「外貨建て一括払い年金保険」は、要注意!! | 52歳で実践アーリーリタイア

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52歳で早期退職し、自分の興味あることについて、過去に考えたことを現代に振り返って検証し、今思ったことを未来で検証するため、ここに書き留めています。

最近、私の知り合いの資産調査を頼まれたのですが、その中に多額の「米ドル建て一括払い年金保険」というのがありました。

 

具体的金融商品は、

 

商品名  「みらいの果実」米ドル建て「つかいながら残すプラン」

                  (年金総額保証付終身年金)

運営会社 「ニッセイ・ウェルス生命」(日本生命の子会社)

募集代理店「みずほ銀行」

 

 

つまり、みずほ銀行の銀行員が、高齢の富裕層顧客に対して販売している保険商品です。

 

数千万円規模で78歳(2年前)の時に契約(ちなみにご本人は米ドルで運用することもよく理解していませんでした→この時点で契約すべきではありません)。

 

積立利率は、 1.1%固定。

受取保証期間 21年

契約初期費用 5.5%!!(1000万円の場合、55万円の費用を支払うことになる)

 

ご本人が亡くなるまでずっと年金感覚で保険料が受け取れ、仮にご本人が(契約4年後の)82歳で亡くなっても最低保証期間の21年は、ご本人の相続人に継続して支払われるので、インフレ考慮せずの米ドル建てベースでは損失はありません。

 

ご本人は、幸いにして1ドル108円の時に契約したので、今は134円ですから、相当な為替差益が発生しています(ただし金利は低い)。

 

しかし、仮に現時点でお金が必要になって解約した場合どうなるでしょう(解約はできないので制度上「一括払い」というらしい)。

 

ニッセイ・ウェルス生命のコールセンターに確認したら、今一括払いにした場合、戻ってくる日本円は20年ぶりの円安のおかげで収支トントン。一方、米ドルベースでは20%以上損失することが判明。つまりよっぽどの為替差益が発生しない限り、一度契約したら絶対解約できないしくみなのです。

 

これならそのまま米国債を購入した方がよっぽど良かった(ちなみにみずほ銀行は米国債は販売していません)。

 

相談された身としては本当に悲しい気分です。

 

米国債で同じ利率(1.1%)で複利運用すれば、米ドルベースではいつでも損せずに売却できます(リスクは米国が破綻した時のみ。当然日本生命の破綻よりもリスクは低い)。

 

この保険商品「みらいの果実」が米国債よりも有利なのは契約したご本人が受取保証期間を超過した99歳を超えて長生きした場合のみ。ちなみに78歳の人が99歳まで生きる確率はたった「3%」。

 

たった3%の長生き確率のためにこの保険を買う理由はあるのでしょうか?

 

本当に悲しい気分です。

 

ちなみに日本生命と同じ大手金融機関シティグループの既発劣後債の参考利回りは税引後で「3.44%」。今の「みらいの果実」は2.64%でさらに契約時に5.5%の手数料(契約時初期費用)が差し引かれます。

 

為替という大きなリスクを背負いつつ米国の高金利を享受したいなら、いつでも解約できる米ドル建て債券を手数料の低いネット証券(楽天やSBIなど)で購入しましょう。私も資産の半分程度は楽天証券経由でドル建て債券で運用しています。わけのわからない超複雑な外貨建て保険は避けましょう。

 

ちなみに契約者ご本人は、解約時の損失があまりにも大きいことから契約の継続を選択。私の試算では1ドル100円程度まで円高が進まないと、解約して普通預金にする場合と比較して損しないと思われるので、そのことも助言しておきました(ちなみにドル建て債券にした場合は20%分の解約損失をカバーできないので検討の余地なし)。

 

*思った通り、苦情も相当多いようです。こんな複雑な商品は、金融リテラシーのない高齢者にそもそも売るべきでないと個人的に思います。

 

 「外貨建て生命保険の相談が増加しています!」(国民生活センター)

 

日弁連も金融庁に対して要注意喚起の勧告をしています。

 

一番問題だと思うのは、メガバンク(みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行)や大手生命保険会社(日本生命、第一生命、明治安田生命など)のような、みんなが信用している大手金融機関がこのような複雑かつ危険な商品を販売していること

 

なので「ふつうの高齢者」が安易に契約してしまうのです。この類いの年金保険は即刻販売中止にすべきではないでないかと思います。

 

そもそも「保険」と名のつく商品のものは、自分が死んだら経済的に困っている人がいる場合に限り、特約一切なしの掛け捨て生命保険で、(非課税扱いになる)死亡保証500万円(×法定相続人)までのものだけで十分ではないかと個人的に思っています。