ずっと幅広を推してきたんですがいつのまにか幅46~48㎜みたいなのが当たり前のように出る時代になりました。

(自分は間違って無かったと信じたい)

 

とはいえ幅が広がったことの恩恵はどんなものがあるのでしょうか。

 

 

幅が広いということは

プレイヤー目線で言えば

・糸の上に乗せやすい

これ一択では?

スペックでいうなればトラピーズ有効幅が大きくできるってところでしょうか。

デメリットは

・乗せたくないところに乗る

当然のことですが、余計なところに当たるリスクは上がるわけで

ゴチャ系メインや3Aではそんなに幅いらないよねとなる訳です。

 

 

設計目線だと…

パワー上がるような

なんか安定するような

ブレやすくない?

etc…

なんかよくわからない推測が色々出てきます。

直径を大きくはオフスト機種など前例がありましたが幅は前例が無さ過ぎてだと思います。

 

パワーを出しやすいのは

 

重量を直径方向の端に持っていきたい、上の青い部分に重量を持っていきたいわけです。

となると青い部分が多いほどパワー面では有利ということで幅も広いほうが都合が良くなるわけです。

 

安定性は?

ここからが問題ですね

安定性は幅が広いほうが良いというのは本当でしょうか?

 

左右のヨーヨーの重心(青丸)ストリングの中心(赤丸)の位置関係を表してみました。

ここで気づいていただきたいのが

ヨーヨーは基本的に不安定ということです

ストリングの上にヨーヨーが乗るということは

綱渡りをしている人がフラフラしているのと同じ状態です。

では実際にどのような力が働くのか考えてみます。

ヨーヨーの傾きはじめはストリングを軸に始まるので上の図のような動き方になります。

左右の重心の幅をL、ベアリング半径をα、ヨーヨーの傾きをθします

そして傾いたときにヨーヨー全体のずれをdとしてみます。

するとこのずれ幅dは

αcosθとなります(計算してみて下さい。上手く図に入らなかったのでごめんなさい)

そこで

右に傾く力は

ヨーヨーの重さ

mに中心からの距離をかけるので

m(Lcosθ+d)

反対に左に傾く力は

m(Lcosθ‐d)

なので

ヨーヨーが傾き始めるとより傾こうと

m(Lcosθ+d)‐m(Lcosθ‐d)

=2md

=2mαcosθ

の力がより働こうとすることになります。

ところで

この計算は左右のヨーヨーをバラバラに考えた場合ですが

中心に全重量(重心)として考えた場合

全重量Mすると

傾きによるずれdは同じなので

傾く力は

Mdとなります。

M=2m

d=αcosθ

なので

2mαcosθ

同じ結果なので

傾こうとする力にヨーヨーの幅方向の違いは関係無いという結果になります。

むしろベアリング半径が影響している結果になります。

 

では何が変わるのか

綱渡りに話を戻します。

綱渡りの写真を見るとよく棒を持っているかと思います。

 

 

 

 

 

なぜ持っているかというと慣性モーメントが増えることで

傾きにくく、傾きはじめがゆっくりにできるからです。

ヨーヨーであれば

幅方向に重量配分を増やすことで

傾く方向への慣性モーメントが大きくなります。

結果として傾きがゆっくりになります。

傾く力が働いても変化が少なくなるため

安定しているように感じます。

また傾きの変化量が減らせることでジャイロ効果発生時の

エネルギー損失も減らせることからスリープロスも減るということで

回転力も上がったように感じるということです。

 

少々わかりにくい要素ですがこんな感じで重量配分を見てみると

幅も操作感、安定性の違いにも関わってくる重要な要素だとお分かりいただけるかと思います。

正直ネタ切れ感があることとオープンにできないものが多すぎるので最近はスペースがディスコードの方が良いんじゃないかと思いつつ1年ぶりの更新です多分。

 

 

さて今回の話しは

 

 

「リジェクション」

 

 

元々「カミカゼ」「マジックドロップ」

といったトリックとして存在していたのですが

2010年代後半?ぐらいからコンボ内にガンガン練りこまれた要素の印象です。

 

 

さてトリックやコンボとしては紹介されていますが

最近の設計上でもそれだけ重要視されるポイントになります。

 

 

「リジェクションの原理」

このリジェクション日本語にしたら

「ヨーヨーで糸を発射」

なので

いかにヨーヨーの回転で糸をはじき出すかにかかっています。

 

あれ?滑らないとスリープロスではと思った方は大正解です。

これまでと真逆の発想となります。いかに最小限の抵抗で滑らかに糸を飛ばすか、ヨーヨーの性能、プレイヤーの技能

どちらも問われるエレメントになります。

 

もちろんヨーヨー力学なのでヨーヨー側の目線でいきます

まずは写真をどうぞ

 

リワインド様のこの動画の3:20頃からお借りしました。

 

この親指からヨーヨーにかけてですね、綺麗にストリングがシェイプに当たっています。当たるとヨーヨーに巻き込まれてストリングが右から左にヨーヨーの下側をくぐるように飛んでいきます。

 

つまり、シェイプの形状でかなりリジェクションの特性が変わります。

比較として

C3yoyodesign - Krown

YoYoFactory - Essence

で比べてみます。

線をストリングとして

赤線がベアリングからエッジ部分までの角度

青線がエッジから次にシェイプに触れる角度

となります。

 

角度がついているほどストリングがボディに触れにくくなると言えます。

つまり角度が浅い(線としては縦向き)になっているほどボディとストリングが触れやすいことからリジェクション時の操作が少なくなるということです。

当然小さい操作であればヨーヨーが安定した状態で操作ができることや動画のように細かい動きの中でのリジェクションもやりやすくなると言えます。逆にスリープロスにつながりやすくなるのでパワー面とのバランスなどと合わせてシェイプの設定をする必要があります。

 

もう一点注目する点がストリングの当たり方です。クラウンではシェイプ全体に触れるような当たり方、エッセンスはコントロールエッジに点で触れるような形で接触すると言えます。この当たり方でストリングが滑る段階から飛ばされるまでの変化の仕方を変えることができます。コントロールエッジが角ばっている方が当たった段階で素早くはじかれることが多いかと推測されます。

 

以前にシェイプが回転力に影響することもお話ししましたが、トリックに対する特性にも関わってくるということでわずかな変更でも大きく性能が変化する要素がシェイプです。同じような形に見えてもメーカー様が開発を重ねて変更、改善をしている部分なので色々なヨーヨーを振り比べて楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

書きたいネタはいっぱいありますが検証に必要な時間がどんどん多くなりマニアックなネタばかりになっているこの頃です。いつのまにか復帰された方や、設計やってみようとった方まで多くなっているご様子で(3Dプリンターの影響力はすごい)

 

さて色々なメーカー、ブランドも増えたくさんコレクションされている方も見える中

SNSでたまに見かけるとある内容が気になるのでその話題でも。

 

「A7075だから硬い」

「チタンだから軽い」

さて本当でしょうか?

 

チタンってF1で使うから軽いんじゃないの?

A7075 って航空機で使うから軽くて丈夫でしょ?

 

ぐらいには感じるかもしれませんが結構曖昧だと思われます。

 

そこで大事な要素がタイトルにある3つ

 

「強度と密度と比強度」

 

になります。

強度は技術用語としては引張強度といわれます。

引張試験 - Wikipedia

正しい測定方法はありますが(上の写真みたいなやつ)

思いっきり引っ張ったときに元の形に戻ることができる限界の力

のことを言います。(単位はN/mm2)

 

密度は

単位体積あたりの質量(kg/m3)

とされますがこれで混乱する方多いので

同じ大きさなら密度が大きい方が重たいで十分です。

 

そして比強度

聞きなれない言葉が出てきました。

これが実は大事になります。

先に計算式だけ出しますが

引張強度 ÷ 密度

となります。

上の二つを割り算しただけです。

ところがこれの意味が非常に重要で

「比強度が大きいほど、軽いわりに強い材料」

となります。

 

ではヨーヨーによく使われる材料で計算してみます。

A6061だと

引張強度310

密度2.7

比強度310/2.7=約111

 

これを基準にしてみましょう

A7075 

引張強度570 

密度2.8

比強度570/2.8=203

 

比強度だけで見たら倍も違います。

密度は0.1しか増えないのに対して強度が大きく上がっているということで

より薄く作ることが可能と言えそうです。

 

そしてチタン

引張強度275-735(処理の仕方で大きく変わります)

密度4.5

比強度61~163

あれ?となるかもしれませんがこの数字です。

 

もっと丈夫なチタンは?と言われれば通称64チタン

Ti-6Al-4Vがありますがこれは

引張強度960-1170

密度4.42

比強度217~264

これでやっとA7075超えるぐらいです。

 

数字で見るとチタンのイメージぶち壊しなんですが

リムに使われるステンレスと比べると

SUS304

引張強度520

密度7.93

比強度65.5

 

比強度はチタンと同じぐらいなんですが密度が大きい≒重たい

ということです。

つまりステンレスや鉄と同じぐらい強度が欲しくて軽く作るならチタンが選ばれる

だからF1などで使われるというわけです。

 

話しをヨーヨーに戻して。

A7075は強度のわりにものすごく軽いのはこの計算で言えるはずです。

恐らく同じ形状でより硬い感触を出すにも選択肢に入ると思います。

 

そしてチタン

鉄系の材料に対してはより軽くできるとは言えますが

アルミ系がメインのヨーヨーにとっては決して軽い材料では無い言えそうです。

しかしながらステンレス並み~それ以上の強度でありながらそれより軽いことは

とんでもない武器になります。

 

基本形状は薄く作れることで軽くできリムにはその密度で十分に重量を与えられることが可能なためバイメタル以上の性能にもできるモノメタルが可能となります。

 

元々の用途からくるイメージもあるので中々難しい要素でもありますが

きちんと知っておくと見方が変わって面白いかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回はその57の続きみたいな内容です。

投げ出しとは逆にキャッチですね。

本当はバインド操作時も考慮する必要がありますがプレイヤーの技術的な要素も含むのでスルーしてストリングスの巻き上げに対して考えてみます。

実のところ公式みたいなのがあるのでそれをそのまま引用します。

上の図みたいな感じでプーリー本体が駆動する場合です。

ちょっとカウンターウェイトにも見えるような気もしてきました。

プーリー機構の慣性モーメント計算式として

機構全体の慣性モーメント(Ia)=プーリーの慣性モーメント(I)+1/16×負荷質量(M)×プーリーの半径の2乗(r²)

これをヨーヨーに当てはめると

おもり側が固定されてヨーヨー本体が巻き上がといったか感じになるので

プーリーの場合はプーリー半径=巻き上げ半径なのでヨーヨーに直すと

ベアリングの半径もしくはパッド半径とみなせるので

ストリング巻き上げ時の慣性モーメント(Ia)=ヨーヨーの本体の慣性モーメント(I)+1/16×ヨーヨー本体の質量(m)×ベアリング半径の2乗(r²)

Ia=I+1/16×mr²

となります。

結果としては慣性モーメントとだけでなくベアリング径と本体質量の影響も受けます。

基本的には慣性モーメントが大きいほどキャッチ時に残存しているエネルギーが大きかったり、キャッチ前の回転数など投げ出しと比べて条件が付けにくいのですが

基本的には慣性モーメントが大きい、質量が大きいほどゆっくり戻ってきます。

しかしながら投げ出し、キャッチ時どちらも単純に慣性モーメントが大小で結果が決まるわけではなく慣性モーメント+重量、ベアリング径の要素となることからこれを利用して投げ出し、キャッチ時のフィーリングをコントロールすることも可能です。

 

余談ですがヨーヨーのフィーリングを考えていくと人の手に伝わる感触はほとんどストリングに加わる張力でありその変化の仕方といえます。これを踏まえるとちょっと面白いことができたりしますし、プレイヤーによって同じヨーヨーでも感じ方が違う理由になったりします。

 

 

 

 

 今回はボールベアリングの話。

 ヨーヨーだとナイロンベアリングや固定軸もありますが

一番メジャーなのがボールベアリングだと思います。

しかもラジコンやミニ四駆に続いて普通ではない使われ方をするのがヨーヨーです。

いわゆるドライベアリング。油分を一切取り除いてより抵抗を無くした状態で使用されます。

確かにこの油分の抵抗、某ベアリングメーカーで計算例があったのですがかなり大きな数字になります。回転数が上がればなおのことです。この抵抗を取り除けばよりスリープ時間を確保できるのは間違い無いのですが、本来ボールベアリングはこの状況での使用は想定されていません。

 

 そこはもう仕方がないということで、最近気になることがありまして。

SNSを眺めているとやたら「ベアリングが死んだ」「ガリってどうしようもない」

といった内容が多くみられるようになったことです。自分自身そんなことないしメンテナンスの問題なのかと思っていましたが、ふと感じたことがありまして。

 

「良いベアリングと言われるものほど突然回らなくなる」

 

のでは?と思ってちょっと調べてみました。

ベアリングの規格も色々ありまして


もうわけ分からない感じかと思います。

なんとなく見たことあるのはABEC規格でしょうか。

末尾の数字が大きいほど高精度ということで実際が11とかもあるみたいです。

DifコンケイブでABEC7クラス
NSKベアリングも5/1000㎜公差とのことなので
同じくABEC7以上、インナー、アウターレースの径まで子の精度ならABEC9クラスの高精度だと思います。

実際5/1000㎜ 5μm、ベアリングの振れ幅は平均1μm程度とのことからちょっとした埃や傷で十分トラブルになることは予想できます。とはいえこまで頻繁に洗浄することも無ければ

再起不能になることもあまり無いと思っています。

ただ精度が高いものほど振動も無くスムーズに回りますが無駄な隙間が少ない分埃やわずかな変形に対してもシビアなことは間違いないかと思われます。

そしてもう一つ気になっていたことが下の写真(画質悪いですが)

(左から国産凹型、センタートラック、フラットベアリング)

 良く見ていただきたいのがアウターレースの厚みとボールの大きさです。

同じCサイズベアリングでもこの差です。フラットベアリング以外は凹ませる厚さが必要なため

アウターレースの厚み分ボールを小さくする必要があります。

 ボールが小さくなった分だけ耐荷重能力や圧痕等の傷が生じた際に抵抗が大きくなりやすいという問題が生じます。またボールが小さい方が同材料であれば摩耗も早くなります。もしかしたら精度よりもこの問題が大きいかもしれません。これに関しては性能とのトレードオフということである程度致し方ない要素だと思われます。とはいえ通常使用ではそこまでの差は出ないはずなので寿命まで使い切れたら相当練習したと思って良いのではないでしょうか。

 ただどこかにぶつけた、思いっきりスカッたみたいなことがあれば予期しない荷重が加わった可能性もあるのでその時は良いベアリングほど注意してチェックしてもらった方が良いかもしれません。後外すとき本当に丁寧に行うことをお勧めします。


 

 続いてはギャップ幅と投げ出し、ストリングスが伸びきるまでの変化も考えてみます。

ストリングスの太さも考慮して考える必要があるのでちょっとそこから考えます。

一般販売されている物の太さが直径2㎜前後

Cベアリングの幅が4.7625㎜、実際のギャップとしては4.3~4.7㎜程度でしょうか。

後はパッドの厚さとパッドの深さなんですが大体ギャップ幅と同じかやや深いぐらいのものが多いかと思います。とりあえずギャップ幅と同じと考えてみましょう。

適当に持ってきたシェイプの画像です。

パッドに触れるまでストリングを巻き付けるには何周巻く必要があるでしょうか。

単純にギャップ幅÷ストリングの太さ

なので4.5÷約2㎜=2.25

大体2周と少し、凹型ベアリングでも多少増えますが大体3周、3本分も幅があればパッドに触れる計算になります。

3本分絡む時と言えば

バインドする時

なのでこの幅の設定って絶妙なんですね。

3本目がパッドに触れて食い込むと戻ってくる素晴らしい発明です。

これが今度スローするときにはちょっと別の問題になります。

ストリングの長さ全てが回転力として伝わらなくなります。

前回の計算式が当てはまるのは

パッドとストリングがしっかりと当たってヨーヨーの回転運動として伝わっている時だけです。

(となると前回の計算ってパッドの径で換算した方が良いのかもしれませんが)

つまりパッドに触れなくなると

ヨーヨーはただ投げた方向に飛んでいくだけです。

 それを踏まえて実際にスロー時の引っ張られ感は

投げる→ヨーヨーに回転が加わりつつストリングがほどける区間→②パッドとストリングの接触が減少する区間→③パッドとストリングが完全に離れている区間→④ストリングが伸び切る瞬間

と変化するはずです。

ストリングに加わる張力の強さと合わせて張力が発生する時間も影響するのでこれが長いほど引っ張られ感は感じます。

またギャップが狭い、ストリングが太くなるほどストリング同士、パッドとの摩擦からくる抵抗感も無視できない要素になります。

番号に合わせて要素を踏まえていくと

①の時(巻きついたストリングがほどける段階)

慣性モーメントが大きい(回転力大きい)

実重量が重たい

ストリングが細い、もしくは長い

ベアリングが小さい

ほど引っ張られ感(張力)が強くなる、もしくは張力が長く発生します。

②の時(パッドからストリングが離れていく段階)

慣性モーメントが大きい(回転力大きい)

パッドの摩擦が強い

ギャップが狭い

ストリングが太い

程ここでも張力が残りやすくなるはずです。

ここで大きな差はストリングの太さの条件が逆転することです。

太いほどパッドにストリングが食い込むことになるので

摩擦力の差が表れやすくなります。

③の時(パッドとストリングが完全に離れた段階)

ここは折り返したストリングが抜ける状況になります。

ここでの最大の違いは前に行ったバインド操作の折り返しが大きい(深い)ほど

この区間が大きくなります。この段階は完全に回転力として伝わらないのでエネルギーとしても損失になります。

④の時(伸びきった瞬間)

実重量が重い

慣性モーメントが小さい

ストリングが固い

ほど衝撃が強くなります。

 

投げ出しのフィーリングは結構な要素が絡んでくるので単純に回るようにすることよりも難しいところですね。各メーカーこの辺りも上手に設計されていると思うので色々比べて見ても面白いですね。

 

 

 

このまま書かないとまた何年後になりそうなので続きを

前回の内容を一言で表すと

慣性モーメントが大きい=良く回る

となります。

一般的にはモノメタル<バイメタル(インナーリム)<バイメタル(アウターリム)

ミッドシップリムと、プラ系に関してはまぁなんともってところです。

 

形状で比較すると

インバース<ストレート<ラウンド
 

ステップ形状になると
ストレート<インバース<ラウンド

となる傾向なんですがそれはまたの機会があればにします。

 

さてこの「良く回る」

この時の回転数はどうなるでしょうか。

 

慣性モーメントが大きくなると回りにくく止まりにくい性質になるということから

 

同じ力で投げれば

回転数は少なくなります

 

これで「良く回る≠高回転で回る」

ということが分かるんですけどまぁこれが中々伝わりません。

なんで回転数が少ないのにスリープ時間が長いの?って言われるわけです。
これは摩擦を含めたエネルギー損失の問題になってきますこの辺りはエッジについての所で少し触れていますが1分当たりの回転数×エッジの円周とベアリングの1回転当たり摩擦抵抗

等から回転数が多い方が損失が多くなる。という訳で良く回るようにするにはいかにゆっくり長く回せるかが基本になります。

 

さて話を戻して。

 

メンドクサイ計算が続きますが

いわゆる投げる時の運動方程式などを考えます。

単純にヨーヨーを下に降ろした時を考えます(投げた初速は無しとしてみます)

下に向かって落ちるヨーヨーとそれを支える糸

実際は回りながら落ちていくので落ちようとする力と、回転による糸の伸びでおこる速度変化が一致しなくなります。このずれが糸に加わる張力(テンション)として指に伝わります。

この差が大きいほど「引っ張られる感じがする=投げ出しが重く感じる」

理由になります。

 

ここからは計算してみましょう。

まずは力は質量m×加速度a

ヨーヨーに加わる重力はによる力は質量m×重力g

そしてストリングが支える力はテンションとしてTとしてみます

するともともとの質量による力と回転による加速運動を合わせることになるので

T=ma+mg
となります。

このaの値はヨーヨーの回転によるストリングスのほどける速さに影響されるのでそれを計算します。この動きを並進運動というのですが検索してもらえればより詳しい解説が見つかるかと思います。

 

ここでヨーヨーの回転の加速(角加速度α)とベアリングの半径r、慣性モーメントをIとすると

運動方程式として
Iα=Tr

となります

ここから

αとaは

rα=aの関係になるので

T=aI/r²

と慣性モーメントからもストリングスの張力が計算できました。

つまり慣性モーメントに比例してストリングスの張力が強くなるということです。

ちなみにここから

T=aI/r²=ma+mg

として

a= g/( I/mr²-1)

となるので

慣性モーメントが大きくなるほどゆっくり投げ出されることになります。

ここからも本来落ちる速さと実際の速度のズレが起きることが分かります。

 

さらにこの結果を

rα=aに入れて

rα=g/( I/mr²-1)

α=g/〔r( I/mr²-1)〕

慣性モーメントが大きくなるほど分母が大きくなるため

角加速度は慣性モーメントが大きいほど小さくなることから

慣性モーメントが大きくなるほど回転は加速しにくい

つまり最終的な回転はゆっくりになるため回転数は低くなります

 

ここに投げ出しの初速を加えると実際の投げ出しの力含めた計算ができますが

よりめんどくさいのと結果は同じなのでこれで勘弁してください。

 

余談ですが投げ出しで一番軽くなるのはスカッた時ですね。今の計算無視してストリングスのテンションほぼ0でそのまま飛んでいきますから。
 

 

 

 

 

前回の更新が2017年…
今更ブログって感じにもなってますが、実際のところネタはあっても公開できないネタが多くて困ります。

この数年で3Dプリンタ―も普及して、自作する方も多くなり、国内メーカー、ブランドも増えたり減ったりする中、こんな内容を書くまでも無く専門知識を持った方が色々新しいものを作り出して下さるのでもう良いかと思ってました。

 

先日某SNSでのやりとりで「とにかく良く回転するのが大前提」

「回転力を上げて投げ出しを速くして欲しい」という無茶なオーダーをされる。といった話題で盛り上がりました。

以前から言われるあるあるなんですが、「軽いのに良く回る」よりたちが悪いお題です。

投げ出しに関する要素は色々ありますが、まず一番に影響するのが

「慣性モーメント」
慣性は慣性の法則の「慣性」ということで

物体に外部から力がはたらかないとき、または、はたらいていてもその合力が 0 であるとき、静止している物体は静止し続け、運動している物体はそのまま等速度運動(等速直線運動)を続ける。

にモーメントつまり回転運動ということで

回転していないものは静止し続け、回転しているものは等角速度で回り続ける

つまり同じ回転数で回転し続けるということで

 

慣性モーメントが大きいものほど回りにくく、止まりにくい

 

という話です。この辺りはリワインドさんのシュトパン特集でめっちゃ語られてるのでご参照ください。

一応慣性モーメントの基本公式は

 

質量×半径2[kg・m2

 

となります。

実際は形状、体積の影響を含めて計算する必要がありますが

基本的に質量に比例し、半径の二乗に比例して増える。

大きいヨーヨーほどとりあえず良く回るのはこの性質からです。
1g増やすより直径1㎜増やす方が慣性モーメントが大きくなるということです。

 

バイメタル機種が基本的にリムを最外周に設計されるのはこのためです。

形状の部分を省略してしまいましたが、同じ直径のヨーヨーなら少しでも外周に重量を置くことで慣性モーメントが大きくなるという理屈です。

なので「軽いのに良く回る」意外となんとかなるものなんですが

 

投げ出しとなるとこの慣性モーメントを大きくすることが地味に問題になってくる訳です。

ちょっと長くなったので次に持ち越します。

 

 

 

 

 

 

時間があるうちにどんどん更新しないとというわけでは無いですが

なんだか某メーカーさんの冊子にDシリーズの図面がのるとかで。

最近は、ヨーヨーを見ると設計者が分かるなんて具合にマニアックな人が若干名いるそうで

まぁ恐ろしいw

 

ということで今回も画像なしです。ただその冊子を見ながら読んでもらって察してもらえると面白いかもしれないお話です。

 

よくいわれる回転力も慣性モーメントなんですが立体であればこの慣性モーメントは3方向になります。

 

あっ、いきなりなんのことか分からない人続出な予感。

 やっぱり画像いりますね。

ヨーヨーの場合は3方向とはいえ2種類の慣性モーメントが存在します。

また意味不明な発言ですが簡単に言えば回転そのものに関わる慣性モーメント

(オレンジ矢印)

 

もう一つは傾きに関係する慣性モーメント

(ピンク矢印)

 

になります。

 

本当はピンク矢印の上下と左右方向の回転別々に慣性モーメントは計算できますが

ヨーヨーの場合基本的に同じ数値になります。

 

つまりオレンジ矢印の慣性モーメントが大きい場合、スリープ力が強い・ジャイロ効果の影響が強いということになり、ピンク矢印の慣性モーメントが大きい場合、ジャイロ効果の有無にかかわらず傾きにくい特性を持つ機種、回転が落ちても傾きにくい粘り強い特性になると言えます。

 

さてここで冊子を持った方にちょっとヒント。数値化は難しいですが、図面を上半分だけ紙にトレースして切り出して下さい。(さすがに冊子切るの勿体ないので)

それで二か所で吊るして交点出せばその質点が見えるようになります。

参考までに下の動画見てください。

 

https://www.youtube.com/watch?v=SOmq0wLHWQs

 

 

 

 

そうするとその機種のバランス・縦横比が見えてくるので

どの方向の慣性モーメントが優位なのか分かってきます。
(バイメタルは…重さの違う紙とか工夫いりますけど)

その結果がどうなるのかは少し考えてみてください。

 

手書きでこんなヨーヨー作ってみたいなんて人もアナログな方法ですがこれで重心位置を出してみると自分の想像通りか分かっておもしろいのでやってみてください。

 

CADとCAEがあれば全部数値化されちゃうんですけどね。

さて、すっかり更新止まってます。だって忙しい…じゃなくてオフレコ過ぎて書けないこと多すぎなだけです。
 

とはいえDシリーズやリャマさんとのコラボなどのおかげで一つの疑問点にたどり着いたのが今回の話。

 

「ローエッジは本当に偉いのか」

今回は画像無いので気になる機種はググってください。

 

自分が復帰する前も含め知っている範囲でブレイクスルーになってそうなものを考えると

 

まずは「バインド」

 

次が「金リム」 (バインドが後?)

 

それで

 

「フルメタル」

 

が続くと思ったんですけど、多分フルメタルがすごいというよりも、

YYFの07-888やYYRのスターダストなどフルメタルに合わせてエッジが極端に下がった

 

「ローエッジ」

 

が合わせて登場した結果

 

「フルメタル」が良いものといったイメージに繋がっていったのかなと思います。

なにより国内外ほぼ同時期にローエッジ機種が出始めたのも面白いところです。

 

(正直、フルメタルのメリットって小ロット生産しやすいだけだしそもそも金リムもバイメタルも…)

 

では本題のローエッジへ。

最近の機種はほぼ間違いなくローエッジなのでローエッジのメリットなんて分からないなんて方もいそうですがまずこれです。

 

ストリングスが当たりにくい、当たっても減速しにくい⇒スリープロスが少ない

 

金リムじゃなくても十分回るようになるし、傾きにくい。

外周に重量が乗せにくいとは言いますが損失が少ない方がありがたいといった結果でしょう。

 

ところがバイメタルが出たころからちょっと話が変わってきます。

 

バイメタル(金リム)=慣性モーメント増加⇒めっちゃ回る、傾きにくい⇒操作性は落ちる

 

それとリジェクション系のトリックが出てきたこともあるのかもしれませんが

エッジが低すぎると扱いずらい面が出てきたり出てこなかったりという話になってきたように思います。

 

個人的にはDベアで限界までエッジ下げるとここが問題になった経験が。

そう思うとバイメタル機種やDベアでは多少エッジが高く見える機種が出てくるようになり

それらが好評だったりします。(YYRドラウプニル、フラグメント、YYFエッジなど)

 

まとめていくとエッジの位置や形状はスリープロスに直結するのでローエッジが基本になります。

ところがエッジは傾きのコントロールやリジェクションやストリングスを飛ばすトリックにも関係することから操作性とスリープ力のバランスが求められます。スリープ力はバイメタルや設計ノウハウの蓄積でカバーできる分だけ、操作性に対する要求が増えてきているのが現状ではないかと思います。

 

そんなわけでローエッジもただ下げれば良い訳じゃないのでいつも悩むところです。