1978年のこと、
アンドルー・プロバート(Andrew Probert)は、
ラルフ・マクォーリー(Ralph McQuarrie)から電話をもらう。
※「アンドルー」「マクォーリー」というカナ表記については、
こちらで。
『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』 (2015)
のヒットと成功はめでたい一方、
監督名がクリストファー・「マッカリー」(Christopher McQuarrie)と、
20世紀にまで記述のセンスが逆行したのは、
個人的にはカナシイよ。
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「ペングイン」(penguin)を「ペンギン」、
リチャード・「マークワンド」(Richard Marquand)を「マーカンド」と表記する、
この国の伝統ってこと?
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だけど、ひたすら前例を踏襲してたら、
いまだにドゥルー・ストゥルーザン(Drew Struzan)は、
「ドリュー」だったはずだよ。
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マクォーリー曰く、
「一つ頼みがあるんだが、
実はちょっと頓挫してる企画があってね。
スタートレックの新作映画に関わってたんだが、
これ以上の参加がムリになったんだ」
ラルフ・マクォーリーは、1976~77年に企画が進行していた、
『スタートレック 巨人たちの惑星』(Star Trek: Planet of the Titans)の
コンセプト・アーティストだった。
時期的には、『スター・ウォーズ』(1977)のデザイン直後で、
監督候補はフィリップ・カウフマン。
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カウフマンは『レイダース』(1981)で、
インディアナ・ジョーンズのキャラ設定担当だったので、
マクォーリーの抜擢は、ルーカスつながりだったと思われる。
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「ジョージ(ルーカス)が、スター・ウォーズの次回作(『帝国の逆襲』1980)のために、
拠点をサンフランシスコに移すから、私としては、ついて行かざるを得ない」
ILMの実権をジョン・ダイクストラから奪い返したルーカスは、
ロスからサンフランシスコに拠点を移し、
ついてくるかどうかの踏み絵をクルーに課すことで、
信用できる仲間かどうかの選別を図った。
マクォーリーは、
ルーカスが最初に声がけしたアーティストだったので、
当然、サンフランシスコ移動組となり、
↓引っ越し案内のポスカードの絵柄まで描いた。
ダイクストラ一派の残留組は、
バンナイズのILM旧施設をそのまま使い続け、
社名をアポジーに変更する。
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「だもんで、代わりに君を推薦しといたけど、
かまわないよね?」
プロバートにしてみれば、
かまわないも何も、
願ったり叶ったり。
当初に特撮を担当するはずだった、
ロバート・エイブル&アソシエイツ社の、
↓リチャード・テイラーがデザインした社名ロゴ。
社名は「ロバート・エイブルと(ゆかいな)仲間たち」の意味。
ロバート・エイブルと面接し、
↓右より、ロバート・エイブル、ロバート・ワイズ監督、リチャード・テイラー、ジーン・ロッデンベリー、フィル・ローリンズ(Phil Rawlins)って誰?
アートディレクターの、
リチャード・テイラー(Richard Winn Taylor II)を紹介された。
↑左からアンドルー・プロバート、リチャード・テイラー、モデルメイカーのジム・ダウ。
リチャード・テイラー(Richard Taylor)といっても、
『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズで名を馳せた、
WETAの同名(ミドルネーム以外は綴りも同じ)のVFXアーティスト(Sir Richard Leslie Taylor)ではない。
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プロバートは過去の作品集をテイラーに見せて、
あっさり採用された。
これがスタートレック作品への
アンドルー・プロバートの初参加となった。
出勤初日にテイラーが言うには、
「デザインに統一感を持たせるためにも、
●スペースドック
●中継ステーション(space office complex)
●バルカン(恒星間航行)シャトル
●そして改装型エンタープライズ
——等々の、地球(惑星連邦)側のメカは、全部手がけてもらおう」
とのこと。
さて、1978~79年の話を、2015年の8月に取り上げるだけでは、
単なる懐古記事になりかねないので、
今だからこその話題にも触れておくと、
私が佐野研二郎をクロと認定したのは、
●ベルギーの美術館のロゴ(左)からの訴えよりは、
●東日本大震災復興マーク(中)の方が、色も形も近いと感じ、
その頃は元ネタ探しをピンタレストでやってるとは気がつかず、
ベルギーの方は、パクリ王佐野本人の主張通り、見てないんじゃないか(ネットで検索しても見つからないんでは)と思ってた。
では、どこで完全にクロ認定したかというと、
auのリスモのロゴ(左)で、
それはiTunes(右)との配色の類似性からでなく、
デザインにまるで一貫性がないからだった。
つまり、一目見て、「これが佐野研二郎のデザインだ」
と言う特徴が何もないってことで、
仕事が来てるのは、発注側が、
過去のデザインを見てではなく、
単に売れっ子だからという、過去の業績だけで依頼してるわけで、
根本的にデザインがわかってない人間が発注してる。
アンドルー・プロバートが惑星連邦側のデザインに限定して担当したのは、
指示を与えたリチャード・テイラーが、デザイナーとはなんぞやというのを、
しっかりわきまえていたからである。
オリンピックのロゴを協会が取り消さないのは、
はじめからこいつに仕事を回す利権構造が出来上がっていたからだから、
「夢は叶う」とか、
ふざけたことは言って欲しくない。
もっとも、今後誰もこいつに仕事なんか頼まないけどな。
パクリに極度に敏感なオレの方が、良い仕事するよ!
というわけで、次回はようやく、
アンドルー・プロバートのエンタープライズ改装型
です。