大きいはずだ。代理店にとって、SEOという商品はその他の広告商品と比較として粗利率が高い。普通のメディアバイイングが15~30%程度の代理店マージンで販売している一方で、SEOはそれ以上のマージンを確保できることが多い。もちろん自前で行えば100%。現に好調なウェブ系広告代理店の、その好調の要因の大きなひとつがSEOだったりする。
したがって利益率の低いこの業界においてSEOは「売るべき商品」なのであるが、上記のような現状を評価してみて、それは正しいことなのか。
冷静に考えてみる。広告主の検索エンジン周りのマーケティング予算、すなわちSEM=SEO+リスティングの予算は、出所が一緒=カニバる可能性が非常に高い。たとえばSEM予算が1000万円であれば、300万円をSEOに、700万円をリスティングに、とそういう配分だ。
これをOvertureやAdwordsの立場から考えてみれば、彼らにお金の落ちないSEOは邪魔な存在だ。検索エンジンの精度上昇と、企業のSEO対策は方向性的にも合致しないため、検索エンジン側がSEO業者を擁護する必要はまったくない。広告主に対しては「SEOにお金使ってもぜんぜんコントロールできないから、早くOvertureで出稿しなよ」ってなもんだと思う。
もちろんSEOの存在可能性を根底から否定するのではなく、検索エンジンに対して親和性の高い構成でサイトにてこ入れを行う内的施策はこれからも取り組むべきだと思う。しかし、外的施策やリンクの購入などに予算を割く必要はなくなってくるだろう(そもそもこれらの施策を僕は認めないが)。このような状況下の中、SEM予算の配分を広告主側は今一度改めて見直さなければならない。
つまりはSEO対策は必要最低限にとどめ、その分リスティング広告に振り分けるのか、サイトのコンテンツなどに力を入れなおすのか、はたまたまったく違う施策にお金を使うのか。代理店側も今一度この点を再考し、提案していくべきだ。
検索エンジンをベースにしたマーケティング活動をSEMというのであれば、この分野は今後も伸びるだろう。一方で検索結果で1位を取る、という意味だけのSEOであるならば、市場規模的にも需要的にも縮小することは否めない。過度な外部リンクの購入などは、ROI的に見てもペイしなくなるだろう。
これからもサーチエンジンはウェブマーケティングというドメインにおいて重要であり続ける(これはダイレクトレスポンスとか、ブランディングとか関係なく)。その中でこのドメインで戦おうとする企業は少なくても、SEO専業とか、リスティング専業とかではありえない。少なくてもSEO、リスティング、SMO、ツール、コンテンツマネジメント、ウェブサイト構築・管理・・・そこら辺までを包括的にサービス提供できないと、マーケティング的に正しい提案はできなくなってくるのではないか、と思う今日この頃である。