『見上げてごらん夜の星を』ってどんなミュージカル? | 安倍寧オフィシャルブログ「好奇心をポケットに入れて」Powered by Ameba

『見上げてごらん夜の星を』ってどんなミュージカル?

 きのうの続きでミュージカル『見上げてごらん夜の星を』の話題を―。

 この作品が舞台にかけられたのは1969年7月のこと、大阪労音の主催だった。

 労音の正式名称は勤労者音楽協議会、働く者たちに安い入場料で質の高い音楽をというスローガンのもと、全国各地で結成された鑑賞団体である。

 とくに大阪労音には浅野翼(1929~99)という敏腕プロデューサーがいて、次々と新機軸の公演をおこない注目を浴びていた。

 このミュージカルもそのひとつで、出演者は、当時テレビで人気の高かったコーラス・グループの伊藤素道とリリオ・リズム・エアーズ、往年の宝塚の大スター橘薫らだった。

 伊藤らリリオの面々が扮したのは、夜間高校の少年たちである。時は昭和30年代半ば、ちょうど日本が高度経済成長期に足を踏み入れたころのこと。昼間働いてくれる夜間高校生は、企業にとって欠かせない労働力だった。

 もっとも、リリオのメンバーたちはすでに20歳代中頃だったから、かなり老けた高校生に見えたけれども。

 夜間高校生という題材に目をつけた作・作詞・演出の永六輔の“時代を読む力”に改めて感心させられる。

 この労音発のヒット・ミュージカルに食指を動かしたのが商業劇場の梅田コマだった。ついでに主役も九ちゃん、すなわち坂本九にスウィッチされることになったわけだ。

 物語展開としては、同じ机を昼の授業では女子高校生、夜のクラスでは働く男子高校生が使っているという設定がうまい。

 この作品、64年、LP化され、のちにCDにもなっている。30楽曲収められているが、バラッドありコミック・ソングありで大いに楽しめる。

 アルバムでは舞台で橘薫が演じた母親役を越路吹雪が相つとめている。橘が亡くなってしまったからだ。

 さすが越路、情感たっぷりに歌っている。しかし、都会で働きながら勉学に勤しむ息子を思う田舎のお袋さんにしては、舶来風過ぎなくもない。

逆説的に越路の洋風キャラクターを浮き彫りにする歌いぶりだと思った。

 それはともかく、50年前にこれだけすぐれた楽曲を満載したミュージカルが作られていたことは、驚くに値する。

 なお、同じく坂本九主演で映画化されている(松竹)。DVDもあり。

 また「見上げてごらん夜の星を」をカヴァーしている歌手は、森進一、桑田佳祐、氷川きよし、平井堅とあまたいるようだ。


http://www.allstaff.co.jp/ticket2.html


九ちゃんを中心にしたアルバム「見上げてごらん夜の星を」。
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