盗血症候群の検査 シャントのしびれ・痛み・冷感 | 日々是シャント 〜群馬のシャント専門医のブログ〜

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透析用バスキュラーアクセス(いわゆるシャント)専門医が日々の透析からシャント、アクセスそして腎移植までの相談内容を分かりやすく?詳しく紹介していくブログです。

シャントのしびれ・痛み・冷感の症状のあるこの患者様の最初の検査に、まずは血管造影を行いました。

動脈の用語、走行の解説は
動脈についてはこちらからどうぞ
動脈と静脈の位置関係はこちらから
静脈についてはこちらからどうぞ
をご確認ください。



シャントは大きすぎも小さすぎもせず普通の良いシャント。
本幹の狭窄などもありません。吻合部の経も至って普通。

ただし、末梢への動脈血はシャントによってかなり減弱しておりました。

手のひらの血流を見てみたところ

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ご覧のように親指側を本来栄養すべき血管である橈骨動脈の血流は途絶しており、
小指側からの尺骨動脈がそれをまかなっております…

が造影剤は薄く、血流は弱い

まったく同じ条件で、今度は
肘のシャントを用手的に圧迫し、
シャント血流をなくして撮影

してみたところ

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小指側の血管、
尺骨動脈の血流が明らかに増加
したのがよくわかります。


つまり、

①動脈硬化やシャント作成痕などの血管荒廃によって指先への血流が低下していたため
②シャントが多量の血流であるわけではないが、ただでさえ少ない動脈血を盗んで
③指先など末梢への血液が不足したため、


痛みが生じたわけです。
血が流れないからそれは冷たく感じます。

透析中にひどい、というのは一つのキーワードで、本当かどうかは分かりませんが、
ポンプでシャントから血液を吸い出すためにさらに動脈血が減るからだ、と言われています。

皆さん思い出してください。

シャントとは、もともとは
短絡:ショートカットという意味ですよ!


以上で診断は終了です。
(CTSなども考えますが)

次回は実際の治療方針についてお話しします。