皆さん、ことしの“聴き初め”はどんな曲でしたか? | 安倍寧オフィシャルブログ「好奇心をポケットに入れて」Powered by Ameba

皆さん、ことしの“聴き初め”はどんな曲でしたか?

 あすは早くも七草。今更、新年のご挨拶は間が抜けていると思いますが、遅蒔きながら、ことしもよろしくお付き合いくださるようお願い申し上げます。

 話は元旦に戻りますが、ことし最初に聴く音楽は何にしたらよいのか、結構迷いました。午前9時ぐらいの話なのですが、、、、。クラシックがいいのかポピュラーがいいのかから始まりましてね。

 私のいちばん好きなジャンル・女性ジャズ・ヴォーカルはいちばんそぐわないような気がして(エラ・フィッツシェラルドだってサラ・ヴォーンだって夜のとばりが降りて来ない前は、、、、)。これだけは初めから避けることにしたものの、なかなか名案が思いつかない。

 純邦楽というか日本の古典音楽に多少の知識があれば、案外たやすく解決がついたのかもしれませんね。

 いつ聴いても清新の気にあふれ、かつ適度の緊張感が迫って来る音楽がいい。もっとも重厚長大過ぎても困ります。

 厳粛であって厳粛になり過ぎず、高揚感があって浮かれ過ぎず、ほどのよい祝祭性を味合わせてくれる音楽―。

 そう、ロマンティシズムというスパイスが効いていると云うことなしです。

 となると、やはりクラシック音楽か?人によってはモーツアルトあるいはワグナー、マーラーのなにかを思い浮かべることでしょう。

 こういう時は直感的独断(あるいは独断的直感)で行くしかない。

 私が選んだのは、日頃まったく縁のないベートーヴェン。曲目は交響曲第一番ハ長調。演奏はウィルへルム・フルトヴェングラー指揮によるウィーン・フィルハーモニー管弦楽団。1952年の録音です。(EMI)

なぜベートーヴェンでフルトヴェングラー?心の片隅のどこかで近代から現代への潮流のなかでの正統性にこだわったのかもしれません。

 同じベートーヴェンの交響曲でも第九は歳末の印象が強過ぎる。ならば年明けは第一番でというぐらいしか根拠?はありませんでした。

 格調、親密さなどすべて想定通りで、私はひとり満足しました。

 しかし、第一番以上に心惹かれたのは、同じCDに入っていた第四番変ロ長調です。迫力も軽快さも第一番より抜きん出ている。

 交響曲全体からあふれ出る音楽そのものの魅力が、第一番の比ではないのです。

 第四楽章アレグロ・マノン・トロッポの華やかな疾走感がいやが上にも気分を盛り上げてくれます。

 かつてシューマンはこの第四番について「2人の北国の巨人のあいだにはさまれた美しいギリシャ美人」(「新訂標準音楽辞典」)と云ったそうですね。

 ふたりの巨人とは、同じベートーヴェン交響曲の第三番「英雄」、第五番「運命」のことです。

 この名言に影響されたのか、第四番を繰り返し聴いているうちにウィーン・フィルの演奏から、いかにもギリシャ風の端正な美しい乙女が立ち現れて来たような思いにとらわれました。

 彼女は竪琴を抱いたミューズのひとりかもしれない、、、、、。

 かくて私の2012年はスタートした次第。音楽好きの皆さんからことしの“聴き初め”はなんだったのか、伺いたいところです。




私が元旦に楽しんだアルバムです。
ジャケット写真は巨匠フルトヴェングラー。
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