そして蕎麦屋「打墨庵 加瀬」初体験。本当に寄って良かった。店を出て人懐っこい山羊(メイという名らしい)の相手をしながら、しばし感動の余韻に浸っていたのでした。
蕎麦の美味さはもちろん、立地、エントランス、玄関の扉、床の質感やデザイン、電球、窓の意匠、そしてテーブルなどの家具、供される器の類に至るまで、レストランを構成する全ての要素が私にとっての好みにピッタリで、もう何も言うことはない。
私にとってのパーフェクトなお店でした。
⚪︎料理・味
4名で訪れ、計7620円でした。内訳は昼のウラコース2100円+セイロ2✖️540円+天ぷら盛合せ2280円+青ゼンマイ+セイロうどんに、ビール2杯とノンアルコールビール1本。
昼のウラコースは、そばがき+太切りそば+セイロ+甘味。
蕎麦は、2種とも滑らかでまろやかな今まで食べたことのない食感かつ美味さの蕎麦。このタイプの蕎麦ははじめて。特に太切りの方は、何も付けずにそのまま食べると蕎麦本来の味わいといい、初体験の滑らかさ加減といい、素晴らしい出来映え。
ちゃんと山葵も鮫肌のおろしで生山葵を刷っているなど、本格鮨屋と同じ。ちゃんとした山葵って甘くて辛いんですよね。そしてこの薫りです。
この場合、まずそばだけをすする。そして噛んで食べる。つゆにちょっとつけて食べる、そして山葵を付けて食べる、というように蕎麦のいいろんな味を楽しむと面白いと思います。よく江戸前は噛まずにするっとのみこんで、おしまい的食べ方が粋だそうですが、そんな流儀にはこだわらず、様々な味わい方で楽しむ方が、ずっとグリコのおまけ的で楽しい。
太切りに使うつゆは、ミソとセットでという。
つゆも程好い出汁加減、濃い加減。蕎麦湯も程好い出汁でほんのり白濁し、薄すぎず、濃すぎず。まさに「過ぎたるは猶及ばざるが如し」。
天ぷらは季節の山菜を程好くミックスさせるなどの季節感も演出。薄い上品な衣の本格派の天ぷら。
青ゼンマイもわざとカットせずにそのまま調理させる点などもおもしろい。
最後のあずきの水ようかんも程好い甘みと、崩れてとろける食感もなかなか。
そして器が全て美しく洗練されており、実に芸術的。食べて良し、観て良しの料理です。
○雰囲気
そしてなんとも素晴らしいのはこの館。古民家再生の内装は、実に全てにわたって隙がない。細部に至るまで、芸術的、電球までもが芸術的、窓に嵌めた縞瑪瑙のようなデザインがこれまた実にオシャレ。
館内は広くない、テーブルがせいぜい2卓に大テーブルが一卓と実に狭い。そして枕木のような木材とガラス玉をはめ込んだ床が更に美しい。
総じてこの類いのお店は、蕎麦通なる人たちで賑わっているのかと思いきや、家族連れの地元の方、地元でふらっと寄ったおひとりさまのお父さんなど、地元の方にも愛されている所がこれまた素晴らしい。ちゃんと地元に根を張って商売している所が好印象。
我々は、なかなか立ち寄ることはできませんが、今度はサイクリングついでにこの店お目的にまた再訪したいと思います。食後にのんびり山羊と戯れながら、蕎麦の味を先想い出すというのもなかなかオツなものです。
打墨庵 加瀬 (そば(蕎麦) / 安房鴨川)
昼総合点★★★★★ 5.0