特殊な3Dプリンターでヒトの細胞を組み立てて人工血管を作り、人工透析を受けている患者に移植する臨床研究の計画を佐賀大学の研究グループが国に提出したことが関係者への取材でわかりました。3Dプリンターで細胞だけで作った人工血管をヒトに移植するのは世界初とみられ、グループは計画が受理されればこの秋にも臨床研究を始めることにしています。
関係者によりますと臨床研究の計画を提出したのは、佐賀大学医学部の中山功一教授と伊藤学助教らの研究グループです。
グループではヒトの細胞を培養し「バイオ3Dプリンター」と呼ばれる特殊な装置で立体的に組み立て人工血管を作ることに成功し、半年間ブタに移植したところ、通常の血管として機能するだけでなく従来の樹脂製の人工血管と比べて丈夫で、拒絶反応のリスクが少ないことなどが確認されたということです。
関係者によりますとヒトへ移植した場合の安全性を確認するため、国が認定した外部の委員会と学内の審査委員会の承認を得て、人工透析を受けている患者に移植する臨床研究の計画を22日、国に提出したということです。
3Dプリンターによって細胞だけで作った人工血管をヒトに移植するのは世界初とみられるということです。
人工透析の患者は繰り返し針を刺すため血管が傷みやすく、細胞から作った人工血管を使うことで負担軽減につながると期待され、グループは計画が受理されれば患者を募り、ことし秋にも臨床研究を始めることにしています。
この人工血管を作り出すのは中山教授らが独自に開発した「バイオ3Dプリンター」です。
プリンターではまず培養皿に並ぶ穴に管を差し込み、穴の中にある細胞の固まりを取り出します。
この管の先にあるのが直径0.5ミリほどの細胞の固まりです。
そしてもう一つの工夫が、この細い針を並べた小さな「剣山」のような部品です。
プリンターにセットされた剣山に細胞の固まりを規則正しく刺していき、チューブ状の形に組み上げます。
そのあと1か月から2か月ほどかけて液体の中で培養を続け、最後に剣山を抜きます。
このときには細胞の固まりどうしがくっついて血管の形ができているのです。
直径は7ミリほど。
本物の血管と同じような弾力があります。
管の内側に血圧のおよそ10倍の圧力をかけても耐えられるということです。
人工血管をブタに移植した実験では通常の血管と同じように血液がとおり、半年にわたって機能することが確認され、グループはヒトに移植する臨床研究に向け準備を進めてきました。