鳥コン2010総括とか | ogattiのフライトログ

鳥コン2010総括とか

先週、「Iwataniスペシャル 鳥人間コンテスト2010」が放送されました。

まずは、特別協賛スポンサーである岩谷産業さんをはじめとしたスポンサーの皆様、今年も主催者として多大な尽力をされた読売テレビさん、各方面から大会をサポートをされた自治体や地元企業の皆様、大会を盛り上げて頂いた芸能人、アナウンサーの皆さん、そして何よりも感動を与えてくださった全国のバードマンの皆さんに心から感謝したいです。


私としては、2年ぶりということもあって本当にオンエアが楽しみで、最後まで夢中になって観てしまいました。

滑空機部門では今年も水面ギリギリでの攻防戦が繰り広げられ、チームハマハマの羽ばたき飛行には、本当にスタンディングオベーションをしたくなりました。

タイムトライアル部門では完走が続出する中、優勝したTeamFの文句のつけようのないスピードと旋回がやはり印象的でした。個人的には歴代のフライトの中で最も見応えのある、素晴らしいフライトだったと感じています。

そして、ディスタンス部門。今年は延長された折り返し地点までは到達しなかったですが、プラットホームが見えなくなるところまで飛んでしまう事実に驚嘆し、二宮翔会のユニークな機体やTBTのパイロットが本当に楽しそうに、メンバーに感謝しながら飛んでいるのが印象的でした。



この様に、大満足の内容だったのですが…

今週に入って視聴率の情報が流れると鳥人間チーム、鳥人間ファンには衝撃が走ったようです。
私はやや遅れて3日前に知ったのですが、確かに衝撃でした。

2年ぶりの開催なので、どんなに悪くても2008年を下回ることは無いと思っていたのですが…
まさか1ケタ台になっているとは…


確かに、鳥人間に一度でも関ったことのある人と、一般の視聴者では鳥人間コンテストに対する捉え方に大きな隔たりがあることは十二分に承知しています。
しかし、それを考慮したとしても、今回の鳥人間コンテストは2年のブランクを乗り越え、鳥人間を看板番組として復権させようという作り手の努力や工夫が十分に伝わってくるのが感じられました。


そのうち主要なものを挙げてみると

1.特別協賛スポンサー
岩谷産業さんが80周年記念事業として名乗りを挙げたわけですが、これにより鳥人間がメジャースポーツ中継のような形態(企業名を冠にして開催)になりうることを照明したと思います。また、会場ではエコカー試乗やミネラルウォーター試飲のコーナーが設けられ番組と企業の相乗効果も期待できます。

2.公式テーマソング
今まではイメージソングという位置付けでしたが、GIRL NEXT DOORさんが鳥人間のために曲を作るという試みが採用されました。当然、飛行機が曲の中に直接登場するわけではありませんが、湖上を駆ける人力飛行機の「疾走感」や若い人が何かに打ち込む「清々しさ」を見事に表現した曲だと思います。

3.海外チームの参戦
これは鳥人間が「国際的競技」になり得る可能性を提示し、今までは「自国の中で大会なりフライトなりを行う」という閉鎖的な人力飛行機の世界に一石を投じたと思います。

4.タイムトライアル部門の距離短縮
実はこの変更点が最も良かったと思うのですが、完走チームが増えて「競争」として本来の楽しみが生まれたと言っていいでしょう。チームによって大きく異なる旋回方法も、テレビとして非常に面白い題材だったと感じられ、まさに鳥人間がエンターテイメント性とスポーツ性を兼ね備えた競技になったと思いました。

5.メディアミックス
ytvが協力し、実在の鳥人間チームを取材して描かれたマンガがコミック誌に連載され、単行本も順次発売されています。コミック誌や単行本の帯には鳥人間コンテストの告知も書かれていて、ストーリー内での時期もややシンクロするなど、今までに無かったメディア展開が行われています。



私が本当に残念なのは、これほどの革新的な要素があったのに、視聴率が1ケタ台に落ちてしまったことです。

ここに、最近10年の視聴率の推移をまとめてみましたが
鳥人間コンテスト視聴率の推移 border=
大会の内容によって上下を繰り返しながら長期的には緩やかに減少という感が否めません。

第1回から第32回までの鳥人間コンテストの視聴率が平均で関東15.5%、関西17.7%ということからも、1ケタ台がいかにマズいかが判ります。

番組制作サイドの方々がいかに鳥人間コンテストに情熱を傾けているかは、ここ数年で私もよく理解するに至りました。ytv社長も「鳥人間ファン」と公言されています。しかし、企業やテレビ番組が慈善事業ではないことは当然のことです。
2009年中止の際の説明会で、制作サイドの方が「2年の猶予がある以上、参加者にもそれを感じさせるものを出してほしい」という旨のことをおっしゃっていたと記憶しています。


確かに、今年は良い記録も、ユニークな機体も出ました。ダイダロス型の飛行機であっても、フェアリングのカラーリングが美しいものが多かったような気がします。

しかし、その効果は残念ながら数字には出ませんでした。

悲しいことに、テレビは数字ひとつで番組も出演者もリストラされてしまう世界です。


今後、どういう動きがあるのでしょうか?
もちろん、今はそれを知る由がありません。
しかし、誰であれ最初に襲ってくる不安は「来年開催」の可否でしょう。

今回、2年のブランクが空いてレベルの上がったチームや、じっくり飛行機と向き合えたチームもあるでしょう。ところが、その裏でメンバー数が大幅に減ってしまったチームもあるのが現状です。
それが、鳥人間界では憧れの存在ともいえる大阪府立大チームも例外ではなかったことはとても衝撃的でした。

テレビ局側も「堺・風車の会にまさかのアクシデント発生!」なんて番組内で言ってる場合ではないのです。この部員減少というアクシデントがどうして生じてしまったのか? もちろん、複合的な要因もあるかもしれませんが、真っ先に思い浮かぶのは2009年中止の余波です。

このような背景があるからこそ、毎年開催してほしい。

少なくとも、「学生が多い」「1年ごとに機体製作・技術継承」といった今の鳥人間チームの形態やプロジェクト構造が続く限りは、毎年開催のリズムが崩れた時に参加者側の規模も縮小、最悪の場合、教育機関等で研究目的も兼ねて制作しているチーム以外は消滅という事態も考えられます。

そうなれば「人力飛行機文化」そのものが危機を迎えてしまうでしょう。