日曜日の夕幕のひととき、雪村いづみに誘われ、佐野元春&The Hobo King Bandのステージを楽しんだ。4月27日、於 Billboard Live TOKYO

 なぜ雪村いづみと? 佐野と雪村はアルバム『トーキョー・シック』(ビクターエンタテインメント)を出している仲ですからね。もちろんタイトル曲の作詞作曲は佐野自身による(2012年11月26日付け当ブログをご参照ください)。

 ふたりのコラボは、20歳も年長の雪村が、佐野の才能、センスに惚れ込み、ファンレターを書いたことから始まった。雪村がこの類いの手紙をしたためたのは、生まれて初めてのことだという。

 といういきさつだから、雪村は演奏が始まる前から浮き浮きしていた。

 私にとって佐野のライブは初見参である。佐野は、ギターを抱え淡々と歌い次いでいく。キーボードの前にすわっての曲もいくつかあった。

 演奏に客席を煽り立てる風情はこれっぽっちもない。ひとことで言えばクールだ。それも過剰な情緒を抑えるというのと、いわゆるカッコイイというのと、二重の意味において、だ。

 ひとことで言えばurbane。この単語もまた、洗練されたというのと鄭重なというのとふたつの意味を持つ。佐野の詞・曲・演奏はその両方をものの見事に体現していると感じ入った。

 バンドにはドラムス、ベース、キーボードのほかチェロも加わっていた。演奏者は笠原あやのさん。格別目立っているわけではないけれど、佐野の音楽的色彩を蔭で支えているという印象を持った。

 演奏はおよそ1時間15分、全16曲。どの曲にも佐野が鋭く切りとった都会の光景、あるいは都会人の心象風景が垣間見える。たとえば「君と往く路」「荒地の何処かに」とか。

 曲調ということでは、「希望」などにカントリー&ウエスタンと通じ合っている部分が感じられなくもなかった。

 そこが私には心地よかったし、もしかしたら雪村も同じ心持だったかもしれない。

 今から半世紀以上前、1953年デビュー当時、次々、彼女が放ったヒット曲「想い出のワルツ」「ジャンバラヤ」「はるかなる山の呼び声」などは、全米ヒットチャートを賑わせたものばかりだが、それらの曲に通底するのは、ほかならぬC&W調だったからだ。

 音楽的共鳴ということでは、これはそのごく一部分かもしれないけれど、ふたりはカントリー&ウエスタンというところでも通じ合ったのではなかろうか。

 世代を超えての音楽的交流について、私の想像力はどこまでもはばたいていく。これも佐野元春のライブを雪村いづみと聴きにいった功徳のひとつにちがいない。



アルバム「トーキョー・シック/佐野元春&雪村いづみ」。
写真:アライテツヤ





となりの席がTBSラジオでおなじみの大沢悠里さん(いちばん左)でした。そのとなりから雪村いづみ、筆者、雪村の妹 朝比奈愛子さん。実は佐野、雪村、私の3ショットも撮ったのですが、私家版のためアップ出来ず残念。