前回は、大河原邦男が久々にデザインした、『第08MS小隊』(1996年~1999年)のザクまでたどりついたが、
このザクは『第08MS小隊』のために(完全新規に)描き起こされたものではなく、
リサイクル、つまり他作品、他企画からの流用である。
で、元々の企画は何かと言えば、
1995年10月発売の、バンダイ1/100MG(マスターグレード)シリーズのMS-06F/J。
この製品のために、大河原氏が描き起こした画稿がこれ。
模型は破綻なく、画稿のイメージ通りに立体化されている。
そして1年後の1996年に、このMGザクの画稿をチョイチョイといじくり、
何パターンかの準備稿を経て、
準備稿1
↑右肩シールドに突起あり。
準備稿2
↑右肩シールドに突起なし。
この形に落ち着いた。
↑再び突起が復活。
準備稿から決定稿を並べても、
右肩シールドの突起(スパイク?)の有無以外は、ほとんど違いがない。
のみならず、MG用の画稿と比べても、
やはり右肩シールドの突起の有無以外は、ほとんど違いがない。
そのため、はじめは陸戦型ガンダムとセットで(1996年4月に)発売され、
2年後の98年4月に単体発売された、
HG(ハイグレード) 1/144 MS-06J ザクII 『第08MS小隊』版(ボックスアートは上記)は、
↑単品だけでは売れないと思ったのか、06F用のコンパチパーツ、スパイク無しのシールド、J型とは異なる形状の手首や足首、追加武装のヒートホークが付属。
MGザクを、そのままスケールダウンした印象。
で、とにかくこの、MG用ザクもしくは『第08MS小隊』用ザクは、
これまで大河原邦男が延々と描き続けてきたザクの典型から、ついに自ら決別した記念すべき瞬間と言える。
ザクの「小顔化」は、
1991~92年の『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』の、ザクⅡF2型MS-06F-2(デザインはカトキハジメ)
の影響と思われる。
しかしこの改変はいきなりではなく、年月を重ねて、次第にこの形に落ち着いている。
↑左から右へ順に。
*1981年頃のMS-06Jのリアルタイプイラスト。
*1984年発表のMS-Xのアクト・ザクMS-11で、上半身の角度、肩幅の示し方、腕の長さと構えの角度が変更。
*1990~91年のM-MSVのプロトタイプ・ザクMS-04で、MGザクの下絵的な構図が、ほぼ完成している。
というわけで、1995年の1/100スケールMGザクと、翌96年の1/144スケールHGザクで、史上初めて、大河原邦男の画稿=デザインに忠実なガンプラが製品化されるにはされたが、そもそもその画稿自体がガンプラ製品化を前提に描かれたわけで、純粋なオリジナル画稿からの立体化の動きは、
この時点でガンプラでは完全に放棄された、残念な瞬間でもあったといえる。
うえ~ん、今回を後編にするつもりだったのに、ちっとも結論に行き着かないよ~。
さすがに次回で、「大河原ザクの帰還」は終わり……のつもり。