夢との駆け引き〈その1〉 | アディクトリポート

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次回発売予定の長編ですが、内容もわからずに購入の勇気は、誰にもわかないと思いますので、今後数回にわけて、冒頭部分を紹介していきたいと思います。

『夢との駆け引き』〈究極のファンタジー〉
尾伏志音(おぶせ しおん)


プロローグ


同じ夢


 男は、また同じ夢を見た。

 正確には、全く同じ夢を毎晩、くり返し見続けているわけではない。

 同じ時代、同じ場所、同じキャラクターたちが出てくるその夢は、時折順序を入れ替えながらも、毎晩少しずつ、先へ先へと物語を進めていく。

 まるで連載小説や、テレビの連続ドラマのように。


 人間は、自分に当たり前に起こっていることは、他の人にも同様だろうと思いこみがちなものだから、男はこの続き物の夢も、もしかしたら他の誰にでもあることなのだろうと、いったんは思いこもうとしてみた。

 しかし職場の同僚が、「いやあ、昨日ヘンテコな夢を見ちゃってさ」と語る様子や、30歳を過ぎるまでの自分自身を振り返ってみても、どうやら毎晩続き物で異世界の物語を夢に見続けるというのは、かなり特異な体験らしい。


 やがて男は、何かしら意味があって、この夢を見続けているのだろうという気がしてきた。

 続き物の夢は男に、「早くこれを具体的な形にして、他の人たちにも見せてあげて」と、せがんでいるように思えてならなくなった。


 そこで彼は、そのせがみ続ける声に応えることにした。

つづく

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