連載小説『 人形と悪魔 <約束の章> 第七節 』 | ADNOVEL

連載小説『 人形と悪魔 <約束の章> 第七節 』

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■作品タイトル
『 人形と悪魔 <約束の章> 第七節 』

■作者
AZL

■スキルアート
小説

■作品
ところで、おじいさんを騙したあの悪魔はどうしていたのでしょうか。
ここから語られる物語は、誰に知られる事も無く幕を閉じた1匹の悪魔の物語です。

その小悪魔は名前をカロンと言います。
おじいさんの元を去ったカロンは、
おじいさんと供に人間から取り出した
女の子に関する人々の記憶を
力の源にして強大な力を手に入れいていました。

その力はとても大きく、小悪魔カロンは小さい事を理由に
自分の事を散々馬鹿にしてきた他の悪魔達に仕返しをします。

カロンは地上で人間達を苦しめていた強大な悪魔達を懲らしめると
人間が住む世界とは別の世界に追い返してしまいます。

小悪魔カロンの事を笑う悪魔はもう誰もいませんでした。

今となっては地上で最も恐れられるようになった
小悪魔カロンは仲間の悪魔からは恐れられ
妖精達からは地上の悪い悪魔を
追い払ってくれた英雄として崇められています。

しかしそんな事も人間達は一切知りません。

けれでも大悪魔カロンにとっては人間の評判などどうでもよかったのです。
何故なら彼の目的は自分の事を散々馬鹿にしてきた悪魔達に仕返しをする事、
ただそれだけだったからでした。

カロンは自分の目標を達成して満足していました。
いいえ、違います。するはずでした。

彼の中で何かがずっと、引っ掛かっていました。
自分の中にある遠い記憶を探します。

すると、自分の記憶では無い誰かの記憶を見つけました。

その暖かくて心地よい、そしてすこし寂しい記憶は少女に関係する人達の記憶です。
まわりの人間達は彼女に惜しみない愛情を注いでいました。
そしてその愛情は彼女が亡くなってからも変わる事はありませんでした。

しかし、それはもう過去の話です。
この世の中にあの女の子の事を覚えているのはあのおじいさんだけだからです。

孫娘に愛情を人一倍注いでいたのはあのおじいさんはどうしているのでしょうか。
悪魔は少し気になりましたが、知る由もありません。
悪魔カロンの体はあの頃に比べてすっかり変わり果てていました。

ふとおじいさんと一緒にあの女の子の事を
街の人に聞き回った時の事を思い出します。

悪魔は愛情を知りません。
悪魔の体は憎しみや苦しみ、絶望の感情を糧としています。

それでも、悪魔はあの時確かにおじいさんから
温かいもの自分に感じていました。

♪ 悪魔カロン、その力はどこからくる?
人間の憎しみ、苦しみ、絶望?

地上の悪魔の王様カロン、その力はどこからくる?

それは記憶、女の子を愛した人達の優しい気持ち。

彼は悪魔を退治したよ、おかしいよ、おかしいね。
彼も悪魔なのに。絶望を糧とする悪魔なのに。

今は僕等の英雄だ

囁き程の妖精達の歌が聞こえてきました。

悪魔カロンは自分の力の源は絶望の力だと思っていました。
あのおじいさんの絶望、その絶望が自分を強くしたのだと。

でもそれは・・・・・・

大悪魔カロンは自分がおかしくなったのだと思いました。
悪魔とは本来愛情とは無縁の存在だからです。

自分の目的を達成したカロンは他にやる事も無くなったので、
自分の中に流れる変な感情、その正体を突き止める為に
もう一度だけおじいさんの家を訪ねる事にします。


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