09年5月9日、国内初の新型インフルエンザ患者が確認された。しかし、隔離入院という厳しい措置を受けながら、患者自身が診断結果を知らされたのは、舛添要一厚生労働相(当時)の会見後。成田赤十字病院(千葉県成田市)で当時、診療を担当した野口博史・感染症科部長(61)は、最も弱い立場の患者が置き去りにされたことを今も悔やんでいる。【関東晋慈】

 前日の8日、カナダから米国経由で成田空港に到着した大阪府立高校の教諭(当時46歳)と生徒らは機内検疫で体調不良を訴え、同病院に隔離された。9日午前6時ごろ、教諭と男子生徒2人の感染が確定したとの情報が病院にも届いた。しかし、間もなく病院に到着した厚労省職員から検査結果が本人に伝えられることはなかった。

 「どうなっているんですか」。午前9時ごろ、病院の看護師が教諭から問いただされた。教諭は、会見をテレビで見た知人の電話で初めて、自分の診断結果を知らされた。

 看護師から連絡を受けた野口医師は担当医と隔離病室へ駆け付けた。「検査の結果を伝えるのが遅れ、申し訳ありません」。診断結果という最も大切な情報を伝えられるべき患者の権利を守れなかったとの思いから、野口医師は教諭に頭を下げ続けた。10分後、教諭は硬い表情で「分かりました」と一言だけ返した。

 検疫法は感染者の隔離措置を検疫所長の権限としている。患者への通知については明記していないが、検疫所が「隔離決定書」を患者に交付する慣例になっている。この日、成田空港検疫所職員が決定書を教諭に手渡したのは、さらに遅れて昼前だった。

 同検疫所の当時の担当者は「面会した職員は患者から非難を受けた。検疫所から直接患者本人に伝える方法をとれなかったことを反省している」と話す。

 10年3月中旬、野口医師は退院以来初めて教諭に電話した。まず「1年前は大変でしたね」とねぎらった。そして謝った。「診断結果を伝えられなかったことは、今でも忘れられない。患者さん(教諭)も同じ気持ちのようだった」と振り返る。

 41年ぶりに発生した新型インフルエンザを巡って当初、住民への情報提供の不備や過度な警戒など課題を残した。1年がたち国内の流行は収まっているが、今後新たな流行を警戒すべきだとの専門家の声もある。

 厚労省の塚原太郎・大臣官房参事官は「混乱の中で患者個人への配慮を欠いてしまった。教訓として、同じような極限状態が発生した場合、確実な情報伝達ができるようにしたい」と話す。

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