第12話「その果てにあるもの」感想「宇宙戦艦ヤマト2199」 | アディクトリポート

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※今回は特に、アフィの貼り付けがうっとうしいことを、あらかじめおわびします。

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総監督と庵野氏の対談で、庵野氏が「総監督は、ガミラス愛が強すぎるからなあ」と、やんわりと指摘したところ、本人は「そんなことはない」と心外な様子だったと伝え聞く。

入れ込みすぎて、自分の手がけている作品を全体から俯瞰できないのが、「2199」の最大の問題だと思う。

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第12話はまさにその、
総監督のガミラス偏愛の症状が
最も顕著に現れた例

と言えよう。

ガミラス帝都(バレラス)の緻密な描写は、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-shuro
ここにきわまれりと言った感じで、
地球や、ヤマト艦内の安普請(やすぶしん)ぶりと対極をなす。

↓11話に登場した、何の変哲もないヤマト艦内会議室。デザイン作業を放棄したとしか思えない。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-たて
↑第1話にも登場した、地球の地下都市にある病院区画。


この一割でも、ヤマト艦内の意匠や描写に凝って欲しかったよ。

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*真空の無重力空間で、水を含まず、その重みで対象にくっついてもくれないモップで、どうやって掃除するのか?(古代が波動砲口に逆立ちしてるから、磁力式なんだろうけどね)
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-rajio
*タブレット端末を標準装備のご時世に、胸にぶら下げた紙のカードに、ハンコをもらい回る滑稽さ。
ハンコなんて、2199年まで存続しないよ!

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この「ハンコもらいながらの罰ゲーム」って、ラジオ体操からヒントを得たのか、それとも、またしても、海自のしきたりの引き写しなのか?

誰かが、「総監督が現代の(海上)自衛隊のあれこれを、どうしても自作に反映したかったこだわりを、クリエイターなら理解できるはず」と言ってたような気がするが、(いくつかの意見や声をまとめています)そんなの、理解できないよ。

たとえば自分なら、何かを作品の根幹のテーマに決めれば、それに関連したリサーチをして、その成果を作品に盛り込むのに手一杯で、わざわざそこに、個人的な趣味だとかを割り込ませたりする余裕はないね。

それは作品の私物化に他ならないから、自分のオリジナル作品でやるならまだしも、借り物でやらないで欲しいよ。


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実はこうした迂闊な描写は、総監督が愛してやまないはずの、ガミラス側にもある。

頭上に見上げるイスカンダルへのホットラインが、黒電話みたいな受話器での音声通話。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ffff
↑オリジナルを踏襲したんだろうけど、
当時はホットラインと言えば、
↓大国同士でも、音声通話だけだった。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-でれで

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「スターシャのビジュアルを出したくなかったから」
という言い訳も成り立つが、そんなのデスラーの取り巻きからは、音しか聞こえないように描くとか、意図的に画面に出さないとか、回避の方法は、いくらでもあるじゃん。


ドメルがデスラーから授与される勲章もなあ。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-kinndaikokka
※勲章のビジュアルはありません。

ヤマトクルー(地球軍)が海自なら、ガミラスはナチスドイツだから、オリジナルどおりの金属製の勲章って言う常識から抜けられないわけだが、未来ならではの、軍装備と情報表示装置の融合(胸の表示域に、新しいマークが表示される)とかの方がリアルだと思うぞ。

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そういえば、先週の11話に対して指摘した、
*脱出機構・装備が考え抜かれていない
*島大介の反発は不自然

----の2点について、熱い擁護論をいただき、そこまでしてくれるファンは、作り手にはありがたいだろうな、と思いはした。

とはいえこちらも、わざわざ指摘するにはそれだけの確信があるわけで、その指摘は11話だけを取り沙汰したつもりはなく、いつもどおり相変わらずの作り手の迂闊(うかつ)さ、杜撰(ズサン)さ、軽薄さに起因するものだという見込みは、今日の12話を見て、くしくも裏付けられた。

島大介の(地球側がガミラスより先に仕掛けたという事実に対する心理的)反発は、この12話まで引っ張って古代と衝突させるためだったし、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-どい

その反発を招くためには、山崎に生き延びてもらわなければならないため、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-zakiyama
彼の生存の理屈づけ程度にしか、宇宙戦艦ムラサメの脱出システムが考えられてないことを見抜いたわけ。

だから「脱出」というキーワードで共通している11話の後半を見て、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-さwqあqwqあ
「どうせお前ら(作り手チーム)、さっきの山崎の脱出システムとの照らし合わせなんて、この時点では、すっかり忘れてるんとちゃうんか?」
ということが言いたかったわけ。



「宇宙戦艦ヤマト2199」には、こういう「話を先に進めちまえばこっちのもん」とばかりに、オリジナルからの改変の動機部分が、きわめて脆弱な例がおびただしい。

*重力障害を回避して、より深刻な強重力環境に飛び込む
とか、
*超空間通信を無力化させる要因が、真っ先に対策を講じておくべき宇宙放射線障害
だとか
*ゲールが躍起になってヤマトの行方を追っていたにせよ、偶然ヤマトが陥った次元断層に、ガミラス艦は最初から遭難していたのか、罠を仕掛けるために入って来て遭難を偽装したのか、高官やメリダ(後のガミラス捕虜)の介入はいつからだったのか
等々、「話を先に進めちまえば、どうせ誰も振り返らない」と、観客のレベルを低く見積もられるのはちょっとカンベンな事例が多すぎる。

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まあ、しょせんは人間のやること、完璧になんてできっこないけど、少なくとも自分の作品に落ち度があれば、その失敗から何かを学ぼうと思いこそすれ、熱いファンやマニアに擁護してもらって、それで良しとする気なんか、毛頭ないね。

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12話自体は、そこそこ面白かったですよ。
(と、取って付けたような誉め言葉で終わり)