ただのオタクと思うなよ -5ページ目

下町散策マニアには嬉しい!iPad版「荷風!」

荷風! vol. 24 /ACCESS CO., LTD.

¥700
iTunes
※モバイル非対応

 iPad関連のネタをもう一つ。なんだかんだで「電子書籍元年」を象徴する真打ちデバイスが手に入ったということで、それにふさわしい本をiTunesで物色していたのですが、そこで見つけたのが、下町散歩マニアにはおなじみのムック「荷風!」です。

 過去のバックナンバーはこのブログでも何度か紹介しましたが、「荷風!」がiPadで見られるということそれだけで、私なんぞには嬉しい限り。それに、この本の読者層というとやはり年配の方が多いだけに、これによってiPadユーザーのすそ野の広がりにも期待したいところ。実際の紙の本の「荷風!」はA4サイズなので、一回り小さくなった分、iPadでこれを見ながら散策に出かけるなんて言うことも可能なのも嬉しいところです。

 書籍もさることながら、実物では少しかさばるムックの電子化は、iPadとの相性がすこぶるいいような気がしますね。白黒のKindleじゃこれは無理です。

$ただのオタクと思うなよ で、見栄えは想像以上に鮮やか。昔の東京の写真や錦絵などもふんだんに登場するのがこの「荷風!」の特徴であり売りなのですが、その売りをさらに増幅させている感じです。

 ただ、見ているうちに人間というのはワガママになってくるもので、せっかくの電子媒体なのだから、例えば古地図が掲載されているページでは「GPSと連動できたらなあ」「セカイカメラと絡ませたらもっと面白そう」などと、オプション脳が作動してしまうのです。誌面のできがいいだけにその欲求はなおさらなのです。

 いや、一層この出版社とタッグを組んで、iPadならではの新生「荷風!」を創造してみるのも面白いような気がするのですが、いかがですかね。私なら1000円課金でも飛びつくんですが。

 ところで、できのいいコンテンツの中で1点、残念な箇所がありました。それはページのレジューム機能がなかったこと。1発目なので行き届かなかったのは仕方のないところですが、ぜひこの点はソフトのバージョンアップで対応して欲しいところです。


iPadが連れてくるメディアは、電子書籍でも動画でもない“何か”


$ただのオタクと思うなよ 金がない身にもかかわらず、iPadはちゃっかり発売初日にネット予約で手に入れ、連日使い倒しているところです。一応仕事のネタ探しという名目もあるので、必要な出費とご理解いただければ。

 で、手にする前までは「巨大化したiPod touchだろ」程度に考えていたのですが、実際に使ってみるとこの「巨大化」というアドバンテージが、それまでと全く違う世界を作り出している事実に驚かされます。

 それを実感した一つが、映画情報サイト「IMDb」のアプリ。きのう、仕事がらみで教えてもらって速攻で解説記事を書いた代物なのですが、これがまあスゴイ。巷では電子書籍がどうとか、動画がどうとか、iPadと次世代メディアの関係がいろいろ語られていますが、もうそういう個別のメディア形式をバラバラに語るのは無意味であることが、この「IMDb」が教えてくれました。

 紙の延長としての電子書籍でもなければ、ビデオデッキの延長としての動画プレイヤーでもない、もちろん両方の機能を飲み込みつつ、膨大なデータベースとそれに対応したコンテンツ複合化の妙技が集大成された、これまでの媒体の概念を根本から覆す閲覧物が、「IMDb」が提示した形なのだと私は感じました。

 このアプリを開けば、映画に関する現在・過去・未来の情報がすべて手に入る気にさせる演出。最新映画の上映スケジュール、評価、アンチランキング(ワースト100とか、日本のメディアじゃ勇気ないし、できないねこれ)、過去の名作選などが一覧でメニューに体よくレイアウトされ、ユーザーは直感でアクセスできる。個別の作品のページを開けば、その場でトレーラーも再生できる。しかもものによってはHDで。

 下世話な話ですが、これ、もうみんな真似しちゃおうよ。まずはこれでいいよ。これくらいやろうよ。iPadなんだから。日本映画でも見たいよ。アニメでもやってよ。ゲームでもさあ。

 もちろん、iPadはまだ始まったばかり。これからこのIMDb以上のすぐれものアプリが出てくるのは想像に難くない。「これが本でも動画でもない全く新しいコンテンツですよ」という未来を、私たちはさらに期待したい。

 “電子書籍”などという言葉をとりあえずは使っているけれど、iPad向けに生み出されるのはそんな既存の言葉の組み合わせとは違う、これまでの想像が及ばない新しいコンテンツ形態が提示されることになるのでしょう。その片鱗が使用からわずか3日で体験できてしまったことは、嬉しくも、また作り取っては恐ろしくもあるiPad現象といえるでしょう。
IMDb Movies & TV /IMDb

¥0
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※モバイル非対応

ビジネス書大バカ事典


「成功本」はゲームソフトみたいなもの

 最近このブログで取り上げる本、いわゆる成功本を取り上げることが少なくなりました。全然読んでいないわけではないのですが、書くほどではない、というか書きにくいのです。なんというか、あの手の本を多数読むと、いくつかのパターンが読み取れてしまうと言うか、底が浅いものが少なくなくなっているんですよね。特にここ最近は。

 おっと、別に最近の成功本にケチを付けるつもりもなければ、それらを読むな、などとおこがましいことをいうつもりもございません。ただ、言えることは「あまり真剣にのめり込み過ぎるな」と言うことです。

 きっかけは勝間和代さんと香山リカさんの論争を読んだ当たりからですかね(実のところ論争と言えるほどの中身ではありませんでしたが)。私はどちらかというと勝間さんの考え方に近かったのですが、香山さんの言う「誰もが勝間和代になれるわけではない」という言葉にはうなずかざるを得ない。勝間さんの本を読みさえすれば、今ごろ100万人単位の成功者が生まれているわけですからね。ただ、じゃあ成功しない人が「勝間本」を読むのは意味がないのかと言えば、そんなことはないわけです。

 そもそも200ページからなる本の内容のすべてを記憶することなどどだい不可能。一冊の本を持って勝間和代をそっくりまねること自体実はあり得ないこと。

 忘れてはいけないのは「本」とはエンターテインメントの選択肢の1つであること。どんな立派なお題目を唱えている本でもそうです。つまりぶっちゃけゲームソフトと同列。遊びで始めたつもりが、思わず感動してしまうってことがあるでしょう。あれと同じ感覚です。もちろん、クソゲーに出会うリスクもあるわけですが、そんな時は「トンデモ本」を楽しむ気持ちになればいい。

 私は映画を見るのと同じと思っています。ビジネス書の単行本1冊がだいたい1500円くらいで、読み切るのに2時間くらいと考えたら、費やすお金と時間は映画とほぼ同等ですからね。

 そうした様々あるエンターテインメントの一つとして成功本を読んで、感銘して残るものがあればそれを吸収すればいいし、馬鹿馬鹿しいところは笑い飛ばせばよい。それくらいの気軽さが成功本を読むときには必要なんです。逆に、「この一冊を読み込んでオレは天下を取ってやる」なんて考え方はまず捨てること(そんなやつはいない?果たしてそうかなあ?)

 で、本日取り上げる一冊は、そんな成功本を「もどき」と断じてぶった切る「ビジネス書大バカ事典」です。

 帯に「新書3冊分の大迫力」とぶちまけている通り。そのペン先はまこと鋭い。鋭いけれどたぶんその剣先は木刀か竹光。つまり書店にあふれるベストセラービジネス書をばんばん叩いていくのではあるけれど、最終的に殺気はない。その殺気を押さえ込むことこそが本と向かい合うために本来必要な心構えなのではないかと、私には読めました。

 勝間和代からドクター苫米地、本田直之、石井裕之などなど、書店のビジネス書コーナーをのぞいたことがある人なら必ず目にするビッグネームを舌鋒鋭く切り込む様子は実に痛快。とはいえ、一部に無理矢理感のある切り込み方もあり、この本もまたエンターテインメントの1冊として読む気構えを忘れるべからず。

 成功本にのめり込み過ぎている感触を覚えている方なら、箸休めに読んでみるのもいいでしょう。ボリュームはありますが、案外あっさり読めますからご心配なく。

スーパーハイビジョンだけじゃない、NHK技術陣が見せるソーシャルテレビの「あした」

$ただのオタクと思うなよ 毎年この時期恒例となっているNHKの技研公開が先週末行われ、私も行ってきました。もう5年連続くらいで足を運んでいるのですが、これほど深いネタの宝庫はないんですね。しかも全部見るのはタダ。場所が世田谷の砧とあって交通費がかかるのが難点ではありますが。

 で、NHKがいま最も力を注いで研究しているのが、現在一般化しているフルハイビジョンの16倍の画素数でとてつもない高精細映像を映し出す「スーパーハイビジョン」と、メガネを掛けなくても見られる「インテグラル立体テレビ」。これを時代を先取りして体験できるのは、新しもの好きの私なんぞには最高のご馳走なのであります。なのではありますが、これらが実際に自宅の居間で普通に利用できるようになるのは2020年代以降の話。毎年見に来ている身としては「去年と何が違ってるの?」というところもあって、やや現実的なところからは遠いわけです。

 ところが、今回の公開ではひと味違う、1年後には実現していてもおかしくない、しかも去年はかけらも見えていなかった(断片的な技術紹介はされていたのですけど)技術の展示が成されていたのです。それが、Twitterなどソーシャルメディアの使い勝手を絡めた「ソーシャルテレビ」です。

 「ソーシャルテレビ」とはどんなものか。わかりやすい例を挙げると、Ustreamの画面の横にTwitterやFacebookのタイムラインが流れていく形が最近おなじみなりつつありますが、あれの動画画面をNHKのテレビ番組、つまり公式映像でやってしまおうという試みなのです。もちろん、Twitterのほかにもニコニコ動画のような場面上にコメントを流す方式も考案しているのでしょうが、今回の公開ではそれはおいてありませんでした。

$ただのオタクと思うなよ
 ただ、これだけではUstreamのマネに毛が生えた程度ということで、NHKが試しているのは通常のテレビ受像器でこれをできないかと言うことと、リモコンの4色ボタンを絡めてインタラクティブなデータのやりとりはできないかという実験。コメントを解析して意見集約をやってみたり、データを元にドラマの映像にマンガの吹き出しのようなものを付けてデジタルコンテンツを簡単に作成できる、なんてこともやって見せていました。しかもそこにはiPadだのKindleだのまで絡めるデモまで。もうそれ見ただけで私なんぞ心臓バクバクもんでした。

 まあ、実際にこれらを実現させるとなると、版権やら課金方法やらビジネスベースの障害がいくつも横たわってくるわけですが、これらの展示物からは、とにかく「俺たちだってやれることはいくらだってあるんだぞ」というNHK技術陣の気概が伝わってきました。1年前の5月に、Twitterが日本国内でこれほどメジャーな存在になると予想した人はそう多くなかったはず。いわば無に近かったところから、1年でここまでのものを出現させた技術陣のアイデアとソーシャルメディアの潮流のすさまじさ。スーパーハイビジョンや立体テレビとはまた違う、テレビの「あした」は、本当にあした、やってくるかもしれません。

これを見れば「テレビはもうおわりだ」などという台詞、言えなくなりますよ、絶対。

“ゲゲゲ”に身につまされる独り言

朝ドラ「ゲゲゲの女房」があまりにも面白い。これほど面白いドラマを、私は知らない。

何故これほど持ち上げるかと言えば、いま我が身に起こっている現実と、恐ろしいほどに重なるからだ。

まだろくな収入も得ていないとはいえ、自分もライターを名乗る、クリエイティブの端くれだ。その意味で漫画家・水木しげるは大先輩である。

いま放送されているドラマの展開では、身を削って書き上げた原稿を、出版社に持っていこうにもなかなかお金に転換されない日々の連続。そこで一度は声を荒げるものの、「書き続ける以外にない」と仕事部屋にこもり原稿用紙にかじりつく、若き日の水木しげる。当時39歳。いまの私とあまり変わらない。いや、時代背景を考慮していまと照らし合わせると40半ばくらいの感覚だろう。私もいま43。

この当時水木しげるが書いているのが、のちの不朽の名作「ゲゲゲの鬼太郎」への布石となる「墓場鬼太郎」。「ゲゲゲ」に発展しテレビアニメとなるのはこの7年後だ。

具体的なことは伏せるが、いま私は、若き日の水木しげるのように、原稿料との追いかけっこをやっている。しかもきょう、その距離はまた広がってしまった。

いまはただ、水木しげるにあやかろう。「書き続ける以外にない」と。


ゲゲゲの女房/武良布枝

¥1,260
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ゲゲゲの女房―連続テレビ小説 (NHKドラマ・ガイド)/山本 むつみ

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ねぼけ人生 (ちくま文庫)/水木 しげる

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Ustream 世界を変えるネット生中継

川井 拓也
ソフトバンククリエイティブ
発売日:2010-05-19

エントリー本としてきっちり整理されている。

ジャーナリズムさえ変えてしまう新メディアの出現
 Twitterはもう、余分な説明もいらないくらいに世間に広まったわけですが、その流れにさらなる波を起こしつつあるのがUstreamです。このところこのブログでも、Ustreamのライブ配信を話題にしてきてますが、4年前のYouTube出現の時と似たような、いやそれを上回る可能性が感じられる。というかそう思わせる現象が日々、すでに起きています。

 そんなUstreamをかみ砕いて解説した、おそらく初の書籍が本日紹介する1冊「Ustream 世界を変えるネット生中継」です。

 Ustreamは、すでにTwitterをそこそこ使いこなしている人ならば、動画媒体として欠かせない存在となっているのではないでしょうか。私がUstreamの存在を知ったのはもう1年以上前ですが、そのころは途切れ途切れになってしまいがちの動画が多かった性もあって、可能性は感じつつももう一歩環境が進化しないとダメかなと思ったものです。でも、素人による投稿だけでなく企業などの公式利用が徐々に増えてきたことで、可能性は現実にグッと近づいてきたように思えます。

 そうさせたのはもちろん、Twitterの貢献するところ大。Twitterの認知がここまで一気に進んだからこそ、Ustreamの魅力を早々に引き出されるに至ったといっていいと思います。

 Ustreamは、もちろん個人が持てる放送手段として強力な存在感を増していくでしょう。しかし、Ustreamを「たかが個人の放送ごっこ」などと思っている企業に明日はありません。インターネットそのものの拡大がそうであったように、「個人」のパワーだけでの成長はないと私は思います。個人と企業の隔たりを取っ払い、双方の発信方法の区別をあいまいする効用にこそ、UstreamやTwitterを始め、これからのメディアのあるべき形ではないでしょうか。

 また、この本では、Ustreamの伝道師とも言える「ダダ漏れ」中継のそらのさんのインタビューが出てきます。私も何度か会ったことがある彼女ですが、政治家の記者会見だろうが大物社長の前だろうが果敢に突っ込んでいく彼女のような存在がもっと出てきたとき、日本に新たなジャーナリズムが生み出されるのかな、そんな感じもします。新たなメディアの出現は、新たなジャーナリズムの形、いわば「ソーシャルじゃなリズムさえ生み出そうとしている。Ustreamにはそんな可能性さえ秘めているのです。

 

早雲の軍配者

富樫 倫太郎
中央公論新社
発売日:2010-02

キャラクター設定が絶妙。大河ドラマ「風林火山」にはまった人なら絶対読んで後悔させない。

誰もが知る人物の絶妙な“ひねり”が面白い
 数多い戦国武将の中で、北条早雲ほど魅力的な武将はないと個人的には思っております。

 この戦国武将ブームにあって、この名前を挙げる人はそう多くないでしょう。なにしろ、大河ドラマなど映像化がほとんどされていない人物ですからね。でも、この北条早雲こそ、ある意味「戦国時代」を作り出した張本人の一人。早雲なくして戦国を語るな!と言いたいところです。

 ただ、この「北条早雲」という呼び方にはいささか複雑な問題があります。この本人が生前、自分を「北条早雲」と名乗ったことは1度もなかったからです。元々の名前は伊勢新九郎宗瑞。その前歴は今もってはっきりせず、元は室町幕府の役人だったとか様々な説がある。そんな謎が多い点にこそ、この人物の価値を高めているようにも思えます。

 とりあえず早雲の履歴ではっきりしているのは、姉(妹という説も)が嫁いだ駿河・今川家の宿老として仕えていたということ。そして早雲の甥である当主・今川氏親の厚い信任の元、駿河の東・興国寺城を任され、野心を抱いて伊豆・相模に攻め入って国ごと自らの手中にする。その国盗りのやり方が、初期の戦国大名の典型とされているのです。

 その早雲の意を受け継ぎ、その後関東一円に勢力を伸ばす北条氏を軍配者として支えた一人の男の物語、「早雲の軍配者」を本日は紹介しましょう。

 この物語の中では「韮山さま」「早雲庵」と呼ばれ、相模・伊豆の人々から神のごとくあがめられるまでになった早雲が、次世代を託した人物は13歳の少年・小太郎。ふとしたことからこの少年の才気を見出した早雲は、北条氏(最初の時点では伊勢氏)の将来を支える軍配者(いわゆる軍師)に育てるべく、少年を板東随一の学府・足利学校に送り込む。そして経験を積んだ小太郎は、北条の関東支配にその力を遺憾なく発揮していく。

 特に興味深いのは、一般的によく知られている人物の、ひねられた設定。まず主人公の小太郎ですが、北条で小太郎といえば言わずとしれた風間小太郎。ここに出てくる小太郎は風間一党の中で育った少年ではありますが、忍者ではなく主家を支える軍師に持ってくる視点は斬新です。

 そして、小太郎が足利学校に向かう途中で出会う「山本勘助」。知っての通り、のちに武田信玄の軍師となる人物(ただし史実上は謎だらけの人物)なのですが、意外な形で「山本勘助」が成り立っていく流れには、その手があったか!と感心するばかり。

 年代的には、戦国ものの小説・ドラマでは最も描かれづらい時期なだけに、それだけでも貴重な存在。またそれだけに、作者の思い通りの物語が描きやすくもあり、そのメリットを充分生かし切っている作品といえましょう。

 信長・秀吉の時代ばかりで物足りなさを感じている歴史物入門者にも、是非とも触れて欲しい一冊です。


 さて、北条早雲ですが、この物語を読んで、さらにその人物像に興味を持たれたなら、南原幹雄著「謀将 北条早雲」をおすすめします。


今のままではMOTTAINAI!NHKオンデマンドのあり方

$ただのオタクと思うなよ
 一昨日(5月19日)NHKで放送された「クローズアップ現代」(スマートフォンの特集)に出演された古川享さん(@SamFURUKAWA)が、Twitter上で気になる撮影後の裏話を書き込まれておりました。それは本題のスマートフォンの話ではなく、出演番組の制作の仕組みと、放送後ネットに配信されるNHKオンデマンドでの扱われ方です。

 「クローズアップ現代」といえば、NHKで毎週月曜から木曜まで夜7時のニュースの後放送されるニュースレポートのような帯番組。かれこれ17年も続いている毎度おなじみの番組でもあるのですが、生々しい戦争報道からこの回のような最新のIT情報、さらにオタク的サブカル分野まで、その守備範囲は非常に幅広く、個人的にも大いに役立っています。

 1回の放送はたかだか30分弱のこの番組なのですが、古川さんのツィートによると番組スタッフは総勢200人にも及ぶのだとか(正確なところはだいぶ幅があるとも)。しかも、題材によっては1年スパンの長期取材によって作られているものもあるそうで、NHKの底力が凝縮された30分といって良さそうです。

 古川さんが引っかかったのは、そんなNHKの底力満載の番組が、NHKオンデマンドではわずか10日ばかりしか見られないという点。曰く「100人で制作しようが、200人であろうが、クローズアップ現代が放映後10日間のみ、210円はらって、1日のみの閲覧(1回ではなかった)、閲覧後にDRMにて消去されてしまう。というNHKオンデマンドの配布方法自体をなんとかしてくれぃ、と思うのだ。」。


 私自身、NHKオンデマンドの配信番組の紹介記事を書く仕事をしているので、この古川さんの感覚は強く感じているところです。

 例えば大河ドラマ「龍馬伝」。先週までに20回分が放送済みの「龍馬伝」なのですが、NHKオンデマンドで見られるのは、直近2週分のみ。ところが、人間もどかしいもので、見逃した視聴者などからは「その前の前の分がみたい」といったリクエストが意外に多いのです。

 そもそも直近放送分なら、初回放送分は見逃しても土曜日昼の再放送を押さえれば何とかなることはかなり知られています。315円払うくらいなら6日間待つ方が特と考えるのは普通であり、その分、アーカイブ番組としてのメリットはかえって薄いと言えます。6日間を待ちきれない欲求を315円で解消できるなら、と考える人にとってはもちろんありがたいシステムですが。でも、10日間の配信期間を過ぎてしまうと、あとは全放送終了後のDVD発売を待つ以外に見るチャンスはなくなってしまう。

 仕方がないと言えばそれまでですが、せっかく一度はネット上のコンテンツとして上奏されたものが、その後長らく一切人目に触れることなく眠ってしまうのはもったいないと思うのもごく自然な受け取り方なのではないでしょうか。

 と、ここまでは見ている側の欲求ですが、一方で設備・システムを抱えるNHKサイドの事情というものも存在することを留意しておく必要があるでしょう。よく知られている通り、NHKオンデマンドの運営は、NHK本体の予算からは切り離されており、“皆様の受信料”や国の予算は使えず、オンデマンド利用者の視聴料金が主な財源になっています。これが足かせになり、1番組に100人単位動員できる放送局の力も及ばない、厳しい運営を強いられている現実があるのです。

 せっかくすばらしいシステムと、高品質の番組コンテンツが存在するのに、それを最大限活用できない現実。これほどMOTTAINAIことはありません。

 先週、このブログでも取り上げた孫正義さんと佐々木俊尚さんの対談中で、孫さんが電子教科書構想を語り、NHKオンデマンドのコンテンツを教育現場にも有効活用すべきだとの持論を展開しておりました。大河ドラマをそのまま教材に使ってしまうことにはいろいろ引っかかるところはなくもないですが、仕組み自体は私も大いに賛同するところ。このような、何らかの形で国家レベルの事業とリンクさせて、国民の財産としての公共放送のアーカイブス活用というものを、もっと積極的に考えていくべきではないか。

 せめて愛宕山のNHK博物館や川口のスキップシティなどで閲覧させているライブラリーをオンラインでどこでも視聴できるようにするとか(たとえ課金してでも、業者とコラボしてでも)、できそうなところから始めて欲しいものです。

ソーシャルメディア脳標準装備、Xperiaが背負う“負の遺伝子”とは

$ただのオタクと思うなよ 発売初日に手にしながら、つい書くタイミングを逸していたXperiaのレビューを、そろそろまとめておこうと思います。すでに各方面のブログでいろいろ書かれているので、細かな事務的な紹介は省略。まずは1カ月半使っての率直な感想から。

 正直言って、画面の見栄え、操作ボタンなどの扱いやすさでは、最低でもiPhoneと同等、ものによってはそれ以上といっていいでしょう。とくにTwitterやFacebook、mixiなどソーシャルメディアアプリへの対応は、すでにiPhone3GSを凌いでいると、私個人の印象では断言できます。

 目玉アプリの一つ、メールやソーシャルメディアを一括してみることのできるTimescapeは、アイデアこそ面白いものの、まだもう一つ使い慣れないままですが、こまめに情報更新の知らせが入ってくる仕組みは実にスムーズ。通話とメールが中心のこれまでのケータイとは明らかに違う機器であることを明確に主張しています。

 そしてなんと言っても、大きいスクリーンをファインダーに使う800万画素のデジカメ機能。これは映していて気持ちいい。シャッターの位置がちょっとした過ぎるため、縦のアングルで撮る場合手ぶれが気になるのが問題ではありますが、なれればあまり気にならないレベルです。

 これらの性能は、iPhoneを相当研究したんだなという痕跡が見て取れます。


 ただ、これらを思う存分使える時間が、ほんの数時間で終わってしまうのははっきり言ってモバイル機器の致命傷。

 すでにほかのサイトやブログでも指摘されていますが、バッテリー消費は尋常ではありません。この手の問題は確か、FOMA第1号機「N2001」でもありました。仕事の絡みで何度か使ったことがあったので、ある種ノスタルジック。これはドコモの悪しき伝統なのでしょうか。

 iPhoneを初めて手にした2年前にも、バッテリーの持ちの悪さがまず気になったのですが、このXperiaのそれを経験した今では「iPhoneって電池の持ちパネェ!」とさえ思える今日この頃です。


 ドコモもソフトバンクも今週、スマートフォンブームを強く意識した夏向けの新モデルを発表しましたが、このバッテリー問題に明確な解決策を見出さない限り、本格的な「スマートフォン時代」 の訪れは遠いように思います。

 一節にはほおっておくだけなら10日はバッテリーが持つといわれるiPadが、一層クローズアップされることになるかもしれません。さらにiPadと同じ省電力CPUが、6月に発表される(すでにいろいろ漏れているようですが)iPhone4G(仮称)に搭載されるとすれば、アップルの天下は当面揺るがない世が訪れるかもしれません。

 ジョブズの野望を阻止するためにも、ドコモは早急にバッテリー問題の改善を図らなければならないでしょう。

鉄道新ブログ立ち上げのお知らせ

アクセスがグンと増えたこのタイミングを借りて宣伝をw。

実は4月末頃から、鉄道に特化したニュース風エッセイブログ「RAIL@WEB」を立ち上げました。
鉄道に絡んだ、とはいえあまりマニアックになりすぎず、さりとて決してぬるくない独自センスでまとめ上げた記事を次々に挙げていこうと思っておりますので、是非こちらもあわせてご覧いただければありがたいと思っております。

皆様のお越し、心よりお待ちしております。