中山七里さん作の音楽ミステリー『さよならドビュッシー』『さよならドビュッシーおやすみラフマニノフ』は読んでいましたが、『いつまでもショパン』は未読でした。

先日テレビドラマで『さよならドビュッシー』が放送された記念に、というわけでもないですが、読んでみました。
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ミステリーのオチはもちろん書きませんが、一応この先ネタバレ注意ということで。

物語は、史実である、2010年にポーランド政府専用機墜落、ポーランド大統領ほか搭乗者が亡くなった事件から始まります。※ただし現実には、事件の詳細、事故なのかテロなのか等は不明です。→AFPnews

主人公は、ポーランド人の若きピアニスト、ヤン。
音楽家の家系に生まれた4代目で、ポーランド人にとって特別なものである「ショパン・コンクール」での優勝を周囲から期待され、将来を嘱望されています。

同時にコンクールに出場するピアニストとして、ロシア人、アメリカ人、フランス人、そして日本人などが登場します。

日本人はふたり。一人は盲目の天才少年…という設定だけでなく、その容姿・音楽性の描写などから、辻井伸行さんがモデルであろうと想像できます。

もう一人が、中山氏の音楽ミステリーに毎回登場する岬 洋介、先日のドラマでは東出昌大さんが演じた役です。


これまで読んだ2作品同様、曲や演奏、善玉(笑)の人間に関する掘り下げた描写に大変読み応えと魅力を感じます。

文字だけで、多数登場する(概ね)架空のピアニストの演奏の個性を描き分ける、すごいことです。

一方、ミステリー部分、誰が犯人でどうして?といった部分の共感性、伏線、といった部分は、まぁアッサリしているかな、という感じではあります。

物語の第4部(第四楽章というべきかな?)のラスト、岬のピアノが及ぼした大きな力の部分は「そんなまさかまさか!」な展開ではありますが、読んでいて思わず涙ぐんでしまいました。素晴らしい音楽がそのような力を持つのは絵空事でもないかもしれないな、という希望も込みで。


私は自分が趣味でバイオリンを弾くのですが、ピアノは未経験なので、ショパンに対する思い入れは正直、大きくないのですが、「英雄ポロネーズ」は一番好きなクラシック曲のひとつです。

また、以前読んだ平野啓一郎さんの『葬送』もショパンの生涯を描いた長編小説で、こちらもおすすめです。