「半沢直樹」最終回・応援したくなる人・ならない人(2) | アディクトリポート

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コメントそのものの掲載は見送りましたが、
リクエストいただいたので。

「半沢直樹」視聴率、関東地区42.2% 最終回

TBSによると、22日夜に放送されたドラマ「半沢直樹」の最終回の平均視聴率は、関東地区で42.2%。ビデオリサーチ調べ。瞬間最高視聴率は46.7%だった。

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あまりの話題に、最終回だけ見た人でも、面白く、満足して見られたそうです。

25分拡大して、全体の骨子を随所に織り込み、初見でも話の中身がわかるように作られてましたね。

登場人物の姓だけじゃ、誰だかわからないだろうと、セリフに出てくると、その人物の姿が画面に重なるなど、至れり尽くせり。

骨太で単純明快なドラマに、番組作りに参加した全員が本領発揮。
役者も渾身の演技、
撮影と演出も抜かりなし、
音楽(服部隆之)もまた、出色の出来。

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終盤の圧巻のドラマに、引きこまれて最後まで、涙ながらに見終えました。

「ラスト(半沢の処遇)が意外」という声も聞きましたが、これは原作どおりだそうで、私は納得、うなずけた。

大和田常務(香川照之)の処遇(懲戒解雇が当然のところ、平取締役への降格どまり)で、半沢直樹(堺雅人)のそれ(グループ会社への出向)も予想がつきましたしね。

専門的な見解はこちら

単純な勧善懲悪でもなければ、絵空事でもない、原作者の池井戸潤氏が元銀行員ならではの、真実をはらむドラマでした。

とはいえドラマは、原作(未読です)と色々異なるそうですが、
最後の対決で、頭取の制止をきかず、相手を土下座させたから、半沢は出向になってしまった、ということなのでしょうか?

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原作(土下座させないらしい)との差違を知る前から、私はそうは思いませんでした。

まず何よりも、半沢が突然ものわかりがよくなって、親のかたきの香川照之にあの場で土下座させなかったら、ドラマとしては大失敗です。

『ベン・ハー』で、メッサラと対決しないで、ドラマが終わってしまうようなもんですよ。
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やっぱ、しっかり復讐を遂げてから、後で白々しく「復讐はむなしく、キリがない」とかぬかすのこそ、ドラマの王道です!

視聴者が一番期待していることを外して不完全燃焼で終わらず、よかった。

このドラマ以前の最成功作、「家政婦のミタ」は、
最終話の夕食のシーンは、出演者のアイディアを採り入れたために、
シナリオとは大幅に異なって、ミタさんに思い切り人間性が戻ってしまい、
そのため翌日の、以前通りの感情を隠したミタさんの場面と、
厳密にはつながらなくなっています。

だけどドラマとしては盛り上がり、視聴者はその見応えに満足しました。

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それから、今の若い銀行員から、このドラマに対して「出向は銀行員ならあたりまえ。処分や左遷と捉えられるのはカンベン」と悲鳴が上がってるらしいが、たしかにそのとおり。

頭取は、半沢なら、他の行員には無理な仕事を託せると判断して、出向を命じたまでのこと。

山崎豊子が原作の『沈まぬ太陽』の映画版で、正論を貫き通す主人公(渡辺謙)は、会社から疎ましがられ、アフリカ支店などの僻地に左遷をくり返す。

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それで後年にその辛酸を振り返り、涙してたんだが、会社の金で、個人旅行では行けない場所の生活を体験できるなんて、うらやましいと思ったね。

生き抜く秘訣は、どんな悲観的状況にも、自ら光明を見出すことだと思う。
そしてその光明は、人との関わりで、自分が(自覚無自覚を問わず)誠意をもってあたった人から、もたらされる。

「半沢直樹」で感心するのは、社会告発の姿勢が息づいていること。

「相棒」もそうだが、描かれた組織に「あちゃー、それをさらけだしちゃったか」と、煙たがられる部分が多い。

映画としては上出来とはいえずとも、『鑑識・米沢守の事件簿』(2009)では交通安全協会、

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相棒SERIES X DAY』(2013)では、近い将来の日本の経済破綻の可能性をつき、
「ただ単に、映画を見た」で終わらないわだかまりが秀逸だったが、

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「半沢直樹」で描かれた大銀行だって、問題アリアリなのが、きちんと描かれている。
幻想を抱かない人は、某出版社の懸賞水増し問題みたいに、「どうせそういうもんでしょ」と割り切って見てくれるだろうが、
銀行を見る世間一般の目が変わっちゃって、お勤めの方はやりにくいと思いますよ。

まずは半沢の掲げる理想、「銀行は人助けのためにある」という図式が崩れて久しいということ。
貸し倒れが急増し、大きな金の動かし方を変えないと、もはや銀行業務が立ち行かなくなっていること。

着服や横領という、銀行員としてあるまじき犯罪がお咎め無しなのは、多少の程度の差こそあれ、大きなお金を動かせる立場になると、勘違いしてそれに手を染める者が後を絶たず、全員を厳正に処分していたら、誰も残らなくなってしまうこと。

白黒はっきりつけず、銀行に長年尽くした功績から温情措置となれば、もともと優秀な行員は、銀行への恩義から、組織のために役立つ存在に転ずるだろう。
今後大和田(香川)が、頭取(北大路欣也)に刃向かうことはないし、もしかすると半沢の助けにすらなるかもしれない。

というわけで、長年月で肥大化した組織は、内部から朽ちていくのは避けられず、その内部に身を置く限り、いかに正論をゆるがせず、理想と熱意に燃える半沢といえども、全てが自分の思うとおりにはならない。

もちろん、それにめげないところが魅力だが、そもそも原作者の池井戸氏は、どうして銀行員をやめたのか。

それは、内部にいる限り、出来ないことをするためだった。
となると、最終的に半沢が頭取に上り詰めるのだけが、本当の人生の成功、勝利とは限らない。

同時に原作者は、もしも自分が銀行にとどまっていたら、という理想を、このシリーズに重ね合わせてもいるのだろう。


ということを、あの最終回から読み取ったのでした。