ルーカスのネタ帳(後編)/SWキャラのルーツ(7) | アディクトリポート

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前回で(ラルフ・マクォーリーの)平面デザインへの元ネタ検証を終えたので、今回は立体造形での元ネタ検証について。

----と、その前に、このブログに書いてることは一字一句正しいわけではなく、私の勝手な推理で埋めてる部分が多々ございます。
「それは違うんじゃないか?」って意見も大歓迎ですので、よろしくお願いします。
また、そういうご意見がもっともで、修正する場合も、過去のブログをひっそり直しても誰も読んでくれないので、改めて項目を設けて投稿することになると思います。

そんなわけで、今回の仮説も、当たっているかどうかは保証の限りではありません。

さて、本題に戻って----

まずは各キャラが、1975年後半から遅くとも1976年初頭、つまりイギリスでの立体造形の段階に、すでにこの世に存在していたかを確認してみよう。

C-3POの頭部候補に影響を与えたキュラソ星人
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-キュラソ
「ウルトラセブン」第7話「宇宙囚人303」
1967年11月12日初放送
合格!

ダース・ベイダーに影響を与えた血車魔神斎
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-魔神
「変身忍者嵐」(1話~21話、38、39話)
1972年4月7日放送開始
合格!

ストームトルーパーに影響を与えたマシンガンデスパー
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-マシミニ
「イナズマンF」第5話「DESミサイル大空中戦!!」
1974年5月7日放送
合格!

だがしかし、「すでに存在していた」というだけでは、元ネタになる資格を得ただけのようなものである。

上記3点の元ネタ否定論者の言い分はきっと、「元ネタがあまりにもピンポイントに絞り込まれすぎで、そんな細かな選定や吟味は、日本人以外にできるわけがない」というものだろう。

たしかに選ばれた番組の放送時期にも大きな開きがあるし、ウルトラセブンのように認知度も高く、ハワイで放映されたものもあれば、

本放映ただ一度きりで、二度と再放送されていない(関東圏)「嵐」のようにマイナーで、日本人でもよほどのマニアでなければ知らないものもある。

それに「これを元ネタに使おう」と決めたとして、その画像や映像を、どうやって手に入れるのだろう。
まだ家庭用ビデオが普及していなかった時代。放映中の場に居合わせて、画面を撮影したとでも言うのだろうか?
たとえば特定のキャラの画像探しは、なんでも検索すれば手に入れ放題になった現代のネット社会で、日本語で実行しても、上記のような小さな画像にしか行き着かないというのに、ネットもパソコンもなかった時代に、どうやって入手したというのだろう。

さらに、これほど細かく元ネタを絞り込んだのであれば、相当に調査研究を重ねたのであろうから、各キャラクターの名前ぐらい当然知っていそうなものなのに、ルーカスが口にしたのは、(元ネタにはほど遠い)ハカイダーだけだった。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-カラス

だがしかし、実際にこの3つのキャラを立体造形の元ネタとしてあてがうために、ルーカスは
*そのキャラが登場する番組自体に行き着く必要はなく、
*したがって番組名も、キャラの名前も、何話に登場したのかも知る必要はなく、
*もっといえば、あえてこの3キャラに、元ネタの候補を絞り込む必要さえなかったのだ!

……これはいったいどういうことなのか。

答えに行き着くためには、ルーカスと日本の関わりを見ておくとわかりやすい。
田舎町モデスト出身のルーカスにとって、日本は神秘な異国の地だった。
映画学校時代に黒澤明作品に出会い、その面白さに入れ込んで、1作目『SW』の下敷きには、『隠し砦の三悪人』(1958)を拝借し、これについては堂々と公言している。
↓各キャラクターの割り当てから仕草までそっくり。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-まねっこ
↓最後に姫から栄誉を讃えられるのも同じ。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-表彰式
↓元々は一つの話だった3作目『ジェダイ』にも、『隠し砦』の影響は顕著。
凸凹コンビのたたずまい。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-オープニング
↓森の中の追跡劇。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-バイク


そのため一時期は、主要キャラを全員日本人(東洋人)で固めようとか、せめてオビ=ワン・ケノービだけは、元ネタの『隠し砦』にもでていた三船敏郎に演じてもらおうと、正式に出演依頼までした。
娘の三船美佳は、「父はダース・ベイダー役をオファーされた」と思っているが、ベン・ケノービですから!
↓マクォーリーのケノービ案には、明らかに三船敏郎をイメージしたものがあり、
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ベン御船
これがギネス起用の決定で描き直された。

$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ギネスベン

ルーカスは1970年頃、劇場用処女作、『THX 1138』(1971)のロケハンで、(おそらく初)来日している。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-THX
物語の舞台となる未来都市に、日本の原子力発電所を使えないか、その可能性を探るためだった。

結局その計画は実現しなかったが、とにかく初めて訪れる日本は、ルーカスにとってなかなか興味深かった。
まず、日本語がわからなくても、英語だけでもどうにか生活できそうだった。
駅名の表示などは英字併記だし、外国人向けのホテル内では、不案内にならないような配慮が行き届いており、英字新聞のテレビ番組覧には、各番組の簡単な説明もある。
時代劇は、Jidai-Gekiと書いてあり、これだけではなんのことだかガイジンにはわからないので、「サムライドラマ」(Samurai Drama)と注釈がついていた。
これがジェダイの語源である。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ジェダイ

ルーカスはまた、70年代の日本のテレビ番組には、奇抜な特撮ヒーロー仮面キャラや異形のモンスターがたくさん登場しているのも興味深く、そのことをよく覚えていた。

やがて自分が、仮面キャラやロボット、エイリアンやクリーチャー(怪物・怪獣)を大挙登場させる映画をつくることに決めた時、日本には元ネタになりそうなキャラクターがあふれかえっていたことも思い出した。

しかし、怪獣だとか怪人だとかヒーローだとかの数がやたらと多すぎて、どれを選べばいいかわからない。
だったら電話帳やカタログ代わりに、たった1冊で、そうしたものを一挙に閲覧できるものがないだろうか?

あった!

それが、ケイブンシャの、原色怪獣怪人大百科である。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-警部
1巻目は1971年12月に、怪獣ブームの只中で刊行されて大ヒットを飛ばした。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ケイブンシャの怪獣百科
ページ形式の本ではなく、大判のシートを折りたたんだ組本だった。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-怪獣怪人1
同年には円谷プロの「帰ってきたウルトラマン」「ミラーマン」があり、1954年の「ゴジラ」以降の、映画、テレビに登場した全ての怪獣、怪人(妖怪)を網羅したこの遠大な書では、やはり怪獣が主流だったが、同年4月3日から放送されていた、等身大仮面ヒーローの新しい形、「仮面ライダー」を収録することで、怪人の比率がいくぶん増した。

キュラソ星人は、この第1巻に収録されている。

この成功から、続刊の第2巻は1年後の1972年12月に刊行。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-第2巻
1巻目が1954年のゴジラから1971年の「帰ってきたウルトラマン」「仮面ライダー」までの17年間で、370匹(体)の怪獣を収録したのに対し、第2巻はわずか1972年の1年間だけで、(「アストロガンガー」や「デビルマン」等のアニメまで加えて水増ししているにせよ)440匹を収録しており、当時がこの手の番組の乱造期だったことがうかがえる。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ケイブンシャの怪獣2
血車魔神斎は、「魔人斎」と誤表記されながらも、この第2巻に収録されている。
画像提供:オクターブの共鳴音
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-魔人斎

3巻目は1973年12月の刊行のため、半年ほど後に登場するマシンガンデスパーは収録されていない。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-3巻

折り込み組本形式の「原色怪獣怪人大百科」は、しかしこの第3巻までで終了し、その後は豆本形式の「全怪獣怪人大百科」に移行する。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-1974
新形式に移行した昭和49年版(1974年版)での問題は、「原色」(カラー)でなくなったうえに、「全」と銘打ってしまったために、前3巻に分載されていた怪獣・怪人を再収録したため、1516体もがモノクロで小さくしか掲載されていないことである。
とはいえ、マシンガンデスパーは、この1974年版に収録されている。

ルーカスは造形参考のカタログ代わりに、この怪獣怪人大百科シリーズを、1971年の第1巻から最新刊の74年版まで買いそろえ……
と、ここまで書いて気がついた!

(SW製作時点で)最新の、74年版「全」怪獣怪人大百科1冊だけ買いさえすれば、
キュラソ星人も、
血車魔神斎も、
マシンガンデスパーも、
この1冊に集合して、載っているではないか!

モノクロなのは仕方ない。
というよりも、あくまでも造形=立体化の参考なので、色なんかどうでもいい。
かえって白黒の方が、都合が良いかもしれない!
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-??
モノクロなら----
*造形の陰影がより明確に読み取れるし、
*色に惑わされず、SWキャラには別の色を自由に割り当てられるから、元ネタをぼかすことができる。
----というわけで、これをイギリスの造形班に渡して、C-3POやダース・ベイダー、ストームトルーパー等に応用できそうなものを、自由に使うようにと指示したのだろう。
この場合、キャラの見栄えが大切なだけで、名前なんてどうでもよかったし、第一ルーカスにも、イギリスの造形班にも、日本語なんか読めなかった。

それに加えて、平面デザインの時点の「宇宙戦艦ヤマト」や「宇宙海賊キャプテンハーロック」の時と同様に、十把一絡げで掲載されているキャラクターと、それが出演している個々の番組が、今後他の同ジャンルの存在から抜きんでるとは思えなかった(=このまま埋もれて、顧みられる機会などなさそうに思えた)し、そもそもそれを拝借した自分の映画の方だって、ヒットするかどうかはわからなかった。

ずっと後になってSWが日本でもヒットして、「ねえ、ダース・ベイダーって、血車魔神斎じゃないの?」とか、「ストームトルーパーは、マシンガンデスパーが元ネタじゃないか」と指摘する人間が出てくるなんて、当時のルーカスには予測がつかなかった。

キャラ造形の参考資料に、アメリカ人の自分が、異国の地日本の書店の子供向けの本のコーナーから、ケイブンシャの怪獣怪人百科をひそかに買い込んだことなど、そして1516体もの中からわずか2体しか(キュラソ星人は途中でボツ)採用してないんだから、そんな効率の悪いことをしていたのを見破る人間なんて、いるわけないさと思ってた。


ところがいたんだな。30年以上も後になっちゃったけど!


なんか反応薄いんですけど……
↓「左舷、弾幕薄いぞ!」--ブライト・ノア
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ブライト
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